『カワイスギクライシス』との出会いは、リザとよぞらの出会いのように、僕にとっても革命的なものでした──超絶ガナリヴォイス”を持つ歌い手・超学生の素顔に迫る
集英社「ジャンプSQ.」及び、漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」にて好評連載中の『カワイスギクライシス』(著者:城戸みつる)のTVアニメが、2023年4月7日(金)よりTOKYO MX他で放送されています。
幕開けを飾るのは、“超絶ガナリヴォイス”を持つ謎の歌い手・超学生さんの「スペースキャットビッグバン」です。
昨年『仮面ライダーBLACK SUN』の主題歌「Did you see the sunrise?」でポニーキャニオンよりメジャーデビューを飾った超学生さん。弱冠21歳にして、キャリアはなんと10年。YouTubeでのカバー曲総再生数3億回以上を誇る注目の歌い手です。
これまでの道のり、初アニメタイアップ曲となる「スペースキャットビッグバン」について、そしてこれからについても教えていただきました。
21歳にしてキャリア10年 その道程
――念願叶って初のアニメタイアップです。『カワイスギクライシス』OPテーマが決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
超学生さん(以下、超学生):僕はアニメが大好きなので「オタクの夢叶ったー!」という感じでしたね。 作品に関わることができるって全オタクの夢だと思うんです。僕ができることは主題歌や挿入歌などの音楽だと思うので、自分の生配信などで「主題歌やりたい」と言っていました。ようやく念願叶ってうれしいですね。
――超学生さんは小学生の頃から活動をされています。アニメイトタイムズには初登場となるので、これまでの活動の軌跡についてもおうかがいできますか?
超学生:小学校5年生くらいから“歌ってみた”の投稿をはじめて、中学校2年生の頃からライブに出るようになりました。そこからは3ヶ月に一度動画を投稿して。歌い手の中では、少なくも多くもない投稿頻度ではあったのですが、高校卒業を機に「YouTubeにもっと投稿したいな」「音作りも勉強したいな」という気持ちが芽生え、週一投稿で活動しています。だから活動歴で言うと10年くらいですね。
――21歳にして10年のキャリアというのはすごいですよね。
超学生:でもメジャーデビュー出来たのは、9年目くらいなので。ずっとこっそり歌っていたのが最近ありがたいことに、表立った活動が増えてきたような感じです。
――もともとどのようなきっかけでインターネットや歌ってみたに触れたのですか? PCの環境が整っていたのでしょうか?
超学生:うちはゲームが禁止なのになぜかパソコンはOKという変わっている家庭だったんですよ(笑)。当時ボーカロイドの黎明期で、テレビCMでも初音ミクが起用されていて。ボカロPで言うと、じん(自然の敵P)さんなどをよく聴いていました。小学6年生のときに『カゲロウプロジェクト』がアニメ化されたんですよね。みんなでわいわいとニコ生で見ていました。
――みんなで、というのはご家族で?
超学生:いや、インターネット上の友だちと(笑)。今でこそ配信ライブが多いですけど、当時はニコ生がみんなでひとつの動画を見るという唯一の形だったので。
――元々はプログラミングの勉強、みたいな用途でPCがあったんですか?
超学生:違うと思います。父はパソコンに詳しくてよく使っていたのですが、母は疎くて。僕はバスケをやっていたのですが、その活動の一環で練習会場を予約するのに使う程度で。僕は父の影響もあって機械を触るのが好きだったので、母のPCを借りたり、勝手に使ったりしながら使い方を覚えていきました。
――音楽には幼少期から触れていたのですか?
超学生:そう言うとかっこいい感じに聞こえちゃいますけど、音楽一家というわけではなくて、リスナーとして音楽が好きな両親でした。家で日常的にヒットチャートがテレビで流れていたり、BGMでかけてたり。何かしらずっと音楽を聴いてはいました。
――お父様は超学生をもうひとり作ろうとしているとか……(笑)。
久々に実家帰ったら父が超学生を生み出そうとしてて怖かった pic.twitter.com/qkUZtVX3WM
— 超学生 / 湯月凜空 (@tyougakusei) April 3, 2023
超学生:よくご存知ですね(笑)。
――ユーモア溢れるお父様なんだろうなと。
超学生:どうなんですかね、変わってはいますよ(笑)。あの写真を見てもらえば分かる通りメカが好きなんですよね。今は趣味で壊れたものを直していて、ジャンク品を求めている状態です。僕が使っている、壊れたイヤホンとか電源がつかなくなったスピーカーとかを要求されます。
ちょっと前まではスマホゲームの『クラッシュ・オブ・クラン』にハマっていて、村を作っていたんですよ。でも作る過程に飽きたのか、今度は修復を楽しんでいます。このまま行くと次は破壊になると思うので、ちょっと怖いですね(笑)。
――(笑)。リアルでものづくりを楽しまれているんですね。超学生さんにもそういう遺伝子があるのでしょうか。
超学生:そうだと良いんですが、僕は機械に詳しいわけではないんですよ。でも機材をいじるのは好きで。今はPCさえあればどんな音でも作れる時代ではありますが、実機にこだわっています。例えば、お絵かきツールなどで「〇〇ペンみたいに描けます」という道具があったとするじゃないですか。僕はその〇〇ペンの実物を買って使いたい、というタイプなんです。音楽ツールの場合は大体元の機材があるので、それを集めています。
――じゃあたくさんコレクションしているのですか?
超学生:はい。家から溢れ出てしまうので、たまに知り合いのボカロPさんに「交換しよ!」と持ちかけたり、プレゼントしたり。
――超学生さんはデジタルネイティブ世代でありながらも、アナログなものづくりにも興味を持っているんですね。
超学生:はい、好きですね。デジタルって0と1のビット単位の世界ですけど、アナログの場合は波なんですよね。音の連結がジグザグしていなくて、波として音が繋がっている。それによって生まれるものが音の自然の姿じゃないですか。どちらかと言うとアナログが好きなのでそういった音作りを目指しているんですけど、良くない側面もあって……。
――というと?
超学生:それ(アナログな機械)を通しておけば、それだけで何か良いことしてるみたいな気分になっちゃうんですよ(苦笑)。
――いつも音源はアナログを通されているのですか?
超学生:毎回一度アナログを通しています。ただなんとなく雰囲気に飲まれてしまって、実際そんなに良くないものなのに満足してしまう可能性があるんですよね。だから今は柔軟にしたいなと。
ずっとやってるうちに「こうしなきゃいけない」という意識が出てきてしまうんですよね。それは良くないなと思っていて。柔軟に音作りしていきたいなと思います。なんの処理もせずに良い楽曲ができたらそれを届けたいと。
――「スペースキャットビッグバン」の音はバランスがとても良い印象があります。
超学生:そうですね。「スペースキャットビッグバン」は家で作っていたらもっと時間がかかっていたと思うのですが、曲を作ってくれたJazzin’parkさんやエンジニアさんがいる環境だったので、普段だと何度も録り直してしまうような部分も委ねることができました。結果できあがった音源を聴いたら最高の仕上がりで。普段の「柔軟にしたい」という意識が活きたのかなと思っています。
――カッコよくエッジィな音ではありますが、歌声には生々しさがあって。それが今のお話にもつながっているのかなと、なんだかひとりで納得してしまいました。
超学生:そうかもしれません。今回レコーディングで私物のマイクを使ったんです。今はモデリングマイクと呼ばれる良いマイクの音を再現できるものだったり、「これで録れば後からどんなマイクの音にでも調整できます」という製品もあったりするんです。でもやっぱり“ホンモノ、そのもの”で録りたいタイプなので、今回はよく真似をされるようなホンモノ側のマイクを持っていって録音しました。
――ちなみにどんなマイクなのですか?
超学生:NEUMANN(ノイマン)という所から出ている「M149 Tube」というものです。Tubeは真空管という意味ですね。それが生々しさに繋がったのかなと。もちろんエンジニアさんの手腕も大きいと思います。
――真空管マイクなんですね! 真空管マイクにこだわるということは、やはり昔のロックもお好きなんですか?
超学生:詳しくないですね。興味があるんですけど、どこから入っていいか分からないなと……。
――それは意外です。では影響を与えられたアーティストというと?
超学生:パニック!アット・ザ・ディスコさんですね。凄く影響を受けていると思います。
――ああ、なるほど。パニック!アット・ザ・ディスコもクラシカルなサウンドを内包していますもんね。
超学生:あとは近いジャンルかと思うのですが、最近はマネスキンを良く聴いています。そういう系統を良く聴いています。でもそのジャンルに詳しいわけではないので、逆に僕にオススメのアーティストなどを教えていただきたいくらいですね。