『アキバ冥途戦争』とんとことんキャスト座談会・前編│衝撃のラストに「嵐子としては悔いはなかった」。予想不可能な最終話でメンバーの生き様を感じてほしい【連載第12回】
「嵐子としては悔いはなかった」
──第11話のアフレコのエピソードを教えてください。
佐藤:私たちは、なごみ、嵐子、凪(皆川純子さん)で録ったような。
高垣:私たちは4人(高垣、黒沢、田中、ジェーニャ)一緒だったよね。
黒沢:後半はよく一緒でしたよね。
田中:でした!
高垣:私たちのチームの前に他のメイドさんが録られていて。
田中:未だに覚えているのが、カンガルー役員のポケットに穴が空いてしまうところ(笑)。「あっ…あぁっ…ポケットに穴が開いちまった…」って。
高垣:(渡辺)明乃さんの?
田中:そうです。
高垣:かなりのパターン数を録ったと聞きました。私たちのチームの前に他のメイドさんが録られていて。(収録ブースから)出てきた時に明乃さんが「どれになるか楽しみにしています!」って言っていて。
一同:聞きたい〜!
ジェーニャ:ちょっと罪悪感があります(笑)。殺さないで良かったのにって。
田中:あの辺はものすごくこだわって作っていた印象があります。
高垣:台本では読んでいたんですけど、別々にアフレコしていたので雰囲気は分からなくて。完成したものを見せてもらったときに、凪のところにふたりで行くところの緊張感だったり、クールだった嵐子さんが頼み込む姿だったりとか、すごく印象的でした。
近藤:凪の部屋(ケダモノランドグループ・代表室)に行くシーンはめちゃくちゃ緊張しました。嵐子さんが死ぬと知っているからこそ、ちょっとでも嵐子さんの死が漂った瞬間に「えっもうやだ!」と思ってしまって。
その気持ちのまま、素直になごみに乗せられたのかなと思っています。あんなに必死にお願いしている嵐子さんの声を間近で聞いて、「嵐子さんがこんなに叫ぶんだ」ってリアルにびっくりしました。なんだか不思議なシーンでした。シリアスなはずなんですけど、真面目に「カニ頭、詰めさせていただきます!」って(笑)。
佐藤:ね(笑)。凪も「あ、そうなんだ」って感じがあって。絶妙なバランスで成り立っている気がしますよね。でも抗えないものはあって。その中でどうにかしたいと、もがいていくのが人間なんだろうなと……嵐子はずっと迷っているというか。しんどいなぁって思います。最初は美千代さんが道しるべのような存在になってくれていましたけど、その人を失って迷子になってしまって。
でも「自分のやれることはこれだ」と、とんとことんに行ったら、思った以上のものを与えてもらえて、まっすぐななごみちゃんがいてくれたので、その道をきちんと歩めるようになって。嵐子の旅は、ここに至るためのような感じがしました。みんなのことが好きなんだよね、って。でも、ともよちゃんが言っていた通り、多くの人を殺しすぎているというか。奪うものは、やはり奪われるものなんだなと。なんて言うんですかね、これは。
一同:(うなずく)
高垣:第11話を見て店長として「もうありがとう〜!」と思ったのが、「メイド喫茶とんとことんはこれからのアキバに必要なメイド喫茶です」と嵐子が凪に言うシーン。でも結果的にそういうことだよねって。嵐子は自分自身がそこに絶対に残ると思っているのではなくて、きっと、自分がどんなに汚れても、命を懸けてでも世界を変えていくと考えていたんじゃないかなと。その未来に自分がいるかは考えていないのかもしれないけど「この人は先を見てたんだな」と思います。嵐子、ありがとう……!
佐藤:とんとことんは嵐子にとっての光だったんだと思います。最初にも言いましたけど、やっぱり死にたくなかった〜(苦笑)。でも……それと同時に「(十分)生きられたなぁ」とも思っていて。みんなとの楽しい時間があったから、嵐子の人生は彩られて、歩んだ道に悔いはないけど、だからこそ、もっと一緒に居たかったな……。
「面白かった」と言っていいのか分からないところまで含めて「面白かった」
──それぞれの回のインタビューでも少しお伺いしていたのですが、とんとことんメンバーの皆さんはそれぞれご面識はあったんです?
高垣:私は全員知っていました。
──さすが店長!
高垣:キャストを見たときに「すごいメンバーだな」と思いました。ただ今回は(ご時世柄)ゆっくり話す機会はあまりなかったので残念でした。
ジェーニャ:私は半々かな? 若いメンバーには「はじめまして」と挨拶しましたが、みんなすごく優しくて。当初はみんなに迷惑かけちゃうかな?と心配していたんですけど、彩陽ちゃんと利奈ちゃんとは過去に仕事をご一緒したことがあったので安心していました。それでも最初は緊張してたけど、だんだん楽しくなってきたんです。
佐藤:私も皆さんと面識はありました。
近藤:私はきちんと佐藤さんとご一緒するのはこの作品で初めてで。個人的にすごく嬉しかったです。
黒沢:私はこの作品でジェーニャさんと初めてご一緒することができました。
田中:私もです。
近藤:ジェーニャさんとアフレコでご一緒できたのは第10話だけだったんですよね。一番楽しみにしていました! 生でお声が聴けて嬉しかったです。
ジェーニャ:わあ、ありがとう。なごみちゃんは本当に大変な役だよね。いろいろなお芝居を求められるから。
近藤:なごみは忍者のほうが向いているんじゃないかと(笑)。
高垣:なごみのいろいろな面が次回の第12話も含めて見られると思います。ちょいちょい人が変わっていくんだけど、ブレていないものがある。それがわかるんじゃないかなと。
ジェーニャ:何気なく名言が入ってきて。歴史に残れば良いなって。
高垣:でも台本を見ていると「このセリフ何だろう?」っていうものがあって(笑)。私たちで声は入れていますけど、監督やディレクターさんが全体を見てバランスを取ってくださっていると思います。
佐藤:チームとんとことんは、自由なところはすごく自由で、でも最後の最後には絆があります。家族感・信頼感も。
でも、生きるってなんだろうって思いますね……この作品について未だ上手に喋れません……。ものすごく混沌とした気持ちになります(苦笑)
高垣:「面白かった」と言っていいのか分からないところまで含めて、「面白かった」のかなとも思います。それに「面白かった」という一言でまとめられない作品だなって。もし、「この作品を一言で表すなら?」と聞かれたら、私たちも、視聴者の方も難しいと思います。第1話が始まった時から「見る人はどういう感想を抱くんだろう?」「どう受け取るんだろう?」と未知数でした。
でも、今までにない感覚に陥ることは間違いないはずと思いながら演じていて。そういった部分でもみんなで挑戦するというか。「これを世に届けるために!」という気持ちで臨んでいました。ようやくここまで見ていただけたので、皆さんがどう思っているのか気になりますね。
田中:視点を変えるだけで視聴者の方々の感想って変わるんだろうなって思います。だからすごく難しくて、言葉にしづらくて。シュールと言えばシュールだし、血が飛び交うこともある。考えさせられる作品です。まさに一言では言い表せない作品なので、実は今日の取材も「なんて言おうかな」って考えていました。きっと皆さんの受け止め方はそれぞれ違うと思うので、視聴者同士で話し合ってもらえたら楽しそうだなと。
ジェーニャ:そういう意味では、最終話の前にもう一回見直すと面白いと思う。何度も見られる作品だなって。私も何度も見てる(笑)。ちょっとした伏線にも気づくし。
田中:わかります! それぞれ思いがまったく違うから、回が進むうちに、しぃぽんとゆめちって常識人だったんだな!って思いました(笑)。最初はぶっ飛んだキャラクターだと思っていましたけど、なごみが一番ぶっ飛んでる(笑)。
黒沢:しぃぽんとゆめちはニコイチだったよね(笑)。
田中:ね、リアクションも含めて(笑)。
黒沢:ひとつのセリフをふたりで割ることがすごく多くて。
ジェーニャ:野球のときもそうだったね。