アニメ放送中! 漫画『4人はそれぞれウソをつく』橿原まどか先生インタビュー|エピソード作りは、シチュエーションを決めて4人の行動をシミュレーションするような感覚!?
4人が仲良くなっていったのはある種、必然的なことだった
――本作は基本的にはコメディですが、合宿回のように4人の友情に胸を打たれるシーンも多いです。ギャグとシリアスのバランス感で意識していることはありますか?
橿原:あまり自分の中でギャグとシリアスを分けて考えていないので、全部がギャグで、同時にシリアスだと思っています。演出の仕方、スポットライトの当て方が違うだけといった感じです。
『メリンダとメリンダ』という映画が私は好きなんですが、この作品は、1つのプロットを、片方は喜劇として、もう片方は悲劇として描くというもので。
その中で特に印象的だったのが、登場人物の一人が自殺未遂をするシーン。コメディパートでは、窓から飛び降りようとする人を他の人が止めるさまをドタバタ劇として描いています。
一方、シリアスパートでは、音楽や照明がまるで違って、雰囲気がガラリと変わっています。行われていることは同じ自殺未遂なのに、見せ方によって観客が受ける印象が全然違う、というのがすごく印象に残りました。
『4人』も、基本的にはギャグとして描いているんですが、演出を1つ変えればシリアスにもなるようなバランスで描くことを心がけています。
4人の友情の描き方で意識しているのは、「仲良くなくてもいい」ということですね。私が「仲良しの4人を描こう」と考えると、その思いだけが作品に顕在化して、本当の意味での友情が表れなくなってしまうからです。
例えば、翼とリッカは別に仲良くないと思うんです。2人が「休日に買い物に行こう!」という流れにはならないと思うんですよ。
でもだからといってお互いに嫌いあっているわけでも、疎んでいるわけでもありません。学生時代の人間関係を振り返ってみると、必ず同じグループにいたわけでも、そこまで言葉を交わしたわけでもない、まして2人で遊びに行ったこともないけれど、なぜか印象に残っている子っていると思うんです。そのぐらいの距離感でいいかなと思いながら描いています。
――確かに、4人の関係性はすごくリアルに感じられました。その関係性や心情は少しずつ変化も見せているとは思いますが、変化という部分において意識していることはありますか?
橿原:ここまでの話と少し被ってしまうのですが、設定は突飛でも、感情の動きはデフォルメしすぎずに、人間の感情として異常ではないようにすることを心がけています。設定と感情の動きでデフォルメのレベルが違うというか。
4人が仲良くなっていったのは、私が意識したというより、本当に偶然というか、いろいろなシミュレーションをした中で結果的にそうなった、としか言えませんね。
翼以外の3人にとって、この場所は理想的な場所なんです。リッカは革命軍人で、人生の選択肢がない状態でここに来ているので、内心で友達と遊びたくても「私は今、遭難しているだけだから」というエクスキューズ(言い訳)がないと遊べない。千代さんはエクスキューズを求めているわけではないですが、今の理想の生活がいつ壊れるか分からない。関根も、学校に通えるかどうかは所長のさじ加減みたいなところがある。
みんな「この生活は期間限定だな」という思いがうっすらありつつも、「今この場が楽しい」と思っているので、仲良くなっていくのはある種、必然的なことだったのかな、と思います。
みんな割と性格が穏やかというか、善良な人なんですが、「ここに攻撃的な人が入ったらどうなるんだろう?」とは思いますね(笑)。「めちゃくちゃギスギスするのかな?」と。ちょっと見てみたいです。
――面白そうですね! 確かにちょっと見てみたいです。
橿原:4人とまったく異なる特徴の人物と考えると、悪意を持った人物の方が被らないのかなと思います。どうでしょうか?
――今後の展開に期待しています!(笑)