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映画『その声のあなたへ』公開記念|柴田秀勝 × 浪川大輔 ×三間雅文 鼎談

映画『その声のあなたへ』公開記念 柴田秀勝さん × 浪川大輔さん × 三間雅文さん鼎談|同世代・後輩・音響監督から見た内海賢二さんの姿とはーー“声優”という言葉がなかった時代の逸話や『ハガレン』『北斗の拳』に関わるエピソードも

音響監督が感じた“唯一無二の声優”

ーー浪川さんと三間さんは、内海さんについて、今でも記憶に残っている思い出はありますか?

浪川:映画の中でもお話していますが、僕にとって内海さんは“恩人”です。声優を辞めようと思っていたときに引き止めてくださって。たぶん、秀勝さんと内海さんの関係性の逆になっているというか、僕は内海さんに助けてもらいました。

柴田:そのときは同じプロダクションじゃなかったの?

浪川:違うプロダクションでした。僕は子役出身で、小さいときから内海さんと一緒に仕事をさせてもらっていて、二十歳過ぎぐらいに辞めようと思ったときに「もったいないから続けろ!」と言ってくれて今に至ります。

僕、小さいときはあまり人と話せなかったんですけど、内海さんは子供にも大人にも変わらずに接してくれていたので、秀勝さんがおっしゃっていた「内海賢二を演じている」ことがすごくわかりました。

地響きのような声と温かい人柄で小さい頃からすごく覚えていて。ずっと変わらずにフレンドリーな感じで接してくださったので安心感がありましたし、内海さんの息子さんである賢太郎さんと同世代ということで、息子さんとも仲良くさせてもらっていました。

あと、10年前、僕が初めて映画(『Wonderful World』)を作ったときに内海さんにも出演してもらいましたが、おそらく内海さんが歩いて映像に残っているのはこれが最後だと賢太郎さんから言われたんです。

僕が好きな役者さんにお声がけさせていただいたんですが、内海さんも快く出演を引き受けてくれて、本当に嬉しかったことを覚えています。

柴田:彼は若手の面倒を見るのがとても上手でしたよね。いつだったか、ケン坊から「柴田さんから親分肌を学びたい」と言ってくれたことがありました。たぶん、「突風」でまとめていた自分の姿を見てくれていたんだと思います。

ーーそんな素敵なエピソードが皆さんそれぞれの心の中に残っているのですね。三間さんはいかがでしょうか?

柴田:三間ちゃんといえば『ハガレン』でしょう!

三間:まず、柴田さんとの繋がりからお話しますと、実は高校のときに放送研究会で柴田さんがゲストにいらっしゃったんです。

浪川:えーっ! 本当に秀勝さんは活躍の幅が広いですね!

三間:それで、柴田さんの息子さんと僕が同級生なので、柴田さんの家によく遊びに行ったりしていました。

僕が就職して『ドラゴンクエスト』で初めてのアニメシリーズをやらせていただいたときに、柴田さんと現場で初めてお会いしたんです。そしたら、柴田さんの第一声が「三間! お前なんでここにいるんだ!」と(笑)。

浪川:あ! そっか! 息子の友達として三間さんを認識していたから(笑)。

三間:そして、そのアニメシリーズで柴田さんにやってもらったのがムーアだったんですけど、柴田さんは自分がラスボスのバラモスと思って現場にやってきていたから、バラモス役である渡部猛さんと台詞がいきなりユニゾン(同時に喋る事)になっちゃって、現場は大爆笑(笑)。正直、音響監督として接するのが何だか恥ずかしくて、嫌でした(笑)。

柴田:(笑)。

浪川:すごく面白いですね(笑)。

三間:でも、柴田さん本当にすごくて、ムーアの「ムヒョヒョヒョ」という独特な笑いで、ムーアというキャラクターを、さらに膨らませてくださって……。

浪川:さすがです!

三間:「この役、楽しい」と言ってくださって嬉しかったです。そういう意味では、この業界においてとても心強い存在。

あっと、内海さんの話をしないと……。

僕が30代後半で父を亡くしたとき、内海さんが優しく声をかけてくださったんです。元気付けようと巨人、ジャイアンツのライターくれたり(笑)、いろいろとお世話になりました。時には内海さんが、オープンカーの新車を突然現場に持ってきて、「おい三間君!これ、どうやってオープンにするの?どのボタン?これから孫に自慢しにいくんだから、急いで!!」と(笑)。

ーー音響監督の三間さんから見た内海さんは、どのような声優だったのでしょうか。

三間:僕にとって声優さん、役者さんって、皆さんジグゾーパズルのピースなんです。内海さんも、柴田さんも。ピースって世界に1個しかないもので、ピッタリとはまれば、作品は「完成」するんですよ。

でも、今の声優さんって、ピースが皆同じ形で……。これは育てる側にも、受け入れる側にも責任はあるのかもしれないけど。「もう誰でもいい感じ」が正直あります。役者さんだから何でもできるわけじゃなくて、何かをやったら最高! という個性こそが、その見えない形こそが、ピースなんじゃないかと。

たとえば、『ハガレン』のブラッドレイといったら柴田さんですし、柴田さん以外は? と言われても誰も浮かばない。これは内海さんのアームストロングも同じです。だってピースって、同じ形は二つと無いから……。

浪川:キャスティングに関する、すごく良い話ですね……。

三間:だけど、今の人たちは“声”しか求めていない感じがするんです。なので、ピースの形がわからない、どこにはめればいいのかわからない。養成所で学んでいると、学校でピースが全部削られちゃって丸くなっちゃっているのかも。

でも、柴田さんや内海さんは真逆。下手に近づくとケガをするぐらい尖りすぎています。本当にそれぐらい怖かったですし、『銀河英雄伝説』をやっているときも、ベテラン声優さんにうまく説明できなかったらどうしよう、殴られるかも……という思いでやっていました。

でも、内海さんも柴田さんも厳しいところはありましたが、しっかりと向かってくる人(若造)に対してはちゃんと認めてくれた方たちなんです。

浪川:確かに! それこそ親分肌ですよね。

三間:だから、個人的には柴田さんがこの業界にいてくれて本当に良かったなと思っています。柴田さんは僕にとって校長先生のような存在かもしれません。

ただ、僕のダメ出しは聞いてくれませんが(笑)。

一同:(笑)。

柴田:それだけ長い声優業をケン坊も僕もやってきましたからね。まだ「声優」という言葉がない時代からやっているわけだから、そういう意味では思い出話をしたら本当にキリがありません。

そして、今の声優業界も選手交代の時代。時代はどんどん変わってきているなぁと感じますね。この前テレビを見ていたら、ナレーションをしている声優さんの顔も画面に出ていて、僕の知らない方々もたくさんいました。

コロナ禍になってからみんなと一緒にやる機会が少なくなったから、余計にわからないのかもしれませんね。

浪川:それはあると思います。僕だって、初めて知る若い子たちはたくさんいますから。

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