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『ホリック xxxHOLiC』映画プロデューサー&原作編集者インタビュー

『ホリック xxxHOLiC』映画プロデューサー・宇田 充&原作編集者・桂田剛司インタビュー「実写化しても原作の良さは変わらない」

全19巻の作品を約2時間の映画に成立させる苦労

ーー全19巻ある『xxxHOLiC』を約2時間にまとめるために、どのように要素を取捨選択したのでしょうか。

宇田:基本的には、まず監督の描きたいこと・登場させたいキャラクターを中心に、脚本家と相談しながら始めていきました。

蜷川さんは写真家だからこそと思いますが、作品に取り掛かる前には必ずスクラップ(衣装や美術セットなどの参考イメージをまとめたもの)をつくるんですよ。加えて蜷川さんが原作の素晴らしい、入れたいと思っていたセリフのまとめを作り、さらに他作品でなかったものとして、オリジナルで込めたい想いやテーマをメモにしたもの、いわば”蜷川メモ“をいただきました。その膨大な資料を脚本家にお渡しして相談しました。

ただ、僕の力不足もあり、関係各所も満足のいく脚本ができあがるまで、かなり時間がかかって……非常に困難を極めました。かなりの時間を要した結果、『ホリック xxxHOLiC』が3作品目ではなく『Diner ダイナー』『人間失格 太宰治と3人の女たち』の公開が先となりました。

ーーそれほど脚本づくりは難航したんですね……。

宇田:最初から原作後半のシリアスなトーンを中心に描きたいということは決まっていました。なのですが、そこから具体的な脚本の組み立てに難航しました。原作に沿った形での、コミカルな要素強めとか、オカルト要素強めとか、逆に現実的な話に置き換えたらとか、様々なバージョンの模索がありました。なんとか5年ほどかかり、先輩プロデューサーとの協議で出てきた、対価を一番大切なものにして、一番大切なものを探す物語に、松竹チームとの協議で悪役の強化されていったのですが、蜷川さん的にまだオチにしっくり来ていない状況が残っていました。

そんな中、クライマックスの方向性が固まったのは、コロナ禍で撮影延期したタイミングでした。それは蜷川さんご自身のお子さんに対して「自立していくことの背中を押したい」「自分で決めて考えられる大人になってほしい」だけではなく、世界に向けても「寛容であることの大切さ」を伝えたい想いが強まったんですよね。ただ“善”と“悪”を切り分け、敵を倒してスカッとするような話ではなく、多様性を認めることの大切さを届けたいと。

桂田:四月一日(君尋)と侑子さんの別れのラストは蜷川さんの中でマストだったのだろうなと思うほど、強いこだわりを感じました。四月一日の「アヤカシが視えたり憑かれたりする体質を改善したい」という願いから始まり、あのラストシーンまで描くとなると2時間で収めるのはかなり難しい。原作サイドとしては「あのラストにこだわらず、学園モノや妖怪探偵モノでもいいですよ」といろいろご提案はさせていただきました。ただ蜷川さんの撮りたいものはブレなかったですね。

宇田:そもそも『xxxHOLiC』という作品は、ほかのCLAMP先生作品も関連しています。その中で単体の映画として成立させないといけない難しさがかなり大きかったです。とはいえ、世界観やキャラクターを変えてしまうと、それは『xxxHOLiC』でなくなるわけで……。

桂田:大変だったと思いますよ。『xxxHOLiC』を知らない人からすれば「次元の魔女(侑子の異名)」と言われても理解できないじゃないですか(笑)。原作ファンでも、『ツバサ -RESERVoir CHRoNiCLE-』や『カードキャプターさくら』の世界を抜きにして言語化するのは難しいでしょうし。CLAMPワールドの中ではキャラクターがクロスオーバーしていくので、映画単体で初見の方に侑子さんをどういうキャラクターか説明するのは難しかったと思います。

宇田:なので、誰にでも分かるよう侑子さんはシンプルに「魔女」とキャラクター付けました。また女郎蜘蛛は原作の「アヤカシ」設定から「魔女」設定へ変更しています。魔女学校の後輩らしい的な(笑)。

ーー限られた時間の中であのラストを描く大変さがある中、さらに実写オリジナルキャラクター「アカグモ」が登場するじゃないですか。より大変さを引き上げているように感じました……。

一同:あはははっ(笑)。

宇田:はじめは原作キャラクターを中心に登場させていたのですが、脚本を開発中に松竹のプロデューサーとディスカッションをしている中でアカグモのアイデアが出てきました。

というのも、観客の理解を深めるために誰かしらのキャラクターが世界観の説明をしなければなりません。ただ、侑子さんや四月一日などの原作キャラクターが説明をすると、“キャラが違う問題”が発生します。なので、説明役としてオリジナルキャラクターが必要だと思い、アカグモを登場させることになりました。

桂田:私も長年編集者として仕事をしてきて、ある程度物語のつくり方に対するノウハウがあるので、オリジナルキャラクターを入れたくなる気持ちはよく分かります。

原作のキャラクターだけだと、原作の「こうあるべき」という型から外すことが難しいんですよね。オリジナルキャラクターが入ることによって、メディアミックスとしては自由度が生まれます。なので、オリジナルキャラクターに対するネガティブな印象はなかったです。

何よりアカグモがカッコよかった(笑)。実際、CLAMP先生も「アカグモ」のイラストを描かれましたし、気に入られたんだなと思いました。

 

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