ゲームやアニメの魅力を原作者 田中靖規先生が語る! 「サマータイムレンダ Another Horizon」発売記念 スペシャルインタビュー
マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で連載され、累計閲覧数1億5000万回を記録した人気コミック「サマータイムレンダ」(原作:田中靖規)。和歌山市に実在する離島・友ヶ島をモデルとした「日都ヶ島」を舞台にしたタイムリープSFサスペンスだ。
TVアニメ版も2022年4月から9月まで放送された人気作だが、11月より各配信サービスでもアニメが視聴可能となり、ランキングの上位を埋めつくす等、ますます話題を集めている。
そして、来る2023年1月26日にはいよいよ、“タイムリープADV”と銘打ったNintendo Switch™ / PlayStation®4用ゲーム「サマータイムレンダ Another Horizon」が発売となる。
ゲームの発売を記念し、原作の田中靖規先生に改めて、新たに発売となったゲームや、惜しまれつつ最終回を迎えたTVアニメの魅力、さらにはスピンオフ作品についても改めて語っていただいたので、アニメイトタイムズ独占で特別にお届けしよう。
なお、田中靖規先生がゲームについて語ったロングインタビューは、Nintendo Switch™ / PlayStation®4用ゲーム「サマータイムレンダ Another Horizon」の限定版特典「公式攻略本『サマータイムレンダ Another Horizon シークレットブック』」に収録されるので、そちらもぜひチェックしてほしい。
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ifルートこそゲーム化の楽しみ
――はじめに、『サマータイムレンダ Another Horizon』の企画が決定した時の、率直な感想をお聞かせください。
田中靖規先生(以下、田中):とても嬉しかったです。しかも、僕がドハマりした『STEINS;GATE(シュタインズゲート)』や、今プレイしている『ANONYMOUS;CODE(アノニマス・コード)』のMAGES.さんから出して頂けるのは大変光栄です。
――原作で田中先生が命を吹き込み、アニメ版で動きが加わったキャラクターたちが、今度はゲームで活躍しています。改めて彼らを見たときに、どのような印象を受けましたか?
田中:嬉しさと同時に不思議な気分でした。というのも、ゲームって、プレイヤーが直接ボタンを操作してキャラクターを動かすので、とても感情移入しやすいんですよね。だからストーリーを語る、伝えるメディアとしてはこの上ない存在だと思っています。もしかしたら、僕の漫画としての『サマータイムレンダ』よりも、深く『サマータイムレンダ』を体験できるかもしれません。
もちろん嬉しさもありますが、ちょっと悔しいですよね。だから不思議な気分なんです(笑)。ただ、お話を聞いた時に、澪ルートやひづるルートなどもあるんだろうな、エンディングも分岐したりするんだろうなと妄想していました。漫画だとどうしても潮ルートしか描けませんから、ifルートこそゲーム化の楽しみだと思っています。
――ゲームには、アニメの物語に加え、「潮」「澪」「凸村」「朱鷺子」「ひづる」「かおり(ゲームオリジナルキャラクター)」の6つのルートが登場します。ちなみに、田中先生は何ルートが気になりますか?
田中:もちろん僕は潮ルートです。ただ、ゲームでは凸村ルートもかなり気になっています。じつは凸村は、原作でもうちょっと活躍させるはずだったんですよ。ラスト辺りで格好良く。それがどうしてもできなかったのは僕の不徳の致すところなんですが。だからこそ、本当に見せたかった凸村をゲームで回収できたのなら嬉しい限りです。
――ここからは、アニメに関してのお話も伺えればと思います。アニメの物語もさることながら、美しい背景も魅力的でした。ご出身の和歌山の魅力が生かされていたとお思いました。出身地の和歌山を舞台にされたということで思い入れも強いと思いますが、舞台の設定に対するこだわりや注意していることなどあるでしょうか?
田中:特に故郷の和歌山だからこだわったというわけではありません。ただ、実際にロケハンに行った時、監督はもちろん、スタッフさんなど普段東京でしか会わない方たちが、自分の生まれ育った場所にいて、地元を一緒に歩いている状況は、すごく感慨深かったです。俯瞰してみると、なんで今は皆さんがここにいるんだろうと(笑)。
あと実は、実在の土地を舞台にした作品を手掛けることが初めての試みだったので、とても新鮮でした。ただ、僕としてはすごく性に合っていましたね。むしろなんで今までやってこなかったのかというくらい。連載開始前に妻と2人でロケハンした際、風景や土地の空気に触れると、すごくイマジネーションが湧いてきたんです。どこを撮っても背景に使えるので、めちゃくちゃシャッターを押したことを覚えています。今後も、この手法は使って行きたいですね。
――サマータイムレンダは、慎平が時間を何度も繰り返すという設定上SFの要素が強く感じられがちですが、ホラーやミステリーの魅力も盛り込まれていると感じています。田中先生としてはホラー、ミステリーの要素も盛り込むという意識はございましたか?また、それらで影響を受けた作品などございますでしょうか?
田中:もともとそのジャンルが好きですからね。僕の基礎的な部分なので自然とそういう作品になるんだと思います。影響を受けたのは、大学時代に本格的なミステリー小説を沢山読んだときです。京極夏彦先生の、通称「京極堂シリーズ」と呼ばれる作品を読むと、蒙が啓かれますよ。作品で提供されているモノの見方や価値観などが僕のモノになるという感覚ですかね。ほかにも「金田一耕助シリーズ」の横溝正史先生など、様々です。
そうそう、少し話は変わりますが、中学生の頃に読んだ『タイム・リープ あしたはきのう』という高畑京一郎先生の小説があるんですよ。今読んでも絶対に面白いと言える、いわゆるループ物の作品なんですが、最近、新装版が発売されました。そのあとがきで、なんと『サマータイムレンダ』について触れてくださったんです。妻が見つけてくれて、それを知った時は本当に感激でしたね。最近、最も驚いたニュースでした。