舞台『アキバ冥途戦争 〜浪速喰い倒れ狂騒曲〜』和平なごみ役・佐藤日向さん×万年嵐子役・野本ほたるさんインタビュー | 「OVAを観た気持ちになれる」佐藤さん&野本さんが語る舞台ならではの立体感とオリジナルキャラクターの魅力
舞台『アキバ冥途戦争 〜浪速喰い倒れ狂騒曲〜』が、9月6日(水)〜9月10日(日)の期間中、東京・博品館劇場で上演!
本作は、2022年10月〜12月に放送され、奇抜な世界観や従来のメイド像を覆すキャラクターたちが話題を呼んだオリジナルアニメ『アキバ冥途戦争』の舞台化作品です。
ある日、福引で大阪団体旅行を引き当てた主人公・和平なごみ。たこ焼きを求めたどり着いた日本橋にはメイドの一大勢力が存在して……。おなじみの「とんとことん」メンバーに加えて、オリジナルキャラクターも登場する本作は、アニメ版のファンはもちろん、初めて『アキバ冥途戦争』に触れる方も楽しめる内容となっています。
アニメイトタイムズでは、本作の上演を記念して、和平なごみ役・佐藤日向さん、万年嵐子役・野本ほたるさんにインタビューを敢行! 佐藤さん、野本さんが感じた舞台とアニメの違いや稽古場の様子など、作品に関するお話を語っていただきました。
野本さん「ひーちゃんがはっちゃけてる!」
――まずは、TVアニメや舞台の脚本から感じた『アキバ冥途戦争』の印象を教えてください。
佐藤日向さん(以下、佐藤):アニメの第1話が放送されたときのSNSの盛り上がりは、リアルタイムで見ていました。「すごいけど分からない時間だった」みたいな感想が飛び交っていて(笑)。私自身、アニメを観終わった後で呆然とする感覚がありました。
舞台の脚本も同じく、脳の処理が追いつかないままにどんどん進んでいくので、アニメを観た方には「そうそう。“分からない”が分かるんだよね」と思っていただけるはずです。
野本ほたるさん(以下、野本):全体的にスピード感のある作品で、自分が乗り遅れているのか、乗りすぎているのかも分からなくなって(笑)。混乱の渦に否応なく巻き込まれる世界観は「一体いつのアニメなんだろう?」と思う一方、ワクワクする要素の一つだったので、シンプルに面白いと思いました。
――佐藤さんのお話から察するに、舞台でも破天荒な物語が展開されそうです。
野本:「そうはならんやろ!」という展開が多いので、とりあえず考えるのはやめた方がいいなと(笑)。「なんで!?」と思ったら負けですね。
佐藤:アニメは、残酷にも捉えられる出来事でもあえてコメディチックに演出されていました。舞台では、それに加えてアドリブや川尻さん(脚本&演出・川尻恵太氏)の演出が彩りを与えていて、作品の世界観がより鮮明になっています。
――舞台の時系列は、TVアニメで言うとどの辺りなのでしょうか。
佐藤:なごみはねるらちゃん(「侵略カフェですとろん」に所属するメイド)が亡くなった後、自分の心をある程度整理した状態です。ただ、第1話のゆめちが歌っている間に、嵐子さんがオタ芸をしながら拳銃をぶっ放すシーンのオマージュもあって、各話の美味しいところを抽出したような構成になっています。
メインストーリーは、第8話で描かれた野球のようなバカバカしい対決を「大阪でやるならこうだよね」と思っていただける内容です。私としては本作特有のノリを舞台でも表現できるんだなと驚きました。
――自身が演じるキャラクターについては、どのように捉えていますか。
佐藤:和平なごみは無意識に周りを明るくする性格で、メイドの生き様を全うしようとしている女の子です。秋葉原の現実を知っても絶望せず、任侠の世界にも染まらないピュアな存在だと思います。主人公らしい人生を歩んでいる子ですね。
舞台の物語は、登場人物の関係性がある程度出来上がっている状態から始まることもあり、なごみが「とんとことん」のみんなの優しさを引き出すトリガーになっているなと感じました。
野本:アニメで描かれた過去の嵐子と、なごみたちと出会った頃の嵐子はかなり印象が違いますよね。彼女には壮絶な過去の経験が重く乗っかっていて、心のなかで沸々と燃えるメイドへのこだわりもかなり強いです。淡々としているようにも見えるし、熱い人にも見えるという人生の全て経験したような深みが嵐子の魅力だと思います。
――なごみを演じるうえで難しさを感じることは?
佐藤:普段の私には、なごみほどの明るさがなくて……。今まで演じてきたキャラクターも真面目で、心に消化しきれないものを抱えている役が多かったんです。常に明るく、みんなの中心にいるタイプは初めて演じるので、使うカロリーの高さにびっくりしています。
そのうえで、店長の駄目なところにはツッコミつつ、乗るところは乗るなど、愛くるしい面が多いため、そういう魅力を舞台でも表現したいと思いながら稽古に臨んでいます。
―― 一方の嵐子は、どんな状況でもぶれないキャラクターですよね。
野本:周りで何が起こっても自分の信念を貫く人なので、あまり動じないのかもしれません。だからこそ私も、彼女のメイドに対するこだわりと正義感を常に意識していますし、絶対に軸がぶれないからこそ、演じるうえで難しいとはあまり感じなくて。
私も一つの目標に向けて動く性格だからか、彼女とかけ離れているという感覚があまりないんです。何気ないシーンで、ぼーっとしているのか、考えているのか、分からなくなるときはたまにありますけど(笑)。逆になごみは色々な出来事に一喜一憂して、振り回されるじゃないですか。嵐子となごみは両極端なふたりだと思います。
――嵐子を演じるうえで、楽しいと思う瞬間があれば教えてください。
野本:常に変わらない嵐子のテンションには、じわじわきますね。周りがボケたり、ツッコんだりしているシチュエーションでも真顔でひとり立っていると、自分でもよく分からなくなってきて(笑)。私はゲラ(笑い上戸)なので、みんなのお芝居に惑わされたり、墓穴を掘って笑わないように気をつけたいと思います。
――思わず笑ってしまうようなクセの強いシーンも多いと思います。お互いの芝居をご覧になっていかがでしたか。
野本:こんな元気なひーちゃん(佐藤さん)は初めて(笑)。
佐藤:そうだよね!
野本:本人も、演じる役もしっかり者のイメージがあるから、最初は「ひーちゃんがはっちゃけてる!」と驚きました。
佐藤:とんとことんの空気を盛り上げるのは、なごみの役目だと思っています。陰鬱とした場の光になれるように、今はアニメを観ながら彼女を研究をしているところです。ただ、決して明るいだけの子ではないので、そこだけは間違えないように頑張ります。
のっさん(野本さん)は、既に雰囲気が出ていて嵐子さんそのものですね。カーテンコールで歌う曲が、TVアニメのエンディング主題歌「冥途の子守唄」なんです。嵐子の人物像がより立体的になっているなと感じました。