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『うる星やつら』考察~令和世代は電気娘の夢を見るか~

『うる星やつら』電撃バリバリ考察~令和世代は電気娘の夢を見るか~|令和版『うる星』はおっさん向けなのか?

フジテレビ系深夜アニメ枠“ノイタミナ”(毎週木曜日24:55~)で好評放送中のテレビアニメ『うる星やつら』。視聴者が新作アニメの出来を見定めると言われる第3話まで放映され、SNS上でも評価が飛び交っている。

原作はご存じ、高橋留美子先生による昭和の傑作コミック。1980年代にテレビアニメ、劇場版、OVA化もされて大ヒット。冴えない主人公のもとに美少女が空から降ってくる「落ちもの」をはじめ、数多くのジャンルの祖となり、日本のコミックやアニメに与えた影響は計り知れない。

その『うる星やつら』が令和に再びアニメ化されるということで、昭和版を観ていた往年のファン層から初見となる令和世代まで注目したわけだが、評価は実に様々。

そもそも『うる星やつら』はタイトルのごとく、強烈なキャラクターが次々に登場してドタバタコメディを繰り広げるのが魅力の作品だ。第3話では「顔だけはいい」面堂終太郎が暗所恐怖症と閉所恐怖症で取り乱すギャップを見せ、第4話ではカラス天狗一族のクラマ姫が登場する。

まだまだ序盤。役者は出揃っていない。むしろ、これから本番を迎えるのが『うる星やつら』だ。

目次

昭和版『うる星やつら』の想い出補正

改めて、昭和版『うる星やつら』を振り返ってみよう。

大ヒットした昭和版も、最初からテレビアニメの評価が高かったわけではない。大幅なアレンジが加えられ、原作エピソードのつまみ食いに無駄遣い、収拾がつかなくなると最後は爆発で終わらせるなど、原作ファンからは酷評されることも多かった。

 
評価されたのは第10回(第19-20話)「ときめきの聖夜」からで、これ以降も外国映画や有名アニメのパロディ、スタッフの悪ノリも多く、クオリティが安定しない中で時折傑作が生まれるという感じだった。

決定打となったのは、劇場版第2作目となる『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』である。

 
押井守監督の作風が全面に現れた、難解な部分もある本作が、当時の大学生アニメファンを直撃。年齢的にアニメを卒業していなければおかしいと見られる世間体の中、映画として語れる『ビューティフル・ドリーマー』の登場により、考察系同人誌が激増した。

以降、幅広い世代が見るテレビアニメとしての顔と、アニメ文化を本気で考察する層、それを見て「アニメの観方」を学ぶ層にまで『うる星やつら』は支持され、メジャーにしてカルト人気も高いという稀有な作品になっていった。

作画に注目するアニメファンによるアニメーターブームも巻き起こし、土器手司氏などが大人気になった。今ほど声優ブームに偏重しておらず、スタッフや演出を語ることのほうが多かった。

アニメは子供向けという世間のレッテルに対し、アニメ表現の可能性を見せ、大人になっても「アニメファンを卒業しない」流れを生んだのも『うる星やつら』だった。いま活躍しているクリエイターに『うる星』から影響を受けた者がどれほどいることか。

テレビアニメとしては粗もあった。それを想い出の中で補正し、傑作回のイメージですべてを語りがちになるが、今のアニメと比べたら昭和版『うる星やつら』は完璧とは程遠い。それでも本当に面白かったのだ。

令和版『うる星やつら』はおっさん向けなのか

それでは令和版『うる星やつら』はどうか。

第1話で黒電話が登場したように、作中の時代は連載当時の昭和のままだ。キャラクターの思考も昭和であり、主人公・諸星あたるの女好きを今の感覚で見ると、ものすごい肉食系として映る。フラれ男という笑いの的になる感じは、今の時代にはない。

かつては痛快と捉えられたラムの電撃も、今では暴力系ヒロインのカテゴリーに入れられ、敬遠される向きもある。第1話であたるの幼馴染・三宅しのぶに同情が集まったのも、そういう時代なのだろう。今後、机を投げ始めれば、しのぶも暴力系に区分けされるのかもしれないが。

そうした昭和のノリをそのままにした判断は、昭和世代に好まれて円盤の予約数を1位に押し上げた一方、「おっさん向け」とレッテルを貼る令和世代もいる。キャラクターやストーリーが昭和のノリなのは事実であり、下手に手を加えれば大火傷するだけだろう。

その中で、オープニング映像を現代風にしたスタッフのセンスは見事だった。

作画に関しても、令和版は非常に優れている。高橋留美子先生がイメージするラムの髪色は、CDの裏側のような虹色だが、昭和版では緑色で表現された。それが令和版では電撃を放つ際に色が変わるなど、今の技術ならではの方法でラムの髪を表現している。クオリティも高水準で安定し、昭和版と比べるのもおこがましいほどだ。

おそらく昭和世代が最も引っかかるのが、声だろう。「うる声やつら」とも呼ばれた昭和版のキャスティングが完璧すぎて、ラムの声は平野文さんで刷り込まれ、永井一郎さんによる錯乱坊(チェリー)の「さだめじゃ」、安西正弘さんによる竜之介の父の「海が好き」の絶叫などは、あの声あってのものになっている。

令和版のキャストの豪華さは驚くばかりで、あたるの父役に古川登志夫さん、ラムの母役に平野文さんを入れる配慮も昭和世代には嬉しい。

それでも、良いか悪いかではなく、違和感が少ないか多いかで判断してしまうのが、昭和版を観てきた世代の逃れられない宿命だろう。この点に関しては、令和世代はぜひ純粋に楽しんでいただきたい。

さて、違和感のなさで言えば、トップはあたるの母役・戸田恵子さんだ。これほどの大物をあたるの母役に配したことも驚きだが、戸田さんに変わったと気付かないほど、あたるの母としてまったく違和感がない。

期待の高さでは、面堂終太郎役の宮野真守さんを挙げたい。昭和版では神谷明さんが演じ、二枚目とトラブルメーカーぶりを見事に演じ分けた。令和版第3話の面堂を観た感じでは、神谷さんに寄せるだけではない何かをやってくれそうな気配がする。当代きっての二枚目役にしてエキセントリックな芝居にも定評がある宮野さんには大いに期待している。

意外だったのは、あたるの父役・古川登志夫さんだ。神谷浩史さんが古川さんへのリスペクトをもってあたる役を演じているのは強く感じる。それでも、あたるの父役で古川さんが喋った途端、「あたるの声が違う」ことに気付かされる。あたるの父役に古川さんというのは確かに面白い。しかし、神谷さんが必死に令和版あたるを作ろうとしているのが伝わるだけに、父子という形で昭和版と並べられるキャスティングは酷と思ってしまう。

繰り返すが、令和世代には純粋に今のキャスティングで楽しんでいただきたい。昭和版と比較して、今の声優たちの仕事ぶりを違和感のなさでしか評価できないのはもったいなさすぎる。

令和に舞い降りた電気娘

地球侵略に来た宇宙人。鬼のような角を生やし、超能力で空を飛び、電撃を放つ。言葉がなぜか仙台弁風。われらが愛するラムちゃんは単にかわいいだけでなく、キャラ立て要素の宝庫なのだ!

まず、普段着がビキニスタイルでOHセクシー! おまけにダメ男のあたるに一途で、抱きつくなどの愛情表現も積極的。男にとっては理想が服着て歩いてるようなものだ(半裸で空飛んでるけど)。

料理の腕が壊滅的で、作ると危険物が出来上がるというのもラムちゃんが発祥。残念系ヒロインの祖でもある。

特徴的な語尾(だっちゃ)を持つキャラの原点にして頂点。耳が尖った人外キャラ。ビキニプロテクター(ビキニアーマー)を着用。ラムちゃんの一要素だけでもキャラが成り立ってしまうほどに、彼女は魅力に溢れた奇跡的なキャラクターなのだ!

実は令和版で、大いに期待しているところがある。昭和版はかなりアレンジが加えられたため、原作者の意図とずれたところもあった。今回は原作準拠ということで、「あたるには決してラムに『好き』と言わせない」高橋留美子先生のこだわりが、最後まで通されるかもしれないのである。

原作のラストエピソードでは、ラムがあたるに「好き」という一言を言わせるために、地球規模の大騒動を繰り広げた。そして最終回ラストのコマで、『うる星やつら』を不朽の名作にしたあたるの名言が生まれたのだ。

ここを見事に決めるには、アニメを仕切り直すしかなかった。令和版はそこにこだわった上でのアニメ化なのではないかと読んでいる。

令和に再び空から舞い降りた電気娘。怒って電撃を喰らわせるのも、ダーリンに自分だけを見てほしいから。

本気だからこそ「好き」と言えない男と、両手いっぱいの「好き」で迫って来る女による恋の追いかけっこ。

本物の面白さは時代を超える。

[文/昭和おじさん]

TVアニメ『うる星やつら』作品情報

Introduction

「でもうちは、やっぱりダーリンが、好きだっちゃ。」

地球“最凶”の高校生・諸星あたると、宇宙から舞い降りた“鬼っ娘”美少女ラム。二人の出会いからすべてが始まった…!

今なお第一線で活躍する高橋留美子のデビュー連載「うる星やつら」。小学館創業100周年を記念し、選び抜かれた原作エピソードを4クールに渡ってテレビアニメ化!(第1期2022年放送予定)

監督は「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」を手掛けた髙橋秀弥・木村泰大、シリーズ構成に「はたらく細胞」の柿原優子、キャラクターデザインに「おそ松さん」「映像研には手を出すな!」の浅野直之、アニメーション制作は「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ、「炎炎ノ消防隊」のdavid productionが担当。そして、主人公の“ダーリン”こと諸星あたると、ヒロイン・ラムという稀代のカップル役を神谷浩史と上坂すみれが演じる。

大胆不敵、恋にも全力、でもどこか切なくて…あたるとラムのボーイ・ミーツ・ガールを、銀河中から集結するキャラクターたちが彩るラブコメディ。

目を見て「好き」と言えない今だからこそ届けたい。
ゴージャスでタフ、クレイジーな“やつら”の青春がかけめぐる!

放送情報

2022年10月13日よりフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて毎週木曜24時55分~放送中

配信情報

10月14日(金)12:00より順次配信スタート

■見放題配信
Amazon Prime Video/dアニメストア/Disney+(ディズニープラス)/dTV/FOD/J:COMオンデマンド/milplus/NETFLIX/U-NEXT/WOWOWオンデマンド/アニメ放題/バンダイチャンネル/ひかりTV

■最新話期間限定 無料配信
GYAO!

■都度課金
Amazon Prime Video/DMM.com/Google Play/GYAO!ストア/HAPPY!動画/J:COMオンデマンドmilplus /music.jp/Rakuten TV/YouTube(レンタル)/バンダイチャンネル/ひかりTV/ビデオマーケット/ムービーフルPlus

※放送&配信時間は予告なく変更になる可能性がございます。

原作

高橋留美子「うる星やつら」(小学館 少年サンデーコミックス 刊)

スタッフ

監督:髙橋秀弥 木村泰大
シリーズディレクター:亀井隆広
シリーズ構成:柿原優子
キャラクターデザイン:浅野直之
サブキャラクターデザイン:高村和宏 みき尾
メカニックデザイン:JNTHED 曽野由大
プロップデザイン:ヒラタリョウ
美術設定:青木 薫
美術監督:野村正信
色彩設計:中村絢郁
CGディレクター:大島寛治
撮影監督:長田雄一郎
編集:廣瀬清志
音楽:横山 克
音響監督:岩浪美和
アニメーション制作:david production

音楽

オープニング・テーマ:MAISONdes「アイウエ feat. 美波, SAKURAmoti」(Sony Music Labels Inc.)
エンディング・テーマ:MAISONdes「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」(Sony Music Labels Inc.)

キャスト

諸星あたる:神谷浩史
ラム:上坂すみれ
三宅しのぶ:内田真礼
面堂終太郎:宮野真守
錯乱坊:高木渉
サクラ:沢城みゆき
ラン:花澤香菜
レイ:小西克幸
おユキ:早見沙織
弁天:石上静香
クラマ姫:水樹奈々
温泉マーク:三宅健太
尾津乃つばめ:櫻井孝宏
面堂了子:井上麻里奈
あたる父:古川登志夫
あたる母:戸田恵子
ラム父:小山力也
ラム母:平野文

公式サイト
公式ツイッター(@uy_allstars)

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