『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』木下 麦監督インタビュー|TVシリーズ全13話を見た人も、見てない人も新鮮に楽しめる作品に。【ネタバレ注意】
TVシリーズ全13話を効率よくかつ新鮮に見てもらうために浮かんだアイデアが「証言」!?
――ちなみに今回の映画化はどのタイミングで決まったのでしょうか?
木下:昨年の9月頃に、配給のアスミック・エースさんからお話をいただいて、10月頃に決定しました。
――映画として制作するうえで意識された点、難しかった点はありますか?
木下:まずTVシリーズを見ていただいた方に楽しんでもらえる内容にしたいというのが一番にありました。あと新作カットを含めて、どう尺を収めるかが大きな課題でした。TVシリーズの総尺が約5時間くらいで、あれ自体もムダがないのに、それを2時間程度に収めるためにひとつひとつのシーンを見て「コレはいらないよね」と細かく相談しながら編集していくのが大変でした。
――各キャラクターが証言していく形で、エピソードを振り返っていますが、総集編的な切り貼りではなく、シームレスにつながっていて。まるで最初から1本のオリジナル作品を見ているような感覚でした。
木下:冒頭とラストに新作カットを入れて、間に総集編を挟むという構成も考えましたが、「それではおもしろくないな」と思って。その方法では尺に収めることも難しいので、もっとテンポよく、新鮮に楽しめる方法を模索した結果、此元さんから「証言をするというフォーマットはどうですか?」というアイデアをもらって、その形に落ち着きました。新規シーンが折々に挟まって、新鮮に楽しめる映像になったと思います。
――改めて完成した映像をご覧になった感想は?
木下:映画のお話をいただいた時は、課題がたくさんあるなと感じましたが、完成した映像を見てみたら、よく仕上がったなと思ったし、うまくまとまっていて、これならたくさんの人に楽しんでもらえそうだなという手応えを感じました。
三矢ユキが誕生したいきさつと村上さんの演技についての感想は? そして三森さんからの「ミステリーキッスの誰と付き合いたいか?」の究極質問に監督が出した答えは?
――ここで以前、このインタビュー連載にご登場いただいた三矢ユキ役の村上まなつさんと、二階堂ルイ役の三森ずずこさんからメッセージと質問をお預かりしましたので、ご回答お願いします。
まず村上さんからは「まずは『世界の麦監督、お久しぶりです』というごあいさつから(笑)。プレスコの映像の中に監督の声でセリフが入っていたのが印象的で、あのセリフはいつ録っていたのかな? とか録っている時の雰囲気が気になるので、聞かせてください。
あとはユキというキャラがどう生まれたのか、見た目や性格など、どう作られたのか、知りたいです。そして私の声が入ったユキちゃんの印象や監督がどう感じたのかも個人的に気になります」とのことです。
木下:まずプレスコ収録用の映像に僕の声が入っていますが、収録のだいぶ前に絵コンテを描きながら声を入れていました。まず全部のキャラクターに自分で声を入れてVコン(ビデオコンテ)を作ります。僕はVコンを作らないと映像の感覚がつかめないので。家で自分のスマホに音声を入れて、そのデータをパソコンに取り入れる形です。夜な夜な一人で収録している感じです。
あとユキについてですが、実は此元さんからリクエストがあって追加で作ったキャラクターです。また物語上の設定に合うように、見た目はちょっとツリ目で、気が強そうなデザインにしました。そして、ひょうひょうとして、あっけらかんとした怖さも併せ持つキャラクターにしたいなと。村上さんのお芝居もひょうひょうとした中で、不気味さがあって、腹の中では違うことを考えていそうな怖いエッセンスを少しだけにじませるという絶妙な演技をしてくださって、この役にもピッタリで、すごく上手だなと思っていました。
――続いては三森さんからです。「まず監督の頭の中を一度のぞいてみたいなと(笑)。それくらいキャラの一人ひとりが個性豊かで。一見そのへんにいそうな人たちだけど、例えば柿花さんは、人が良いアラフォーのおじさんで人生うまくいっていないのがかわいそうだけど、そういう人も周りを見渡せばいそうだし、あまりにもリアルなので監督の周りにキャラのモデルになった人がいるのか、知りたいです。
あとミステリーキッスのメンバーの中で誰が推しメンなのか、ですね。それが難しかったらミステリーキッスの一人と付き合わなくちゃいけないとしたら誰を選ぶのかをぜひ教えてください」とのことです。
木下:キャラクターのモデルになった人は具体的にはいません。自分や周りの人などからいろいろな特徴を拾って、1つのキャラクターに落とし込んでいます。名前を挙げてくださった柿花みたいに見栄を張りたい気持ちもわかるし、自分の中にもあるので、それらを形にした感じです。
そしてミステリーキッスのメンバーと付き合うとしたらですが、二階堂は怒ったら怖そうだし、ユキも身の危険を感じるので、市村でしょうか。性格的にもマイルドなので。
木下監督による映画のオススメの楽しみ方をご紹介。注目してほしいのはエンドロール前のカット!?
――改めてこの映画の見どころや注目ポイントのご紹介をお願いします。
木下:まず誰の視点で描かれているのかを考えながら見るとおもしろいと思います。またエンドロールもすごく工夫していますし、映像の細かい部分にも伏線があったりするので、スクリーンの隅々まで見てもらえたら。個人的にはエンドロール前の43秒くらいの長いワンカットがいい空気感になっていてお気に入りです。そのシーンとエンドロールの最後まで見逃がさないでください。
――皆さんへメッセージをお願いします。
木下:まずTVシリーズをご覧になっていただいた皆さん、ありがとうございます。キャラクターたちに愛情を注いでいただいて嬉しかったですし、まだ放送から1年も経っていませんが夢のような時間でした。皆さんにより楽しんでいただけるように感謝を込めて作ったので、大スクリーンで思う存分、楽しんでください。
『オッドタクシー』をまだご覧になったことがない方でももちろん楽しめます。整合性もきちんと取れていますし、本格的なミステリー作品になっていますので、アニメファン以外の方にも見ていただきたいです。またYouTubeで公開されているオーディオドラマも各話間のエピソードがわかる内容になっているので、映画を見た後にまた新たな気付きや発見もしていただけると思うので、併せて楽しんでいただけたら嬉しいです。
皆さんを映画館でお待ちしています。
『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』作品情報
公開情報
大ヒット公開中!
★TVアニメ『オッドタクシー』はAmazon Prime Videoにて全13話見放題独占配信中!
■STORY
偏屈で無口な変わり者<小戸川おどかわ>。
個人タクシーの運転手として街を流しながら、なるべく他人と関わらないように、平凡な日々を過ごしていた。
ところが、ある日思い掛けず『練馬区女子高生失踪事件』に巻き込まれてしまう。事件には、億を超える巨額の金、目的不明の半グレ集団、売り出し中のアイドル、カリスマ化されていく大学生など、様々な事物が絡み、混沌としていく。
それでも、ある計画の実行をきっかけに、事態は一気に収束。一連の出来事は、多くの悲しみや不条理をはらみながら、いったんの結末を見た。
――かに思われた。
関わっていた人々は、口々に証言する。“あの時一体何が起きていた”のかを。
それらを繋ぎ合わせることで浮かび上がってくる、事件の新たな輪郭。
一人のタクシードライバーの “人生を一変させるような出来事”がカタチを変え、運命の歯車は再び揺さぶられていく。
スタッフ
企画・原作:P.I.C.S.
脚本:此元和津也
監督:木下麦
副監督:新田典生
キャラクターデザイン:木下麦・中山裕美
美術監督:加藤賢司
色彩設計:大関たつ枝
撮影監督:天田 雅
編集:後田良樹
音響監督:吉田光平
音響制作:ポニーキャニオンエンタープライズ
音楽:PUNPEE VaVa OMSB
音楽制作:ポニーキャニオン
音楽制作協力:SUMMIT, Inc.
アニメーション制作:P.I.C.S. × OLM
配給:アスミック・エース
製作:映画小戸川交通パートナーズ
キャスト
花江夏樹
飯田里穂
木村良平
山口勝平
三森すずこ
小泉萌香
村上まなつ
昴生 亜生(ミキ)
ユースケ 津田篤宏(ダイアン)
たかし(トレンディエンジェル)
村上知子(森三中)
浜田賢二
酒井広大
斉藤壮馬
古川 慎
堀井茶渡
汐宮あまね
神楽千歌
虎島貴明
METEOR
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