夏アニメ『英雄教室』新木 伸さん(原作)×森沢晴行さん(原作イラスト)×岸田こあらさん(コミカライズ)座談会|頭の中である人物が語りかけてきたことが作品誕生のキッカケ!? さらに小説にはなかった漫画版ならではの要素も明らかに 【連載第2回】
シリーズ累計発行部数160万部突破の学園バトルファンタジー『英雄教室』(原作:新木 伸、イラスト:森沢晴行/集英社ダッシュエックス文庫刊)がTVアニメ化。2023年7月より放送スタートします。
本作は、世界を破滅の危機から救った“元”勇者ブレイドが“フツー”の青春を求めて奮闘する物語。英雄を養成するエリート学校「ローズウッド学園」に編入したブレイドは、個性豊かなクラスメイトたちと時にコミカルに、時にシリアスに学園生活を繰り広げていきます。
7月の放送に向けて期待が膨らむ本作について、アニメイトタイムズではスタッフやキャストへのインタビューを実施。第2回は、『英雄教室』の生みの親である原作者の新木 伸さん、原作イラストの森沢晴行さん、コミカライズの岸田こあらさんの座談会をお届けします。『英雄教室』の誕生秘話や制作エピソード、アニメへの期待や見どころなど、たっぷり語っていただきました。
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頭の中に誰かが話しかけてきて『英雄教室』が誕生
――まずは、『英雄教室』がどのように誕生したのか、着想のきっかけなどをお聞かせ下さい。
新木 伸さん(以下、新木):話の生まれ方はいろいろあるんです。例えば、編集さんから「学園のラブコメで、魔法があるやつ」といった細かなオファーが来ることもありますし。『英雄教室』の場合は、ダッシュエックス文庫の立ち上げタイミングだったので、「なにか企画をください」という感じでした。その時点で本命の企画は温めていましたけど、そのほかにもいくつか企画を出すのが常なので、何かないかなぁと思って過ごしていたんですね。そんなある日、寝ているときにふと、頭の中に誰かが話しかけてきたんです。
「おっす。俺、勇者」って(笑)。
飛び起きて、彼が喋っていることをすぐに書き留めました。それを一字一句直さずに、企画書と称したものに貼り付けて編集さんに渡したら、本命の企画よりも「これがいいです! これにしましょう!」となって決まったのが『英雄教室』なんです。
――あとから取ってつけたと言われても信じてしまうぐらい、すごいエピソードですね!
新木:僕としても、夜中に急に思いついて書くことはありますけど、これはなかなか珍しい形でした。「おっす。俺、勇者。俺はいま『楽園』にいる。魔王を倒して平和をもたらした俺は、同時に勇者の力もすべて失ってしまった。念願かなって『平民』となれた俺は(中略)だが、俺にカムバックしてほしい国王のやつが、なんと『勇者学校』なんてものを作っちまいやがった」みたいな感じで。
――もう完全に出来上がっていますね。
新木:これを書いているとき、僕は考えているのではなく「彼が喋っていることを書き取っている」状態で。勇者の境遇はこの時点で決まっていました。元勇者が素でやっていることは一般レベルからすると常識外で、どこまで下げれば常識の範囲になるのかわからず困っていると。そういうちょっと特殊な着想ですね。
岸田こあらさん(以下、岸田):ブレイドって生まれるべくして生まれたんですね!
――アーネストをはじめ登場キャラクターはみんな個性が強くて面白いですが、ブレイド以外はどのように考えていったのでしょうか?
新木:ブレイドが喋っている中に、「ベビードラゴンを殴って躾けちゃダメだったんだ」みたいなのがあって、クーは最初からいました。そこから、この作品はラブコメではないけど、男の子向けを考えているから友達になるキャラクターは女の子の方が嬉しいかな、メインになるのは3人ぐらいかなと思って。まずは赤、青、黄色と「色」を決めたんです。
赤のイメージは苛烈とか気が強い、青ならクール、黄色は可愛いとか子供っぽいとか。最初からいたベビードラゴン(クー)は子供っぽいポジション、アーネストは突っかかってくる学園トップの子、格好いいけど怖いお姉さん。でも、その怖いお姉さんは、トラウマが解消されたらポンコツ化するんだろうな……などと考えていきました。
――トラウマの解消についても考えていたのですね。
新木:「ラノベのヒロインのトラウマは燃料だ」と言っていた人がいたんです。抱えている問題を解消することで魅力を発生させるんだ、と。だから、まずは形を作っておいて、壊す。壊すときに最大の熱量が発生するので、「ステレオタイプのイメージをつけたら壊す」という手法を取りました。
岸田:アーネストの場合は、解消されたからこそポンコツ属性がつきますからね。
新木:それをケチって先送りにするのはいかんと思っていたので、トラウマが出てきたその話の中で解消する形にしています。ただ、ソフィの場合は、本人のことではなくブレイドの「元勇者の悲哀」を解消する、言ってしまえば「バブみ」を出した話になりましたが(笑)。
そういう形で最初にメインヒロインを固めて、そのほかにもうちょっと一般に近い友達ポジションが要るなと思って4人組を考えました。こちらは一般の代表だから男2人、女2人でタイプも最大限わけています。
――ちなみに、キャラクターの特徴でいえば、ブレイドの大好物であるカツカレーは新木先生の好きな食べ物なのでしょうか?
新木:いや、僕が好きなのはハンバーグとかですね(笑)。これはブレイドに聞いてみたんですよ。「ブレイド、お前は何が好きなんだ? ハンバーグ?」って。そうしたら「こないだすごいもの食ったんだ! カレーの上にカツが乗っているんだよ! これ考えたやつ天才!」と熱く語っていたんですよ。
森沢晴行さん(以下、森沢):でも、なんかカツカレーっぽいですよね(笑)。
新木:そう言われて、確かにこいつはカツカレーが好きそうだなと。それに、目の前にその人がいたら「あなたは何が好きですか?」って聞けばいいでしょ、と思うんです。僕が考える必要はないよねって。魂が降りていなければ僕自身が考えないといけないけど、降りているのならば本人に任せちゃえばいいので。
岸田:そういうのはありますよね。