終着駅を決めるのは、自分次第。たとえそこが終着駅だったとしても、別の駅に向かって旅をすることもできる──工藤晴香さんの1stフルアルバム『流星列車』のテーマは「列車、乗客、人生、旅」

コンセプチュアルなアートワーク　実は意外な場所で

──アートワークは事前に決められていたとのこと。コンセプチュアルなアートワークです。

工藤：そうですね。テーマに沿ったアルバムにしたいなという思いがあったので、ガチガチってほどではないですけど、ある程度固めておきたいなと。

【アルバム】工藤晴香/流星列車初回限定盤

──今日のお洋服はジャケットで着られていたものですよね。

工藤：そうです！　今までは普段着に近いものが多かったんですが、今回は世界観が固まっていたので異国情緒あるテイストの衣装にしたいなと思っていました。背景も列車の客室にいるような雰囲気にしたいなと、デザイン会議で話して。デザイナーさんが一生懸命探してくれました。「こんなオシャレな場所がこんなところにあったなんて！」という。

バーで撮ったんです。アルバムのクレジットにも載っているんですけど、恵比寿から徒歩5分のオシャレな場所で。最初は列車の食堂車みたいなところで撮れたらいいなって話していたんですけど、なかなか場所を探すのが難しかったですね。衣装のテイストに似合う背景が良くて、めちゃくちゃ気に入っています。

──フォトグラファーの笹原清明さんは今回がはじめてのタッグだったんですよね。

工藤：そうなんです！　はじめましてだったので、どんなふうに撮られるのかが分からなかったんですけど、すごくお洒落に撮ってくださって。ジャケットの写真もめちゃくちゃ気に入っています！

アーティストであり、シナリオライターであり、監督でもある

──さっき“ポジティブ”にまつわる話がありましたが、このアルバムからも、くどはるさんのポジティブなパワーを感じます。元気がもらえるというか。でも今回は決してポジティブな面だけではなく、くどはるさん目線以外の曲もあるから、いろいろ物語がある。

工藤：制作がスタートしたときは「全部暗い曲になっちゃったらどうしよう」って思っていたんです。でもバランスよく出来てホッとしています。それは平地さんのおかげでもあるんですけど。今までは全部ポジティブでやってこられたので、「言うべきこと全部言ったな」って感じがどこかにあったんです。かといって、私も急に考え方が変わるわけではないし、違うことを書いて過去の詞を否定することになってしまうのは嫌だなって。

──あ、確かに違うことを書くことでその可能性が出てきてしまう。

工藤：そうなんですよね。でも映画を見ていても思うんですが……「この監督の作品って全部言ってることは一緒だな」って思うことが多く、それで良いんだなって。ちょっと世界を変えたいと思ったので、テーマをガッツリ決めて、いろいろな主人公になって書いてみることに挑戦しました。すごく楽しかったので、これは続けていきたいなと思っています。

──そういう意味では、くどはるさんは1号車から12号車の監督でもあるんですね。

工藤：ああ、そうですね。監督であり、アーティストであり、シナリオライターでもある、みたいな。

──今日のお話を聞いてからフルアルバムを聞くとまた新たな発見がありそうです。このアルバムを経て、気づいたこと、得たことというのはありますか？

工藤：実は完成した音源が揃ってから（インタビューの段階では）まだ1ヶ月ちょっとしか経ってないんです。最近になってやっと落ち着いて聴けるようになりました。移動中も毎日聴いています。完成した当初は、これ以上のものはもう作れないかもしれないなって思ったんですが……もっともっと物語を書きたいなと思いました。それがどんな物語なのか、今の私にはまだわかりませんが。

あと、妥協しないで良かったなって感じました！　妥協していたら多分、自分で聴けないんです。ずっとどこかモヤモヤを抱えたままになってしまうので。

──今おっしゃってた、もっと物語を書きたいなっていうのは、「ずっと列車に乗って、そのさきの景色も見に行きたい」ってことでもありますよね。

工藤：そうですね。ずっとずっと、自分の音楽の世界で、列車に乗り続けるんだろうなって。

──この先の物語も楽しみにしています。そして、アーティストデビューも3年目となりました。先日、誕生日も迎えられたところで、くどはるさんにとって3月って節目のような……。

工藤：そうですね。はじめてのライブも3月だったので、すごく特別な月でした。私、具体的に芸能活動をはじめた日というのがわからないんですよ（笑）。ぬるっとはじまったので。具体的なデビュー日を持っている人が周りに多くて「良いな」と思っていたんです。だから「自分のデビュー日がやっと出来た！」って嬉しかったんです。第二の誕生日みたいな感じがして、3月25日という日をものすごく気に入っています。そんな3月にファーストフルアルバムをリリースすることができるので嬉しいですね。全部3月に集約されているので覚えやすいです（笑）。

[インタビュー・逆井マリ写真・MoA]