「美術というのは、自然に後ろにあるべきもの」│『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』美術監督・中村豪希さんインタビュー(前編)
美術というのは、自然に後ろにあるべきもの
──映画三部作を振り返って、どんな想いがありますか?
中村:三部作は劇場版だけあって、予算的にも技術的にもとても贅沢につくられた作品となりました。しかも短期間で三本、ここまで密に作り込んでいける機会というのもそうそうないので、そういう意味でも贅沢な仕事だったと思います。
ただ、最初にコンテを見せてもらったときには、原作ファンからの突っ込みも相当あるだろうな、とも正直思ったんですよね。自分自身も原作ファンとしては、あのシーンがないの?とかって、やっぱり思ってしまうから。
でも、映画としての軸を絞る上で切らざるをえないところも出てくるのもやっぱり仕方ないんですよね。叶うことなら全8本くらいでつくりたかった(笑)。なので、今回、カットしたシーンも補完できるということで、とてもうれしいですね。
──三部作では美術監督として竹田悠介さん、中村豪希さん、新林希文さんがクレジットされています。どのように分担されたのでしょうか?
中村:最初は竹田さんが美術監督として立たれていたのですが、三部作となり作品の規模が大きくなっていく中で、分担することになっていきました。自分が入るときに4℃の田中(栄子)プロデューサーから主にCGと絡むところの面倒を見てほしいというオーダーを受けたので、僕は特にCGチームと密に連携していましたね。
──『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』の新規シーンについて教えてください。キービジュアルのひとつとしても描かれている「夢のかがり火」シーンの背景美術は、どのように作られましたか?
中村:実は最初のボードでは、もう少し暗めの星空を描いていたのですが、監督から「この先、ストーリーがどんどん暗くなるので、ここでは空は明るめにしてほしい」というリテイクを受けまして。振り切って、明るく美しく描いていきました。重要なシーンを自分たちで手がけられて、とてもうれしく思います。
あと第9話の滝のシーンのBGにも手を入れていますね。もともとの担当は新林さんのシーンなので、滝など元からあるデータをフルに使いながら、ズレがないように植物を描き足しています。裸のガッツの腰回りをカバーするために(笑)草を配置したりしています。
──最後に、これからの放送を楽しみにしている読者のみなさんへメッセージをお願いいたします。
中村:様々な技術を使って制作している作品ですが、アナログとかデジタルだとか関係なく、どうか物語を見てほしいなと思います。鷹の団の複雑な人間ドラマに注目していただけたらうれしいです。美術というのは、自然に後ろにあるべきものなので、あまり気にしてもらわなくていいんです。キャラクターがかっこよく動いているところをちゃんと支えられていればいいな、と考えています。
今回のTVシリーズは、これまでに『ベルセルク』を観たり読んだりしたことがある方はもちろん、まったく知らない方にもぜひ見てほしいなと思いますね。映画公開から10年経って、このように世に出るとは思っていなかったので、この素晴らしい機会にできるだけたくさんの方にご覧いただきたいです。
▼映画制作時のエピソードなどが明かされる(後編)に続く
[取材:ワダヒトミ]
連載バックナンバー
画像をクリックすると、関連記事にとびます。TVアニメ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』作品情報
放送情報
2022年10月よりTOKYO MXほかにて放送開始!
・TOKYO MX 10月1日(土) 24:30-
・とちぎテレビ 10月1日(土) 24:30-
・群馬テレビ 10月1日(土) 24:30-
・BS11 10月1日(土) 24:30-
・アニマックス 10月16日(日)23:00~
配信情報:
ABEMA、dアニメストア、U-NEXT、NETFLIX、WOWOWオンデマンド、GYAO!、ひかりTV、FOD、バンダイチャンネル、Hulu、auスマートパスプレミアム、TELASA ほかにて配信予定
イントロダクション
全世界累計発行部数5000万部突破(2022年現在)日本を代表するダーク・ファンタジー超大作がTVシリーズとして放送決定!
1989年の連載開始から今もなお孤高の存在として本格ダーク・ファンタジーの軌跡を現代漫画界に刻み続けている『ベルセルク』(著・三浦建太郎/白泉社『ヤングアニマル』連載)。
ファンの間でも最も人気が高い“黄金時代”を三部作で映画化し、2012年~13年に日本をはじめ世界16カ国で公開しました。そして2022年、劇場公開から10年の時を経て、『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』として2022年10月よりTVシリーズにて地上波初登場を予定。
【黄金時代篇三部作】
2012年2月4日公開 『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』
2012年6月23日公開 『ベルセルク 黄金時代篇II ドルドレイ攻略』
2013年2月1日公開 『ベルセルク 黄金時代篇III 降臨』
今回の放送では2012年の劇場公開時にはなかった原作人気シーンの一つでもある「夢のかがり火」など原作珠玉の名シーンが、劇場版同様に恩田尚之総作画監督のもと新規カットとして追加することが決定!さらに、既存カットも、数百カットに手を加え、リマスターとしてバージョンアップ!
新規カットには、平沢進、鷺巣詩郎による、新たな楽曲提供が決定。
ストーリー
己の剣だけを信じてきた。友も家族も帰る故郷もない──孤独な剣士ガッツは、百年戦争に揺れる地を傭兵として渡り歩いていた。身の丈を超える長大な剣を自在に操り、強大な敵をいとも簡単に倒すガッツ。そんな彼に目をつけたのが、傭兵集団“鷹の団”を率いるグリフィス。
美しい姿からは想像もつかない統率力を持ち、大いなる野望を秘めたグリフィスは、自らの夢を叶えるためにガッツを決闘で制し、鷹の団に引き入れる。数々の激戦を共にくぐり抜けるうちに、信頼で結ばれていく仲間たち。なかでもグリフィスとガッツの絆は、今や特別なものとなっていた。
やがて鷹の団はミッドランド王国の正規軍にのし上がるが、それはグリフィスの目指す頂点へのはじめの一歩にすぎなかった。一方ガッツは、グリフィスの「夢」に取り込まれ剣を振り回すだけの人生に疑問を抱き始める。だが、ガッツはまだ知らない。果てなき夢が二人に与えた、恐るべき宿命を──
STAFF
原作:三浦建太郎
メモリアル・エディション監督:佐野雄太
劇場版監督:窪岡俊之
脚本/メモリアル・エディション脚本総監修:大河内一楼
キャラクターデザイン/総作画監督:恩田尚之
アニメーションディレクター:岩瀧智
美術監督:中村豪希 竹田悠介 新林希文
動画検査:梶谷睦子 加来由加里
色彩設計:成毛久美子
CGI監督:草木孝幸 廣田裕介 斉藤亜規子 今中千亜季
編集:重村建吾
音響デザイン:笠松広司
音楽:鷺巣詩郎
オープニングテーマ:平沢進「Aria」(テスラカイト)
エンディングテーマ:中島美嘉「Wish」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:STUDIO4℃
CAST
ガッツ:岩永洋昭
グリフィス:櫻井孝宏
キャスカ:行成とあ
ジュドー:梶裕貴
リッケルト:寿美菜子
ピピン:藤原貴弘
コルカス:松本ヨシロウ
ガストン:矢尾一樹
バズーソ:ケンドーコバヤシ
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