アニメ店長こと兄沢命斗はこうして生まれた! 今だから話せる裏話も飛び出す!?|知っているようで実は知らないアニメイト池袋本店の歴史【番外編】
庵野秀明さんが作ったTVCMが存在!?
ーーアニメ店長は漫画以外の展開も多く行われていましたが、このあたりはどのように進められたのでしょうか?
萩原:漫画とほぼ同タイミングで主題歌「アニメ店長」とドラマCDを作りました。主題歌は開店、閉店の際に流れる音楽にしようと思いまして。
ドラマCDの最初は店舗のオーディオ・ビジュアルまつりの特典でした。関智一さんは最初の主題歌から、星井ラミカ役の長沢美樹さんは特典ドラマCDから出演していただいております。
この特典ドラマCDの評判が良かったので、その翌年に販売用のドラマCDが作られました。「最白-トレブラン-」と「ラミカード娘。」っていう2種類です。
「最白-トレブラン-」は出演声優さんを当時の人気作のキャストさんから選出させていただき、その『最遊記』の『最』の字と、『Weiβ』の『(ドイツ語で)白』から名付けて「最白」と。
『ラミカード娘。』はモーニング娘。のパロディで女の子の店員がいっぱい出てきました。
ーーどちらも当時大人気でしたね。
萩原:はい、おかげさまで。その後、文化放送様の『超機動放送アニゲマスター』でアニメイト提供のフロート番組の中でラジオドラマを流して、それがアニメイトに行かない方たちにもリーチするきっかけにもなりました。
イベントも活発的に行っていて、関さんと長沢さんには「アニメイトEXPO」で総合司会をやっていただいたり、全国行脚と称して、北は北海道、南は九州までの店回りと店頭イベントもしていていただきました。当時は配信というものが無かったので現場でしか聞けないものばかりでしたね。
またかなり企画初期の段階で『アニメ店長』だけのイベントを旧・豊島区民センターでやりました。関さん、長沢さん、三木眞一郎さん、子安武人さん、綱掛裕美さん、そして島本先生が出演して壇上で生ドラマをやりました。それもCD化しました。
ーーいろいろやっていたんですね。その他に特徴的なものは?
萩原:2002年の1月に「アニメイトEXPO」でガイナックス制作の『アニメ店長』プロモーションアニメを作りました。友情監督は庵野秀明さんです。
ーーそれはすごい! CMの制作経緯は?
萩原:やっぱりアニメを作りたかったんですよね。でも、なかなか難しくて。「せめてプロモーションビデオは作りたい」と社内にもお願いして、なんとか作れることになりました。
それでただ作るだけではつまらないと思ったので、『新世紀エヴァンゲリオン』などでお世話になっていたガイナックスさんにお願いしようと思ったんです。もしかしたら島本先生のつながりで庵野さんが協力してくれるかもという希望もありつつ。
そしてダメ元でお願いさせていただいたら「島本和彦の作品だったらやってやろうじゃないか!」って言ってくださりました。演出、作監は今石洋之さんに請け負っていただけました。
ーー『天元突破グレンラガン』の今石さんですか!
萩原:はい。コンテなども全部今石さんです。庵野さんと今石さんを含めたスタッフさん達に、実際に池袋店に撮影にきていただきました。
当時もガイナックスさんはかなり忙しかったようなんですけど、「スタッフみんながアニメ店長をやりたがって困る」っておっしゃってました(笑)。
今石さんはもちろん、最初のフラッシュや兄沢の爆発は庵野さん、そして鶴巻さんや吉成さん、摩砂雪さん、すしおさんなど錚々たる方々が原画に入っていただき完成した珠玉のフィルムです。
ガイナックスさんは面白そうだからやるって言ってくれる、そのノリの良さはもちろんですが、それを大の大人たちが大人げない本気で取り組む情熱が好きでしたね。
ーーなんでガイナックスさんでCMなんだろうって思っていたんですが、いい話ですね。
萩原:やはり島本先生の人徳がこういうところにも出ていますよね。
また、関さんの歌がすごくうまいから映像も作りがいがあったそうです。カットインのシーンでは長沢さん、三木さん、子安さんの他に、平田(広明)さん、小杉(十郎太)さんにも出演していただきました。そしてナレーションは島本先生ご本人が、某特撮番組のオマージュでご出演されました。これも庵野さんの演出によるものだと聞いています。
ダビングに立ち会っていた庵野さんの、一コマ単位の指示がすごかったんですよ。音楽と画のタイミングが的確で、『エヴァ』のオープニングのカッコ良さを肌で感じることができました。
ーーそんなすごい映像が存在したなんて……。
萩原:あと映像で言うと、アニメ店長10周年のタイミングでufotable制作の『東方Project』コラボ映像とオリジナルCMのPVも作っていただきました。
アニメの映像を兄沢がイベント会場に納品しに行こうとしたら転んじゃって、『東方Project』の世界に迷い込んでしまうっていうお話でしたね。あれもすごいクオリティの映像でした。