『きんいろモザイク』クラウドファンディング企画[連載第4回] 『きんいろモザイクThank you!!』を作った監督の名和宗則さん、アニメーションプロデューサーの富岡哲也さんにインタビュー【後編】
劇場版『きんいろモザイクThank you!!』制作秘話
──制作中に大変だったことは?
名和:僕のコンテが完成しなかったことです。
富岡:しかも、僕と名和監督がほぼ同時に倒れましたからねぇ。
──えええ。それでは制作が止まってしまいます。
富岡:いや、それでも現場は動くんです。
名和:劇場版『きんいろモザイクThank you!!』は絵コンテが何パートかに分かれていて、自分の担当が最後に完成しました。ですが、その自分のパートが上がる前に、他のパートで尺が足りているということが発覚……。
一同:(笑)
──そんなことあるのですか?
富岡:普通はありませんが、今回はあったんです(笑)。名和監督のコンテを待たずに、尺がオーバーしていました。
名和:でも、だったら描かなくてもいいというわけにはならないので描きました。
富岡:それで、泣く泣く他のパートを削りました。とても描きたかったシーンがあったんですけどね。それが劇場版「きんいろモザイクThank you!!」展で飾っていたシーンです。僕は最終日に新潟まで見に行きました。アニメにはできなかったけど、日の目を浴びることはできたので、よかったなぁと思いました。
──名和監督の絵コンテが遅くなった理由は?
名和:プレッシャーを感じていなかったと言えば嘘になります。やはり天衝監督の後を継いでいるので、「ファンの方たちを裏切らないように」とか考えてしまうと、なかなか上手く描けなかったです。
──富岡さんが大変だったところは?
富岡:劇場版なので通常よりも作画のボリュームが大きかったので、数百人のスタッフの確保と維持をするのが難しかったです。アニメーション業界は、まだまだ人手不足なんです。
名和:コロナの影響が出ている時期だったので、それも関係しています。この影響は、アニメーション制作現場のみならず、音響サイドでも苦労していました。みんなで揃ってアフレコをできないので、バラバラに収録しました。もちろん、他のどの作品も同じだと思いますけどね。
──やはり影響は大きいのですね。
名和:コロナの影響で言えば、京都と奈良のロケハンができたのは奇跡だったかもしれません。僕たちが行った直後、いろいろな施設がどんどん閉鎖されて拝観できなくなりました。
富岡:ニュースで言っていましたが、あの2週間後に京都の街から人がいなくなっていたみたいです。僕らが行ったときは観光客もいたし、まだ街に活気があったのに。ロケハンがあと少し遅かったらと思うと……タイミングがよかったです。
──京都と奈良のロケハンでもたくさん撮影をしてきましたか?
富岡:軽く数千枚は撮影してきました。
名和:特に京都と奈良のシーンは神社仏閣がたくさん出てくるので、資料が多いに越したことはありません。大量の写真が必要になります。
富岡:あのときも名和監督と僕で修学旅行をしてきました。忍たちと同じルートを辿って、シカと遊んだりね。
──楽しかったですか?(笑)
富岡:シンドかったです(笑)。身体の大きいふたりがドカドカと歩いて。
名和:まる二日間歩きっぱなしで、もうね……脚がパンパンでしたよ。
富岡:リアルに修学旅行を体験しないといけなかったので、二泊三日でそうとうな距離を歩きました。もちろん、行く場所は原先生の原作があるのでよいのですが。どういうルートで行くかは僕らで考えました。
──二泊三日あれば、劇場版と同じルートを見学できると言うことですか。
富岡:できます。実証済みですから!