『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』関 智一さん・野島健児さんインタビュー「宜野座が狡噛のことを忘れた瞬間なんてなかったんじゃないかな」
人間の心理状態を数値化し管理する近未来社会を舞台に、正義を問われる警察機構を描くオリジナルTVアニメーション作品「PSYCHO-PASS サイコパス」。本シリーズの最新作『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』が全国公開中です。
10周年を迎えたシリーズ最新作となる今回は、劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__』とTVアニメ三期「PSYCHO-PASS サイコパス 3」をつなぐエピソードを展開。これまで〈語られなかった物語〉がつむがれます。
アニメイトタイムズでは狡噛慎也役の関 智一さん、宜野座伸元役の野島健児さんにインタビュー。本作を見た感想のほか、立場が変化した演じるキャラクターへの印象、そしてお二人が思う正義の定義・概念についてお聞きしました。
狡噛も宜野座も信念や信じる道は変わっていない
──最初に本作の脚本を読んだときの感想を教えてください。
狡噛慎也役・関智一さん(以下、関):これまでのシリーズで登場したキャラクターたちが何人も出てきて、しかもみんなそれぞれに見せ場があるのがいいなと思いました。脚本を読んだ段階で「これはすごく面白い作品になりそうだ」と感じましたね。
宜野座伸元役・野島健児さん(以下、野島):映像がない状態でシナリオだけを見たときは、物語がすごく入り組んでいるなと思いました。
自分の役割は把握しつつも、全貌を掴むのに苦労したんです。その分、仕上がりが気になって。アフレコしたあとも「早く完成した作品を見させてくれ!」という気持ちでいっぱいでした。
──実際に完成した映像をご覧になっていかがでしたか?
野島:「あぁ、こうなっているんだ!」と率直に思いました(笑)。物語はもちろんですが、アクションをはじめとする映像もすごく凝っていて、冒頭の数分で一気に作品の世界へ引き込まれたんです。アフレコをして内容を知っているはずなのに、初めて見る作品のように没頭しました。
関:率直に、面白かったです。過去シリーズを彷彿とさせるような演出もあって、胸が熱くなりました。
──狡噛・宜野座ともに登場時から立場が大きく変わりました。お二人はそれぞれのキャラクターにどのような印象をお持ちですか?
野島:立場は変われども、本人たちの信念や自分たちの信じる道は変わっていないと感じています。狡噛もギノさん(宜野座)も(常守)朱ちゃんを守りたい、守っていかなきゃという責任感を持って動いているんですよ。
そういう守るものがある人って、すごく強くなれるし、大人にもなれると思います。彼らは精神的に少し大人になったような印象がありました。
一方でギノさんは、狡噛の前では感情を抑えきれなくなるんです。二人が久々に会う本作のシーンでは、ついつい昔のギノさんが出てきて、狡噛に嚙みついてしまうんですよ。
そんなギノさんの姿が懐かしくもあり、まだこういう感情も見せるんだとも思いました。決して微笑ましいシーンではありませんが、ついクスっと笑ってしまいましたね。
──狡噛だからこそ、そういう感情を見せられる。
野島:彼のことをとても大事に思っているし、心配しているんです。忘れた瞬間なんてなかったんじゃないかな。もしかしたら、愛情の裏返しで噛みついてしまったのかも。ギノさんはそういう愛情の持ち方をする人だと思っています。
関:元々仕事はしっかりやる二人でしたが、狡噛も宜野座も朱ちゃんを通して色々な物事に触れることによって、より自分の置かれていることに向き合えた気がします。朱ちゃんがいたから成長できたところもあると思いますね。
──朱と出会っていなければ、違う未来が待っていたかもしれない。
関:そうですね。狡噛と朱ちゃんって目指している方向性は一緒なんだと思います。ただ、手段が違っていて。
そんな朱ちゃんと出会ったことで、狡噛は自分の考えや行動によってもたらされる何かをどうやって背負っていくのか、突き付けられたような気がしています。そして放浪生活の末に、大人になって帰ってきました。朱ちゃん、ありがとうございます。
野島:彼女がいなかったらギノさんもああいう人生にはならなかった。外務省にもいなかっただろうし、もしかしたら、ずっと眼鏡をかけたままだったかもしれませんね。
常守朱は不思議なバランスの人。追いかけたくなる魅力を持っている
──先ほどのお話で朱の名前が出てきましたが、お二人は朱をどういう人物だと感じていますか?
関:化け物みたいに感じるときもあれば、少女みたいだなと思うこともあって。不思議なバランスの人ですよね。
野島:掴めないからこそ追いかけたくなるような魅力を持っていますよね。彼女の芯にある信じる力や見えている道筋、そのエネルギーはどこから生まれてくるのか。飄々としながらも、すごく強いエネルギーを持っているからこそ、気になる存在です。
──本作のアフレコではどんなディレクションを受けましたか?
関:こういう立場だよ、こういう物語だよという説明は受けましたが、あとは感じてみたまま表現しました。その感覚がよっぽど違わない限りは、声をかけてもらうことは特になかったですね。
野島:監督は、よっぽど外れていない限りは僕たちが感じたままを活かしたいとおっしゃっているので。
関:お任せいただけるというのは逆に言えば重責ですよね。3年の時間を費やして本作を作っていらっしゃったので、それに恥じないようにしないといけないと思いました。
──10年近く続くシリーズ。同じキャラクターを演じ続けるうえで特別意識することは何かありますか? 例えば過去の作品を見直すことは?
関:見直すこともありますが、特別に意識することはないですね。そんなに難しく考えていないというか。そもそも10年も経ったということをあんまり感じてはいなくて。言われてみたらそんなに時が経ったのかというくらいの感覚です。
野島:10年間やってきたという経験がある分、馴染みが深くなっていて、短い間で関わる作品よりもむしろやりやすさを感じることがあります。
──台本を見たり、マイク前に立ったりしたら思い出すみたいな感覚がある?
野島:ですね。本作で約3年ぶりにギノさんを演じるので、ギノさんになれるかなという不安は確かにありました。
きっとみんなの顔を見ればギノさんを取り戻せると思って現場に入るも、コロナ禍ということもあって、あいにく関さんとも(常守朱を演じる)花澤(香菜)さんともお会いすることはできませんでした。
それでもマイク前に立って喋ってみると「あぁ、やっぱりギノさんが自分のなかにいた」って思う瞬間があって。10年の蓄積はちゃんとあるんだなと改めて感じました。