この記事をかいた人
- タイラ
- 99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えない間「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行いライターに。
本作は私のように夏目監督を理解した気になって、作品ひっくるめて人間を好きになるという楽しみ方もできますが、もちろん作品としても優れているところばかりです。
この項目では本作の新しさや、特徴など作品としての魅力を振り返っていきます。
中学校3年生の主人公・長良(ながら)はクラスメイト36人と一緒に学校ごと「異次元に漂流」します。
夏目監督がインタビューなどで語った作品の骨組みは「漂流+ボーイミーツガール」というもの。
本作は学校ごと南の島(のような異次元空間)に漂流してしまった、中学生たちが思春期や人間関係に踊らされながらも少しづつ成長していくストーリーになっています。
枠組みは非常にシンプルなのですが、そこに複数の要素が絡みます。
まずは「特殊能力」という設定。重力を自在にコントロールするような強大な能力から、指先を光らせることができるというインパクト弱めな能力まで様々なものがあります。
中学生たちは自分に発現した能力に合わせて漂流生活のポジションを作っていきます。リーダーを目指したり、強大な力に付き添ったり、まるで現実の学校生活のようですよね。与えられた才能(スポーツとか勉強など)によってポジションや人間関係が変わっていくのは世の常です。
次に「SF設定」です。本作は難解な部分もあるので、Twitterを使って夏目監督自身が設定に対するQ&Aを行っているのですが、そこでも良く語られているのが「物理・量子力学」の話です。
高次元(現実は3次元なのでその上)の空間や物質、時間など私も勉強不足でわからない事の多い分野の知識がストーリーや設定の基礎的な部分になっているようです。
\ 教えて!#サニボ博士 Q&A /
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ラジダニのオウムは進化した「測ルンです」にもラジダニの分身のようにも見えますが、あのオウムの正体って何ですか?
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そして夏目監督の作劇方法です。本作には「説明しない部分」と「説明しなくてもわかっていただけるつもりの部分」があって、視聴者の知識や体調、気分によって様々な受け取り方ができるようになっています。
セリフや展開、演出も独特で掴みどころの無いような、でも深く刺さってしまう映像が作られています。
シンプルな枠組みにいろんな要素が絡むことによって、いろんな見方ができる。逆に言うと一筋縄ではいかない作品。しかし根本が「思春期の人間の変化」であるため色んな人が自分の体験や感性と比較しながら視聴できる作品だと思います。
夏目監督はとことん自分がやってみたいこと、見たことのないやり方をしてみたかった。とおっしゃっています。
まずは作品のビジュアル面に関して。キービジュアルなどをみるとわかりますが、シンプルで魅力的な絵になっています。背景はまさかの真っ黒。濃淡もないシンプルな黒です。
そこに複数のメインキャラクターが居て、壁も壁色一色という感じ。キャラデザは漫画家の江口寿史さんが務めており、線が少なくシンプルだけど引力を持っている作風、夏目監督が個人的に好きだということ、「シンプルで魅力的」というテーマにあった人選だそうです。
音楽もそのテーマに沿っています。本作はBGMが一切ありません。悲しい時に暗いBGMを使うというような、シーンの説明として音楽を使うことは良くありますよね。
本作ではそれが一切ありません。視聴者の解釈を何より大事にしたいし、BGMを取り去った場合にどんな表現になるのか、という実験の一つでもあります。
しかし、『Sonny Boy』では1話につき1楽曲、なんらかのバンドやアーティストの曲が使われる仕組みになっています。
夏目監督が好きな曲やその場面にあった曲をチョイスしたり、本作の音楽アドバイザーである渡辺信一郎(『カウボーイビバップ』などの監督)さんからのオススメアーティストの曲、夏目監督が依頼して制作された曲などが使われています。
BGMを使用しないかわりに、そのお話のテーマに沿った一発をどこかで印象的に使用するという工夫です。
音楽といえば銀杏BOYZが歌う、主題歌「少年少女」は必聴です。第1話のテーマソングも兼ねていて、ひ弱で無気力な少年・長良がヒロインの希に出会うシーンを象徴した曲になっています。
最終話のEDでは銀杏BOYZのボーカル、峯田和伸さんが弾き語りした「少年少女」が流れるのですが、1話も物語全体をも表現した曲であることが理解できてまたもや涙を流しましたね。
その他にも作画の工夫や、考証をしっかりとしたSF要素の工夫など様々な媒体で語られているので、私のように夏目真悟監督が大好きになってしまったらどんどん読むことをオススメします!
大人気アニメ『エヴァンゲリオン』シリーズは、「エヴァへの感想がその人のパーソナリティを表す」などと揶揄されるくらい多様な解釈のある作品です。
私は『Sonny Boy』も同じくらい幅の広い解釈ができる作品だと思っています。
私はこの物語を「長良という自分の事で精一杯な思春期の男の子が、外の世界と向き合うことができるようになる」話だと解釈しています。
そして長良は「私」自身でもあるし、夏目監督もそういう少年で似ている人なんだろうな。と勝手に思っています。そしてそれは観ている多くの人も含まれるのでは?とも思います。
スケールは違えど、みんなある種の「漂流」を経験して緩やかに思春期を収束させていく。その過程の中での起きた出来事や感情の動きがそれぞれあって、そこが監督や長良や視聴者と共鳴していく部分だと思います。
なのでその感想を話合うことも、お互いを理解し合う意思疎通になるし『Sonny Boy』が好きな人ってどこか自分と共通している部分がありそうだな、と理解し合うきっかけにもなり得ると思います。
「夏目監督って実は自分と同じ悩みを抱いていたんじゃないかな?」と疑問に感じて、興味をもち、インタビューやイベントに足を運んでみて、答えが解ることもあれば共感できない事も見つかる。
逆にもっと自分と似ている部分を感じたり、監督の好きなものならおもしろいに違いない、と新しい知識や作品に出会うこともありました。
それこそアニメや創作物を、「誰かと世界を共有するためのツール」として楽しむ事なのだろうと思います。
私は作品を通して、誰かの悩みやコンプレックス、喜びに共感するという楽しみ方がすごく好きです。
この体験記で、私の大好きな『Sonny Boy』が広がって理解者が増えると幸せですね。
99年生まれ、沖縄県出身。コロナ禍で大学に通えなかったので、「100日間毎日映画レビュー」を個人ブログで行い、ライターに舵をきりました。面白いコンテンツを発掘して、壁に向かってプレゼンするか記事にしています。アニメ、お笑い、音楽、格闘ゲーム、読書など余暇を楽しませてくれるエンタメや可愛い女の子の絵が好きです。なんでもやります!
■ON AIR
TOKYO MX:毎週(木)24:30~25:00
BS 朝日:毎週(金)23:00~23:30
KBS 京都:毎週(木)24:30~25:00
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AT-X:毎週(金)21:00~21:30
※リピート放送 毎週(火)9:00/毎週(木)15:00
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7/17(土)0:00~ 各サービスにて順次配信スタート
d アニメストア / Amazon / U-NEXT / アニメ放題 / Hulu / バンダイチャンネル / FOD /ひかり TV / TSUTAYA TV / J:COM オンデマンド / GYAO! / niconico / ビデオマーケット /Rakuten TV ほか
■INTRODUCTION
誰もいない空っぽの教室、退屈な日々。それはいつもと変わらない夏休みのはずだった。突如、異次元を漂流し始めた学校と、そこに取り残され、超能力に目覚めた36人の少年少女。なぜ? どうして? ……次々と浮かぶ疑問の渦の中、理不尽に満ちた世界でのサバイバル生活が始まりを告げる。
世界的な大ヒットアニメ「ワンパンマン」の監督・夏目真悟と『サマーウォーズ』「DEATH NOTE」などを手掛けるアニメスタジオ・マッドハウスが贈る、青春SFサバイバル群像劇。再びタッグを組む両者だからこそ生み出せた、エッジの効いたビジュアルとユニークな世界観も、本作の魅力のひとつだ。またキャラクター原案として、マンガ家&イラストレーターとしてジャンルレスに活動を続け、多くの人々を魅了する江口寿史が参加。突如として、平穏な日常から放り出されてしまった少年少女たちの表情を、繊細に鮮烈に描き出してみせる。
そして、本作の主題歌を銀杏BOYZが担当しているのも注目のポイントだろう。銀杏BOYZといえば、青春の痛みをヒリつくサウンドに乗せて、多くのファンを熱狂させてきたロックバンド。2005年にリリースしたアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」では、ジャケットイラストに江口寿史を起用したことでも話題を呼んだ。今回の主題歌「少年少女」では、子供と大人の間で揺れ動く思春期という青い季節を鮮やかなメロディラインで描き出し、「Sonny Boy」の世界観とも強く共振してみせる。ノイジーな音響の中を疾走する、ボーカル・峯田和伸の歌声も印象的だ。
「少年少女」たちがたどり着くのは地獄か、それともユートピアか。忘れられない「夏」が幕を開ける。
■STORY
長い長い夏休みも半ばを過ぎた8月16日。学校に集まっていた中学3年生・長良〈ながら〉たちは突然、思いも寄らない事態に巻き込まれていた。長良自身はもちろんのこと、謎の転校生・希〈のぞみ〉や瑞穂〈みずほ〉、朝風〈あさかぜ〉ら、36人のクラスメイトとともに、学校が異次元に漂流してしまったのだ。
しかも彼らは、漂流と同時にさまざまな《能力》を入手。人知を越えた能力に大喜びし、好き勝手に暴れ回る者もいれば、リーダーとして他の生徒たちを統率しようとする者も、元の世界に戻るための方法を必死で探す者もいる。渦巻く不信や抑えきれない嫉妬、そして支配欲からくる対立。次々と巻き起こる不可解な事態を前に、少年少女たちは突如として、サバイバル生活に放り込まれてしまう。
果たして長良たちはこの世界を攻略し、無事に元の世界に帰ることができるのだろうか……?
■CAST
長良:市川蒼
希:大西沙織
瑞穂:悠木碧
朝風:小林千晃
長良〈ながら〉:市川蒼
希〈のぞみ〉:大西沙織
瑞穂〈みずほ〉:悠木碧
朝風 〈あさかぜ〉:小林千晃
ラジタニ:後藤ヒロキ
明星 〈ほし〉:内藤有海
ポニー:佐藤はな
キャップ:上田燿司
はやと:山本祥太
上海〈しゃんはい〉:荻野佳奈
監督・脚本:夏目真悟
キャラクター原案:江口寿史
アニメーション制作:マッドハウス
キャラクターデザイン:久貝典史
美術監督:藤野真里(スタジオ Pablo)
色彩設計:橋本賢
撮影監督:伏原あかね
編集:木村佳史子
音響監督:はたしょう二
音楽アドバイザー:渡辺信一郎
主題歌:銀杏BOYZ「少年少女」