【美食殿】のみんなに本当の笑顔を取り戻してあげたかった第2期――アニメ『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』金崎貴臣総監督×いわもとやすお監督×上内健太さん(アニメーションプロデューサー)×守屋竜史さん(プロデューサー)インタビュー【連載第14回】
雰囲気を崩さないために、ポイントとなる部分を抽出したキャラ表を作成
──具体的な内容についてもお聞きします。第1期を受けてどうなるかと思われた第2期の第1話では、【美食殿】の理想の日常のような姿が描かれました。
金崎:第1話はいろいろな人が見てくださる話数ですから、第1期を見た人も第2期で初めて見る人も見やすいものにしよう、と思いました。【美食殿】は美食を求めて冒険するギルドであることをベースにして、この世界には不思議な光景がたくさんあることを楽しく見せられたらいいなと。
それと、『プリコネR』は“食”にこだわった物語。おじやで好き嫌いを描いているのはそのためなんです。冒頭ではキャルが苦手な野菜を残すんですけど、最後にヘトヘトになって帰ってきた時は、苦手だったものを克服できる。一番の調味料は空腹ですからね。食をテーマにした作品として、そうしたことを軸にストーリーを組みました。
──第2話からはアニメ初登場のギルドが次々と登場しました。ギルドやキャラクターの見せ方で意識したことを教えて下さい。
金崎:基本的には原作にあるエピソードを膨らませる、というのが第1期から変わらず意識したことですね。そこからアニメのストーリーにハマる物語に調整できたらいいなと。
いわもと:そうですね。全員をメインで扱うわけにはいかないので、各ギルドの中で誰を中心にして話を転がすのかを金崎さんが考えていて。原作の中からポイントになるところを選んでキャラ表を作り、キャラの雰囲気をなるべく崩さないようにしていました。出番が少ないとしても、ファンの人たちに喜んでもらえるポイントを入れ込めたんじゃないかと思っています。原作から外れると別のものに見えてしまう、もしくは単なるパターンになってしまう。アニメではパターンに陥りかねないところがあるので、そこは気をつけました。また各話の演出さん、作監さん達もその辺りを良い感じに持ち上げてくれていると思います。
──やはり【トゥインクルウィッシュ】はちょっと特別な扱いでしたね。
金崎:【トゥインクルウィッシュ】はすごく重要なギルドだと思うので、出し方には本当に気を使いました。アニメの世界のユウキはまだユイたちと出会っていないですが、「これから出会う可能性は十分にある」「ユイたちはちゃんと生存している」と、第1期からずっと示しているんです。第1期では第1話のエピローグで後ろ姿を見せていますし、第2期ではユウキの記憶の中に出てきて、最終話でも復興していくランドソルの中にいる姿をインサートで入れています。
ただ、【トゥインクルウィッシュ】が絡んでくると、どうしても世界線の話になりますよね。第2期は居場所を奪われたペコリーヌが自分の存在を取り戻す物語やユウキが選択した先を紡いでいく物語がありますから、12話の尺の中にそこまで入れてしまうと、話が複雑になって伝わりにくくなってしまう。なので、そこは慌てずに、今回は見せるべきものをちゃんと見せようと判断しました。
ゲームのシナリオは全部読み、バラした上で再構築
──膨らませて調整したという原作のエピソードは、キャラクターストーリーやストーリーイベントと多岐に渡っていて、使い方がすごく上手いなと感じたのですが、どのように選んだのでしょうか?
金崎:僕は、ゲームの『プリコネR』を好きな人たちがいたからこそアニメの企画が立ち上がったと思っているんです。なので、オリジナルを作る気はなく、原作であるゲームを最大限リスペクトしたアニメを作ろうと考えました。アニメでメインとなるストーリーも、ゲーム内で(ユウキが)選択するシーンから派生した世界。同じ『プリコネR』という枠の中でのIFの物語なんです。
だからこそ、ゲームのシナリオを全部読んだんですよ。メインストーリー、ギルドストーリー、キャラクターストーリー、ストーリーイベントと全部データをいただいて、全部読んで、一回バラして。バラした上で「アニメで表現するには、この要素とこの要素とこの要素がリンクしている」といったラインを見つけて、それを再構築していきました。シナリオの量もそうですけど、音楽の量もすごくて、高校の受験でもこんなに勉強しなかったぐらいです(笑)。
──それはすごい! ゲームをプレイしている人であれば大変さがわかると思います。そのぐらい濃密な内容で、ボリュームがありますし。
金崎:でも、それをやらないと、原作に対して失礼ですからね。知らないで作るのはありえないので、とにかく読ませてくれと。で、読んだのはいいけど、これをどうしようかと……(笑)。
──絶対にそうなりますよね。
金崎:量が多くて1クールにはとても収まらない。となった時に、じゃあアニメではなにを表現したいのか?と絞り込んだんです。先ほど言った『ユウキが後悔した選択の先にある物語』と『居場所を奪われたペコリーヌが自分の存在を取り戻す物語』といったテーマは原作でも重要なファクターですからね。
守屋:金崎さんは、本読みの時点ですごく緻密に計算されていたんですよ。毎週のように「先週の話数を超えないといけない」と話していて、最初から最後まで多くのギルドを出すためにはなにが最適解か、ものすごいバリエーションを考えていました。
──そうなのですね。ちなみに、ゲームの選択を知った後に主題歌の「Lost Princess」を聴くと、歌詞の意味がすごくわかりますね。
金崎:「Lost Princess」は歌詞もいいですし、本当に『プリコネR』を表していると思います。
曲でいうと、最終話でユウキがキャルを救い出すために手を伸ばすシーンで流れているBGMは、前作『プリンセスコネクト!』の主題歌「つなぐもの」なんです。「つなぐもの」を使う予定は当初なかったんですが、物語を作っていく中でラストはユウキがキャルを救い出すために手を伸ばして繋ぐ──そこで原作に「つなぐもの」というタイトルの曲があるとか、いろいろな奇跡がハマりました。それも長い歴史のあるIPだからこそだと思っています。