「逃げたい」を前向きな言葉にさせてくれるーー春アニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』エクア役・嶺内ともみさん インタビュー
TVアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』が2022年4月より放送スタート!
「人類の多様化実験」により、常人・獣人・魔族など多様な人々が暮らすようになった東京は、壁によって街がそれぞれ分断されていた。TVアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』は、自分が住む街に適応できず苦しむ者を、別の街へ逃がすことを生業にした「逃がし屋」の活躍を描いている。
「逃がし屋エクストラクターズ」のリーダーであるエクアを演じる嶺内ともみさんにインタビュー!
TVアニメ『エスタブライフ』は入門書。ここを入り口に、作品の世界観を理解しよう
ーー作品の第一印象はどのようなものでしたか?
嶺内ともみさん(以下、嶺内):「逃げたい」というのは、日常でたまに思うことですし、ある意味身近なテーマですよね。「逃げたい」って後ろ向きというか、ネガティブな言葉だけど、それを前向きなワードにさせてくれる作品なんだなと、あらすじを見たときに思いました。
ーーやはり「逃げたい」と思ったことはありますか?
嶺内:それは、ありますよ! 大なり小なり誰だってあると思います。それこそカロリーから逃げたいとか、朝から逃げたいとか(笑)。細かく考えたらいっぱい逃げたいことってあると思うんです。
最初は、SF設定だったり、キャラクターの見た目とか説明を見て、難しくて硬い内容なのかなと思ったんですけど、このアニメに関しては、入門書というか。この世界観とか、逃がし屋がどういう仕事をしているのか、とかを分かりやすく描いた作品になっているんです。今、TVアニメとゲームと映画などの展開が発表されていますが、TVアニメは、そのどこへ行くにしても分かりやすいものになっているんじゃないかなと思います。
ーーアニメから入ると、かなり分かりやすく『エスタブライフ』の世界に入れるんですね。キャラクターは、エクアを受けようと?
嶺内:マネージャーからはエクアで、と。テープオーディションでは日常シーンの芝居が多かったので、深く考え過ぎず、慈しみを持って、優しく見えたらいいなと思いながら、わりと感覚で演じていきました。エクアって、他のメンバーと比べると戦闘シーンがあるわけでもないから、日常会話がメインなんですよね。
ーーエクア役に決まり、台本を読んだときの面白さって、どういうところに感じましたか?
嶺内:逃がし屋5人組のコメディーシーンのやり取りが面白いなと思いました。誰かがしっかりしているように見えて、全員がポンコツだなって会話をしているんですよね。自分が正しいみたいな主張をし合うときがあるんですけど、結局共倒れすることが多いので、似た者同士なんだなって感じがしたんです。
ーーキャラクターの個性は相当強いですよね。といっても、狼の獣人のウルラは、ほとんどしゃべっていない気もしますが?
嶺内:そうですね(笑)。ウルラって、言葉をしゃべるのかな?って話は声を録るときもしていたんですよ。それがどうなるのかはお楽しみにという。ある意味、日本語を発していないのに、全員とコミュニケーション取れているのが毎回すごいと思います。
ーーその流れでいうと、多様な人種がいる世界観はどうでしたか?
嶺内:獣人から、AIロボット、かわいい女の子まで幅広くいますからね。それこそ第3話では、ペン人さんがいる池袋ペン人街の話なんですけど、街の人のガヤをやったんです。そこでしゃべっている言葉が「ペン」だけだったんです。「ペン」ですべてを表現していたので、疲れているペン人さんを「ペン」だけでやったり、それを何度も重ねてやる作業は、珍しい体験だなと思いました。
優しすぎるエクアを演じる上で心がけていたこととは?
ーーキャラクターについて話をお聞きしたいと思います。長縄まりあさんとは、近い役どころでの共演も多かったのかなと思います。キャスト表を見たときはどう思いましたか?
嶺内:第1話で声を聞いたときは、本当にみんなぴったりだなと思いましたし、座組の中で、自分が一番の新人だったので、頑張って追いつかないといけないなと思って緊張した記憶があります。
ご時世的に、ウルラ役の三木眞一郎さんとアルガ役の速水奨さんとはご一緒できなかったんですけど、「逃がし屋エクストラクターズ」の5人が揃っていたら、どんなプレスコ現場になったのか、すごく知りたいです。
ーー長縄さんが演じるマルテース、高橋李依さんが演じているフェレスについてはいかがですか?
嶺内:長縄さんは、これまで大人しい役柄のときにご一緒することが多かったので、今回のようなはっちゃけた、雑さや乱暴なところがあるキャラクターがどんな感じになるんだろうって、好奇心があったんです。でもすごく自由に面白くやられていて、また新しい一面が見られたなと思いました。
高橋さんのフェレスちゃんは、スタッフさんの中でも私たちの中でも、一番難しい役ではないかという話が出ていたんです。すごく細かい加減が必要な役柄なんですけど、ちょっと減らして、ちょっと増やしてというディレクションにもすぐに応えられていて、まりあちゃんと私で「すごい!」と尊敬の眼差しで見ていました(笑)。お芝居でも、その場のコミュニケーションでも、率先して空気を作り上げてくださったり、お芝居も誰よりも突き抜けていたのですごく勉強になりました。
ーーでは、エクアを演じるときに心がけたことは?
嶺内:エクアさんは、表情とか見た目がすごく優しく、器も大きい子なんですけど、自分がこうしたい!と思うものは譲らないし、そういうところは、逃がし屋のリーダーらしいところなんですよね。率先して動くし、指示出しはしっかりしているので。
でも、周りを振り回しているのも、また彼女なんですよね。これは収録をしているときに気づいたことですけど、最初は、優しいし人の意見を肯定的に受け取るから、支える側だと思っていましたが、意外と逆で、支えられている側だったんだなと思いました。
ーーそれは最初のほうから感じていたんですか?
嶺内:そうですね。序盤から感じていました。1話ではまだそこまでサイコパスではなかったんですけど、2~3話あたりだと、そういうところも出てきて、手助けをしているように見えて、実はそうではなかったという。
ーーサイコパスというのは、皆さんの共通認識だったのですね。
嶺内:そうですね。監督さんからもそういう指示はいただいていて、善人が故に怖く見えてしまうというか、よくよく考えたら、そこまで優しいのは怖いよなと思いました。
ーー嶺内さんの声の説得力かも知れないんですけど、エクアに、逃げていいと言われると、逃げることに対してネガティブな感情がなくなるんですよね。それは素晴らしいなと思いました。
嶺内:どんなことを言われても、すべて相手のためを思いながら発言はしていました。その人がどんな選択をしても、その人がそう思うことが一番大事だし、行動したことに意味があるので。相手を尊重するということをすごく大事に演じていました。
ーーそれについては、何かディレクションなどはあったのでしょうか。
嶺内:サイコパスっぽさを出してほしいということくらいで、基本的にはいつもニコニコかわいいエクアで、と音響監督さんはおっしゃられていました。だからそれを台本の一番うしろの何も書いていないところに、毎話メモしていたんです。エクアはこれが基本だって。外側からはそう見えているということを大事に思いながら、そこから肉付けしていきましたね。それが結果的にサイコパスに見えていたら……という感じで。
ーー100%相手のことを思うからこそ、説得力があったのかもしれないですね。ちなみに速水さんと三木さんの声を聞きながらやっていたのですか?
嶺内:はい。最初にイラストを見て、お二人が演じることを知ったときは、どんなお芝居になるんだろうと思っていたんですけど、収録が始まって、お二人の声を聞いたときには、頷くしかなかったです(笑)。女子3人は、ずっと笑いを堪えるのに必死でした。キャラクターの幅を、お声とお芝居で広げていたし、アドリブも結構多い2人なので、面白かったです。