『メガトン級ムサシX』に『マジンガーZ』と『ゲッターロボ』が参戦! 原点と最新作から見るロボット作品の魅力とは?|永井豪さん&日野晃博さんロングインタビュー
ロボットは少年の強くなりたい願望を膨らませて作るもの
ーーロボット作品を見て感動した思い出はありますか?
永井:巨大ロボットではないかもしれないですが、『鉄腕アトム』の敵なども好きでした。『鉄人28号』は大きくて、登場した時はびっくりしたものですが、今思うと6メートルほどのサイズなんですよね。
『マジンガーZ』を作る時は、人が乗り込むし、ホバーパイルダーも使うとなると、相当大きくなるぞと(笑)。こんな大きいものは飛ばないよなとか、動けないんじゃないかなんてリアルに考えたんだけども、漫画だから良いか! と(笑)。
兜甲児は少年だからそんなに大きくないって想定して、身長160センチくらいって設定して、それからどれくらいの等身かなって考えました。
最初は大きすぎると駄目なんじゃないかと思って18メートルくらいにしてみたんですが、ちょっと考えてみるとそれじゃ足りないんですよね。20~23メートルくらいないとこういう画にならない。そう考えているうちにだんだん大きくなっていきました。
日野:ロボットは大きければ大きいほど楽しいですから。
永井:大きくても許されるので、グレートマジンガーはもっと大きくしました。
日野:ムサシも60メートルありますから。
永井:次は100メートルになるんじゃないですか?(笑)
ーー大きなものが動くのはロマンがありますからね。お二人が思うロボットの良さや個人的に好きな部分はありますか?
永井:ロボットは少年の強くなりたい願望を膨らませて作るものだと思いますし、そのベースには甲冑とか武者のイメージがあるんじゃないかな。人間の歴史の中で甲冑を着て戦ってきた歴史がありますからね。
生まれてきた時はそんな事を知らなくても、深層心理の何処かにそういったものへの憧れがあるのかもしれないなと思います。ロボットは究極の甲冑キャラですよ。『マジンガーZ』自体もデザインのイメージは西洋の鎧のパーツをアレンジしたりしています。
目ののぞき穴の縦ラインを口にしてみたり。最初操縦席を作ってみたら、横から攻撃されると危ないなと思って塀をつけたりとか。そうやって徐々にできていきましたね。
日野:これまでにヒーローものって多くあったと思うんです。ロボットはパイロット的な操縦するかっこよさと、ヒーローとしてのかっこよさがあるんですよね。乗り物としてのかっこよさも追加されてるから人気なんだなと思います。僕もその両軸を表現できるように気をつけています。
永井:兜甲児の操縦席であれだけマジンガーZを動かせると思えないんですけどね。
日野:それはムサシも一緒です。レバー2つでどうやって動かすんだ!(笑) そこは変わらないですね。
マジンガーZも乗り物として乗り込んで、動かすかっこよさと動き始めた時の必殺技を出して悪を討つというヒーロー的な側面の両方のかっこよさがありますね。
そこはものすごく研究させていただきました。すごいところだと思います。
強さと悪はある意味一緒
ーー永井先生は『ムサシ』の作品資料やコンセプトに対してどう思われましたか?
永井:声をかけていただいて、世界観とかの制約がかかるのが嫌だなと思って何も見ないで、依頼された内容の中で自由に作りました。
日野:永井先生がデザインした機体の「ヨシツネ」はかなりかっこよくなっています。登場するシチュエーションも相当気を使ってますね。
永井:『エヴァンゲリオン』も庵野さんに言わせると『デビルマン』なんて言ってましたけど、『メガトン級ムサシ』では腕力型のイメージ、レスラーみたいなロボットが良いのかなと思いました。力道山の時代に活躍した豊登とかね(笑)。怪力のレスラー型がとりあえず良いかなと思って。あと日本の武者的なイメージを何処かに出したいとも思いました。
日野:名前が“ヨシツネ”ですからね。
永井:そうなんです。だから甲冑的なものをイメージしながらデザインしていきました。
日野:最初にデザインを見た時、悪の要素を感じました。
永井:強さと悪ってある意味一緒です。戦うロボットを破壊するという事なのでやっぱり悪の要素は入りますね。
日野:マジンガーZも正義の要素と敵メカっぽい荒くれ感がありますよね。
永井:マジンガーZも敵に見えるんじゃないかってよく言われましたね。ああいう兵器の塊みたいなロボットだから、少しくらい怖そうに見えるのが良いんじゃないですかって押し通しちゃったんですけど。
日野:マジンガーZが動いているところや、アニメのフィルムを見ると、これは新しくていいなと納得しましたね。最初は悪要素が強いかもしれないと思ったんですが、それが良かったんです。結果、かっこよくて他のロボットたちとの異質感があって、特別な強さが表現できましたね。
永井:悪いやつが味方になってくれると一番頼もしいというか(笑)。
ーーヨシツネは背中に剣を背負っていて、しかもその剣にはジェットのようなものが付いています。これ、すごいデザインですね。
日野:ジェットスクランダーみたいなね。
永井:『マジンガーZ』の時代からロボットを続けていくにあたって変化させるべきところは兵器かなと思っています。象徴的な武器を作ろうと思っていました。
日野:ムサシよりも相当凝っているんですよ。ムサシはシンプルなデザインですからね。これを出すためにはそれなりの設定が必要です。ムサシのシリーズのひとつとして作られたという事にはできないんですよ。
画を見てからこのロボットのデザインに合わせていろいろ手直ししています。ジェット付きの剣ですからね。
ーーどう動くのか楽しみです。
永井:アニメの人、大変かな……? と思いながらもとりあえず作って。省略していただければと思います。
日野:(笑)。だいぶ大変ですね。
永井:昔からアニメーターに言われてましたからね。『マジンガーZ』でさえ複雑すぎるって(笑)。
日野:このデザインは今のアニメでも難しいですよ。これをどうやってうまく生かしているかも期待して本編を見てほしいですね。
永井:漫画のほうがその辺は描けるのでつい暴走してしまいますね。動かすことを考えるとねこれは迷惑かけたなといつも思います(笑)。
日野:今回はCGでやっているので、ディティールが細かくても大丈夫なんです。そこは良かったです。
永井:CGのお陰でいろんなことができるようになったのは嬉しいですね。