実際はどんな神様!? 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』女神・男神大図鑑! #6|狙った獲物は逃さない好色家な“神”・アポロン編
シリーズ累計発行部数が1200万部を突破した、大人気小説『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(原作:大森藤ノ イラスト:ヤスダスズヒト GA文庫/SBクリエイティブ刊/通称ダンまち)。
2022年7月22日より最新TVアニメ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』が放送・配信中です!
盛り上がりを見せる『ダンまち』ですが、作品の鍵となる存在はやはり「個性豊かな神々」ではないでしょうか。
アニメイトタイムズでは、本作に登場する神々が、実際にはどんな神様なのか紹介する連載を実施中です。
実際に世界中で語り継がれている神話の神々との関連性や、劇中でのエピソード、ファミリアの情報などを解説!
第6回目はギリシア神話に登場する「神・アポロン」。神々の事を知って、『ダンまち』をより楽しく鑑賞してみませんか!?
◆『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 新章 迷宮篇』キャスト連載メールインタビューはこちら
ギリシア神話とは?
古代ギリシャ人から口伝えで紡がれてきた壮大な神と人間の物語。
口頭で語られていたのでエピソードやストーリーにハッキリとした輪郭が無く、話者や地域によってさまざまな解釈をされてきました。
人間臭い一面を持つ神々の挿話を楽しむ物語になっており、神と人間のエピソードも多く描かれています。
『ダンまち』も神様と民衆たちの距離が近く、神達の思惑によって物語の展開が変わっていくので「ギリシア神話」との類似性も感じられるはずです。
多彩な才能を持つ光り輝く神・アポロン
アポロンはゼウスとレトの息子であり、第4回で取り上げた純潔の神・アルテミスの双子の兄です。
ゼウスの妻・ヘラ(※1)は子供ができたレトに嫉妬し、出産に使える土地を全部差し押さえてしまいます。レトはある浮島へたどり着き、その他の神の助けがあってその島で無事に出産。その双子の神が生まれたその島は「デロス島(光り輝く島)」と言われるようになりました。
その後、デロス島はアポロン生誕の地として知られ、貿易港として栄えました。現在は無人島となっており、アポロン神殿跡、アルテミス神殿跡などが残された観光地になっています。
アポロンは美しい顔を持つ他、黄金の竪琴を引くなど芸術の才能に優れていました。また弓の名手であり、医術を人間に初めて教えた医師でもあります。
そしてポイボス(輝く者)という別名を持つ、光・太陽の神とされています。人々の願いを聞くために神託所「デルポイ」を設け、厚く信仰されていました。
また、アポロンには恋愛話が非常に多く残されています。『ダンまち』に登場するアポロンの眷族達の名前やキャラクター設定には、神話で語られている内容が反映された部分も多いです。
※1:ヘラ……結婚と貞節を司る神であり、ゼウスの正妻。女関係がだらしないゼウスの求婚を断り続けたが、最後は折れて妻になった。
アポロンとダプネー
アポロンといえば、頭に付けている葉っぱの冠を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか? 『ダンまち』のアポロンも身につけていますよね。それには彼と妖精・ダプネーの恋愛エピソードが関連しています。
エロス(キューピッドとも呼ばれる)の弓を馬鹿にしたアポロン。エロスは恋の矢を2本放ち、アポロンとニンフ(妖精)のダプネーに的中させます。
恋に落ちたアポロンはダプネーを執念深く追いかけるもダプネーは拒否。自身の姿が変わってもいいから純潔でいたいと願います。するとダプネーは月桂樹の木になってしまうのでした。
そこから月桂樹はアポロンの神木となり、しなやかな葉っぱはアポロンの冠になりました。
このダプネーは、『ダンまち』においてはアポロン・ファミリアに所属していたるダフネ・ラウロスの元ネタとなっています。
アポロンとヒュアキントス
アポロンは古代ギリシアで栄えていたスパルタ国の王子・ヒュアキントスを愛していたとされています。
ヒュアキントスは誰もが振り返るほどの美少年で、アポロンはたいそう気に入っていました。2人は常に共に過ごしていましたが、ヒュアキントスはその美貌から人気者だったようです。
ある日、2人が円盤投げに勤しんでいる最中に、ヒュアキントスに好意を持っていた風の神様・ゼピュロスが、突風を吹かせて彼らの邪魔をします。
すると円盤がヒュアキントスの頭に直撃し、鮮血を流して死んでしまうのでした。アポロンは落ち込み、彼の血から赤い花を咲かせ「ヒヤシンス」と名付けます。
こういった切ないエピソードも知ると、妹であるアルテミスの恋路を邪魔してしまったことも少し分かるような気がしますね。
ヒュアキントスも『ダンまち』に登場していますが、こちらではどちらかというとヒュアキントスがアポロンに心酔しているような描写となっています。
アポロンとカサンドラ
アポロンはカサンドラという美しい娘にも恋をしてしまいます。自分の恋心に応えてくれたら、「予知能力」を与えるというアポロン。
その能力と寵愛を受け取ったカサンドラでしたが、アポロンに捨てられる未来を予知してしまい逃走。予知能力を利用されることに危機感をもったアポロンは、カサンドラの能力が偽物だと人々に伝えます。
カサンドラは自国が滅ぶ事も予知していましたが、誰にも信じてもらえず、ただその時を待つだけとなるのでした。
『ダンまち』でも、たびたび予知夢を見るも、周りに信じてもらえない女性キャラクターとしてカサンドラ・イリオンが登場します。
アポロンとコロニス
アポロンが最も愛したとされる娘がコロニスです。
アポロンの寵愛を受けていましたが、神の職務は忙しく、なかなか一緒にいることができません。
ある日、コロニスの館の見張りをしていたカラスが「コロニスが男を連れ込んだ」とアポロンに告げ口をします。それに激昂したアポロンはたちまちコロニスを弓で射殺してしまうのです。
しかしよく調べてみると、そんな事実は確認できないのでした。アポロンは今度はカラスに激怒。当時のカラスは真っ白な生き物でしたが、アポロンがコロニスの喪に服させるために真っ黒な生き物へと変えてしまったようです。
ちなみに、コロニスのお腹の中には子供がいました。アポロンはコロニスが死んでしまう直前にその子を取り上げアスクレピオスと名付けます。このアスクレピオスは賢者・ケイロンに育てられ、偉大な医神として後の世にも語り継がれていくことになるのでした。