緒方恵美さん30周年記念Live「禊2022-NEXT STAGE!-」レポート! 30年分の想いに触れる「旅」が始まる──
声優・アーティスト活動30周年を迎えた緒方恵美。2022年10月から始まったお祭りイヤーは「緒方恵美、30周年補完計画。」と題して数々の企画が展開する。
2022年12月17日にはその第1弾として、全アルバムから1曲以上を引っさげ、30年分の魂をぶつけることを宣言したライブ「禊2022-NEXT STAGE!-」が神田明神ホールにて開催された。
新規・古参問わずに楽しめることを掲げた本ライブではメドレー形式で29曲を披露。MCでは年代ごとに自身の活動を振り返りつつ、声優・アーティストとしての本音を交える場面も。そんな緒方のこれまでとこれからを体感できたライブの様子をレポートする。
全29曲で声優・アーティスト活動を振り返る
新規古参、性別国籍を問わず、多くのファンが緒方の登場を待つ会場内。「30周年補完計画」の始まりを古参と新規のファンが今か今かと待ち望む。
開演とともに盛大な拍手が響いたと思いきや、ピアノの音色が響くと会場内は一気に静寂に包まれる。緒方の歌声が加わり「時間旅行」の演奏が始まる。しかし、そこに緒方の姿はない。これは、「声で出会ったでしょ?」と多くのファンは緒方のことを「声」で知ったからこその演出だということが後のMCで明かされた。
粋な演出で会場を盛り上げると、2曲目「Far away~水色の鳥~」からステージに登場。続けて「HIKIGANEを引け!」「can’t go back my mission」をメドレー形式で畳み掛ける。
最初のMCでは会場、配信で見守るファンに「皆さんこんばんは!」と挨拶を済ませると、今回は新規、2回目、古からのファン、出戻り、集まったそれぞれのファンに楽しんでもらうと宣言。メドレー間のMCでは緒方による曲の解説もセットで、初心者には「お試し版」となるような、古参はあの頃を思い出すような、各々が楽しみを見つける旅のようなライブを楽しんでほしいと伝えた。
お次のメドレーは“恋愛が育っていく風景”をコンセプトに、「タイム・リープ」「たんぽぽ」「正直さの内側」「青い宝石の君」。MCでは初期の曲たちを懐かしみつつ、この時代の曲は声優らしく声を変えたり物語を紡ぐような曲作りをしていたと語った。
続いては、そんな初期曲の中でも「一際変な曲があります」と紹介された「カミング・アウト」。アニメ『暗殺教室』のキャスト陣がボイス部分を担当するこの曲は、新宿2丁目のママたちに相談しながら書き上げた曲というエピソードが明かされた。また曲名にちなんでバンドメンバーのカミングアウトも。緒方との親交の深さを覗かせるエピソードから配信ギリギリのカミングアウトが語られる中、最後に緒方は「老若男女すべての人を愛せます」と笑顔でカミングアウトした。
MCでは2022年に逝去された関係者を振り返る場面も。そして7月に亡くなった大熊謙一氏の提供曲である「建設途中のビルの上から」「sunrise, sunset」を熱唱すると、自身が鎮魂歌として掲げる「ENDLESS LOVE」をフルバージョンで響かせた。
再び声優アーティスト人生を振り返った緒方は、苦労も多かったという30代にたどり着いた“痛ROCK”を披露。その最たるものだと自負する「砂の城」を皮切りに「悪魔のkiss」〜「hit man」「鏡の国のアリス」を畳み掛けた。
一旦観客とのコールアンドレスポンスをおさらいしたところで、「次は飛ばざるを得ない曲」「謎の曲」と次の曲が紹介されると客席から薄っすらと笑い声が。そしておなじみ「Byo-doでいきましょう」の演奏がスタート。2022年春バージョンの今回は「おぅ!」「わ~お」「よぉ!」の効果音が荒ぶる内容で、効果音の連続に緒方も笑いが堪えられない様子だった。
観客とともにジャンプで決めた「Byo-doでいきましょう」に続くメドレーは“癒やしと寄り添い”がテーマ。緒方の音楽活動・声優活動に欠かせない人物である井上俊次との思い出を語ると、「皆さんそれぞれ、肩を叩いてくれるような方のことを想って聴いていただければ」と伝えて「silver rain~piano ver」。続いて、「花」「ハッピーの誕生」「My Dream=My Will」を歌い上げた。
ライブは終盤。「最後の曲になります」とアナウンスした途端、それを拒否する意味で観客たちは地団駄を踏む。会場内に大きな地響きが起こると、緒方は「ありがとう!」と想いを受け取った様子だった。
ここからは緒方の音楽活動に再び火が灯った時期の曲に。架空のロボットアニメのOPテーマをイメージした「silent decide」、自身が主人公を演じるゲーム『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』より「再生-rebuild-」、ゲーム『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』より「断鎖-break-」を歌い上げると一旦会場を後にした。
緒方がステージを離れた途端、会場内にアンコールを求める大きな拍手が響く。3分以上絶えることなく拍手が続くと再びステージに緒方が。観客と同じ「禊 2022 ビッグTシャツ」を身に着けた緒方はギターの目木に寄り添い、優しい歌声で「サンタクロースになりたい」を歌った。
続くMCでは、近年体調不良を訴える役者が多い声優について持論を展開。声優の仕事について「芸能界イチやることが多い」と切り込むと、昔から声優という仕事は「病む」ものであると言い切る。
アニメやゲームの仕事が好きで、今でも軸はアニメやゲームにあるという緒方。しかしながらその世界は安定に欠けており、常にメンタルを強く保つことを心がけているそうだ。加えて、そんな厳しい世界で声優を続けてこれたのは音楽があってこそだと語ると、改めてここまで応援してくれたファンに感謝を贈った。
出演作品、ソロリーディングプロジェクト「HALF MOON 2023」、声優生活30周年記念カバーミニアルバム「アニメグ。30th」を告知し、30周年記念イヤーへの意欲を示したところでクライマックスに。「freedom」ではタオルを投げ、観客とのコールアンドレスポンスを繰り広げて観客を沸き立たせると「Try Out, Go On!」「僕を放て」を熱唱した。
全アルバムから1曲以上を引っさげ、30年分の魂をぶつけることを宣言した今回のライブ。締めくくりとなるのはライブ名にもある「NEXT STAGE」。まだまだ声を出せずに悶々としているであろう観客に、想いを拳に込めてほしいと伝えると、会場でもある神田明神に届くような力強い歌声を響かせ、「緒方恵美30周年補完計画」の第1弾を締めくくった。
緒方恵美30周年記念LIVE「禊2022-NEXT STAGE!-」
日時:2022年12月17日(土) 16:15開場/17:00開演
会場:神田明神ホール