『ONE PIECE FILM RED』ウタ役(ボイスキャスト)名塚佳織さんインタビュー|「ウタの人生を歩めたことは生涯の宝」
ウタにとって大きな存在となるルフィとシャンクス
――ウタにとって、ルフィとシャンクスはどんな存在だと思いますか。
名塚:この作品を通して、人と人が関わると必ず何かしら影響を与え合うんだなと感じました。
ウタにとっても、やっぱりシャンクス(CV:池田秀一)との出会いがものすごく人生を変えたと思いますし、シャンクスに育てられたから、こういう考え方になったんだと思います。
ウタは周りの人のことをすごく考えています。「自分のことよりも周りの人の幸せ」や「みんなが楽しく過ごせることが一番」という部分はシャンクス譲りで、きっとシャンクスの背中を見てきたんだろう、すごく憧れを持っていたんだろうなと感じました。意志が強いという部分もシャンクスの影響を受けたんじゃないかなと思います。
そして、ルフィ(CV:田中真弓)はウタにとっても、とても大切な存在です。ルフィがいてくれたからこそ、毅然として立ち振る舞えるんだと思います。
幼いころのルフィがウタに憧れを抱いてくれたり、羨ましがってくれたりすることがウタにとっては誇りとなって、自信に繋がっている。心地良い部分もあったし、自分の歌にも自分の立ち位置にも自信を持って生きてこられたんだろうなと思っています。
――ルフィとウタの関係性に関して、どのように感じましたか。
名塚:幼い頃に一緒に育って同じ境遇にいても、成長する過程で別々の道を歩んでいると、価値観もどんどん変わっていくものなんだなと感じました。そして、ルフィとは違う人生を歩んでいたウタの存在もみなさんに魅力的に映ったらいいなと思いながら演じました。
――ウタは明るく天真爛漫なところから影のある部分まで、振り幅が広いキャラクターだと思うんですが、ふり幅が広いからこそ気を使った部分、難しいと感じた部分はありますか。
名塚:収録が始まる前まではいろいろと考えていて、どう表現したらいいのか、どういうふうにウタと向き合ったらいいのかと思うところもあったんですが、いざ収録が始まったら、あまり深く考えずにその場で感じたことを出していきました。
その場のやり取りで、怒りたくなったら怒るだろうし、冷める瞬間もあるだろうと思ったんです。なので、ルフィから飛ばされてきた言葉をまっすぐ受け止めて、その時に自分自身がどう感じるかを大切にして、その場の感覚にゆだねてやっていました。
台本を読んでいる時は、私の中のイメージでのルフィの声が聞こえてきたんですが、実際にその通りにセリフが来るわけではないので、収録では、ルフィ役の田中真弓さんが投げてくださるルフィの思いだったり、叱咤だったりという部分をまっすぐ受け止めて、その瞬間、自分が嬉しいのか、イラっとするのかを直感でやっていこうと思って臨みました。
作品から感じる親子の絆
――今作の中で名塚さんが好きなシーンを教えてください。
名塚:個人的に好きなウソップ(CV:山口勝平)がけっこう活躍していて、かっこいいウソップを見ることができて嬉しかったです(笑)。
麦わらの一味のメンバーは、最初に好きになったのがナミ(CV:岡村明美)で、その後サンジ(CV:平田広明)に恋をして……とみんな好きなんですが、ウソップのかっこいいシーンも好きなんです。
ウソップは普段おちゃらけていたり、失敗も多かったりしますが、ここぞという時にかっこいいのが素敵だなと思っていたので、今作でもその姿を見ることができて嬉しかったです。
――今作では親子の絆というものがテーマの1つになっていると思います。名塚さんが今作から感じた親子観や親子の絆についてお聞かせください。
名塚: 環境でいろいろなことが変わってくるんだと感じました。ウタの場合は、幼い頃のシャンクスとの時間と、その後の一人で過ごした時間で、考え方がどんどん変わってきたんだろうなと思います。状況がいろいろと変化したゆえに、今の考え方を持っているんだと感じました。そういうちょっとしたことで、人生は大きく変わってくるんだなと思いました。
自分の親とでもそうですし、娘とでもそうですが、どんなに近い存在でも理解できない部分や分かり合えないことがあります。親子でも全部が分かるわけではないし、言葉を交わさないと、すれ違ってしまうこともある。お互い分かったつもりでいると、全然違う方向に走っていってしまうこともあります。だから話をする、言葉にするというのも、すごく大切なことなんだとこの作品を通して思いました。
――言葉にするということは大切ですよね。
名塚:そうですよね。一緒にいる時間が長ければ長いほど、分かったつもりになってしまったり、分かってほしいという気持ちがお互いにあるから、多くを言わなくても気づいてほしいと思ったりすることはすごくあるなと感じました。
――シャンクスは普段はおしゃべりするというタイプでもないですし、わりと冗談めいた雰囲気を作っているタイプですが、ここぞという時は、しっかり大切なことをまっすぐに伝えますよね。
名塚:そうなんですよね。そこがすごく素敵だなと思っています。