「天才なんかじゃないし才能もないし」と歌ってきたし、実際今もそう思ってる。でも「僕らは」とつくことで「ジーニアス」って言える──『草食ドラゴン』OP「ぼくらはジーニアス」斉藤朱夏ロングインタビュー【特集企画Part4】
2022年の振り返りと2023年の幕開けについて、全4回にわたりお届けしている斉藤朱夏さんの超ロングインタビュー。
これまでライブのことを中心に振り返ってきたが、12月3日(土)に開催された朱演2022『くもり空の向こう側』(日本青年館ホール)ではうれしいニュースが飛び込んだ。
新曲「僕らはジーニアス」が2月22日にリリースされること、そして、その新曲が1月よりTOKYO MXほかで放送されているテレビアニメ『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定』のオープニングテーマであること、作品には「水の聖女」役の声優としても参加すること、そして4月から朱演2023 LIVE HOUSE TOURがはじまること。
新しい約束を掲げて、「また逢おうね」とキミと指切りした。
最終回となるPart4のテーマは、アーティスト・斉藤朱夏が2023年のスタートダッシュを飾った「僕らはジーニアス」、そして2023年の展望についてだ。
吹き替えも新しい挑戦のひとつだった
──『くもり空の向こう側』ではライブ中に嬉しい発表も。新曲「ぼくらはジーニアス」はTVアニメ『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定』OPテーマ。その直後に初披露となりましたが、新曲とは思えぬ盛り上がりでした(笑)。
斉藤朱夏さん(以下、斉藤):みんなものすごく盛り上がってくれて。「ヘイ!」って言うタイミングでジャンプしてる人もいるから「もしかして情報流れてた?」ってくらい(笑)。いやぁ、すごかったですね。
この先の未来にも嬉しいことがたくさんあるんだな、って思えるようなことを毎回していきたいなと思っているので。そのワクワクが爆発した瞬間だったなって思いました。
──新曲はいつぐらいに準備されたんですか?
斉藤:確かツアー中……9月にはレコーディングをしていたと思います。
──じゃあ早く発表したくてしょうがなかったのでは?
斉藤:ずっとニヤニヤしていました(笑)。ツアー中もウズウズしちゃって。
──TVアニメ『齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定』に、水の聖女役としても出演されることもアナウンスがありました。
斉藤:アフレコは11月くらいだったかな? いろいろなことをやらせてもらいました。この作品に関しては中国で先に配信されているので、初めて吹き替えに挑戦したんです。「吹き替えってどうやってやるの?」というところから始まりました(笑)。やり方が分からないけど大丈夫かなって。
──やはり全然違うものです?
斉藤:吹き替えの場合は、イヤホンをして現地の方の言葉を聞きながら収録するんです。いろいろなところから音が鳴りすぎて「どれを聞けばいいんだろう?」って最初は混乱していました。
──それも挑戦だったんですね。
斉藤:めちゃくちゃ挑戦でした! しかも私、吹き替えってことを忘れていて。台本を見たときにタイムが書いてあったんですよね。普段は自分でタイムを取るので「すごく優しい現場だな」」って(笑)。で、改めてVを見たらめちゃくちゃ中国語が流れてきて「ああ、そうだった! だからタイムが書いてあるんだ!」って。
役柄的にも大人になったり、子どもになったりするので、その差別化がすごく難しくて。常に一生懸命やってました。
──その役柄と<一秒前よりももっとでっかくなった自分に会いたいじゃん>という歌詞がリンクしていますよね。
斉藤:とにかく作品に寄り添ったものにしたいなって。それに加えて、自分らしい曲にもしたいなとも思っているんです。
最初に物語を読んだときの印象が「面白い!」だったんですよね。特に邪竜さまがめちゃくちゃ面白くて。この面白さ、コミカルさをどうやって楽曲に落とし込もうかなって思っていたんですが、ケイさん自身、いろいろと研究してくださって。すごく細かいところまで作り込んでくれました。
──朱夏さんからこんな曲にしたいというリクエストはしていたんですか?
斉藤:デモをもらったときに「アレンジで中華っぽい要素を入れたいな」ってざっくり思っていて。中国で先に配信されていることもあったので、その部分を大切にしたかったですし、それを見えるような形にもしたいなって。でもそのリクエストをする前に、すでにドラが入っていました(笑)。
──あの始まりいいですよね(笑)。
斉藤:「そうそう、これ私が言いたかったんよ」って話をしました。アレンジをするタイミングでケイさんとアレンジの黒須(克彦)さんと話していたようです。
衣装も中華っぽい要素があって。ガッツリってわけではないんですけど、ちょっとした部分に散りばめられていたら、向こうのファンの方も喜んでくれるかなって思っていました。朱夏チームにもそういう意思があったので、自然とこの楽曲ができあがりました。
──パンキッシュで、今の朱夏さんにもピッタリな曲だなという印象がありました。
斉藤:楽曲が一段と難しくなりました(笑)。すっごく難しい。初披露の瞬間は、ライブの中で一番緊張していました。私がタイトルコールしたらこの楽曲が始まってしまうので、「え、ヤバい」って緊張感がマックスで(笑)。でもキミが盛り上がってくれて、緊張がほぐれた感覚はありました。
──さきほどライブの映像を見返したというお話がありましたけど、その一連の流れを改めて映像で見ていかがでした?
斉藤:発表のときがとにかく盛り上がっていたので、そこを何回も見てしまって(笑)。すごい盛り上がりだなってゲラゲラ笑ってしまいました。それと同時に、良かったなって。ライブを重ねるごとに、みんなとのチームワークが強くなってる。一対一で、キミという存在に対して歌ってはいるんですけど、一人ひとりが肩を組んで、丸い大きな円になってるような感じと言いますか。
今は声が出せないから、その分身体で、クラップで、っていうのも伝わってきて。「とにかく、僕・私の気持ちを知ってくれー!」って声が聞こえそうなくらい。それを届けるためにも、盛り上がってくれたんだろうなって。
「僕らはジーニアス」は自由がテーマ
──「僕らはジーニアス」というタイトルがまた良いですよね。
斉藤:<天才なんかじゃないし>って言ってた自分が、天才と言っていて。でも今でも私ひとりだったら、<天才なんかじゃないし 才能もないし>って思っているんですけど「僕らは」とつくことで「ジーニアス」って言えるんだなって。
──僕ら、はポイントですよね。
斉藤:そうですね。「僕はジーニアス」とは言えないんですよ(笑)。
──ハヤシさん、黒須さんがタッグを組んだ曲に「もう無理、でも走る」がありました。そこから「僕らはジーニアス」っていう。さらにワンステップ、階段をのぼった感じがします。
斉藤:ああ、たしかにそうですね。『SACRA MUSIC FES.』(2022年11月26日(土) 、11月27日(日)開催) で初めて黒須さんにお会いできたんです。「いろいろとお世話になっています」って。だけど「もう無理、でも走る」から「僕らはジーニアス」は確かに1段階上がった感覚がありますし。自分自身が、というのもありますけど、会いに来てくれているキミもどんどん階段を上がっていくから、歌う楽曲もより強くなっていくんだろうなという印象があります。
──<時々見失いそうになるよ>と言ってたのが、今回は<行きたいほうに行こうぜ>と言ってますからね(笑)。
斉藤:(笑)。やりたいようにやろう、なりたいものになろうって言ってます。私の中でひとつテーマがあって。それが“自由”。キミという存在に自由に生きてほしいなって。縛られてほしくないなって。
ライブのときに言ってる「キミが自由に楽しんで私は嬉しい」という言葉には、そういう意味を込めていて。やっぱり日常生活では、いろいろなルールがあったり、縛られる瞬間があると思うんです。でも今というこの一瞬だけでも、キミが自由に生きてくれたら嬉しいなって。私自身もあの瞬間だけはすごく自由に、人間・斉藤朱夏を見せにいっているので。それをキミもしてほしいなと思っています。
この楽曲にはその思いが込められているなって。自由にとにかくやろうよと。
──自由というのは、楽曲のテーマでもあり、朱夏さん自身のテーマでもあるんです?
斉藤:ああ、そうですね。縛られるのが苦手な人間なので、自由に生きたいなと思っているんです。でも固定概念にぎゅっとなってしまう瞬間もあって。そういうのを取り除きたいと言いますか。正解を求める自分がいるけど、それはもうやめたいんです。正解なんてないし、ルールなんてない。自由に自分の人生を走りたいなという気持ちがあります。
──言葉に覚悟を持ってる、とさきほども言ってましたけども朱夏さんの言葉や考え方っていつも哲学的というか。影響を受けます。
斉藤:(笑)。とんでもないです。