あなたはどちらから観る? 観る順番で結末の感じ方が変わるラブストーリー 映画『僕が愛したすべての君へ』&『君を愛したひとりの僕へ』
映画『僕が愛したすべての君へ』(以下、僕愛)と『君を愛したひとりの僕へ』(以下、君愛)が、2022年10月7日(金)より2作品同日公開となります。
本作は、2016年6月に刊行された乙野四方字さんによる小説(ハヤカワ文庫刊)が原作。“並行世界”を行き来することができる世界を舞台に、ひとりの少年が、それぞれの世界で別々の少女と恋に落ちるラブストーリーが描かれます。
『僕愛』と『君愛』のふたつの世界が絡み合い交差しているからこそ、どちらを先に観るかによって感じ方が大きく変わる斬新的な作品。
どちらを先に観るか、一度しかできない選択から得られる貴重な体験を多くの方に楽しんでもらうために、本作の見どころを紹介していきたいと思います。
少し特殊な“並行世界”
まず最初に押さえておきたいポイントは、『君愛』『僕愛』のどちらの世界も“並行世界”のひとつであるということ。過去や未来でもない、無数にある“並行世界”を行き来することができる世界を舞台にラブストーリーが繰り広げられます。
原作を読んでいない方にとっては少し難しく感じるかもしれませんが、あまり難しく考えず、“無意識のうちに実は並行世界間を行き来していることがある”、“ただし、過去や未来など時間の移動はできない”という点だけ押さえておいてください。
パラレルワールドやタイムシフトを題材にしたライトノベルやアニメは数多くありますが、『僕愛』と『君愛』がこれまでの作品と少し異なるポイントは、無数の並行世界があることを皆が認識しており、自分の行動が他の並行世界に影響を及ぼしていることです。
人生の中で存在する数多の選択。その選択ひとつひとつによって、無数の分岐点が生まれ、無数の並行世界が生まれます。そして、自分がいる並行世界で完結するのではなく、自分のある行動が他の並行世界にも影響を与えていきます。
私たちも日常生活を送っていると「もしあの時にこうしておけば……」「違う選択をした方が良かったのかもしれない」と思うことがたくさんあると思います。過去に戻ることはできないけれど、『僕愛』『君愛』の主人公たちの選択を、”自分だったらどうするか”と置き換えながら観るのも、この作品のひとつの楽しみ方です。
すべての君に伝えたい『僕愛』
『僕愛』こと『僕が愛したすべての君へ』は、主人公の高崎 暦(たかさき こよみ)とクラスメイトの瀧川和音(たきがわ かずね)を軸にしたラブストーリーです。
友達のいない高校生活を過ごしていた暦に、ある日和音が「自分は85番離れた並行世界からやってきており、その世界では2人は恋人だ」と告げたことをきっかけに、グッと距離が縮まり始めます。消極的な暦とは違って、自分の意見をまっすぐに伝えてくる和音。その2人のバランスや、和音の勢いに押される暦の姿が微笑ましくなるシーンも。
無数に存在する並行世界の中で、本人も気づかないうちに自分がいた世界とは違う並行世界へ行ってしまうこともあります。
距離を縮め恋人同士となった暦と和音ですが、暦は、もしかしたら自分は気づかないうちに違う並行世界にいるのかもしれない、目の前にいる和音は本当に自分が愛していた和音なのか?と疑問を持つようになります。
その気持ちとどう向き合い、和音を愛していくのか、が『僕愛』の描くラブストーリーとなります。