『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』関 智一さん・野島健児さんインタビュー「宜野座が狡噛のことを忘れた瞬間なんてなかったんじゃないかな」
狡噛は最終的に「裁きは受けるべき」
──本作をはじめ、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズは正義とは何かと考えさせられる作品です。お二人は正義ってどういうものだと思いますか?
野島:集団で生きている以上、正義は必要だとは思います。だから存在しているんだろうなって。でも実はとても危ういとも感じていて。というのも、何か行動するときに正義に合わせていると、楽じゃないですか。
これが正義だと思っていれば頭を働かせなくてよくなる。そうすると脳が退化してしまうかもしれないし、いつか大きな罪を背負ってしまいそうです。それに、正義を守ろうとすると一方で不都合が起きる人もいますよね。時代によっても変わりますし、正義は常に移ろうものなんですよ。
──組織や立場によっても正義は変わる気がします。
野島:家庭での正義もあれば、学校での正義、会社での正義も違います。どこに合わせればいいんだよって話ですよね。だから正義については常に疑って、信じすぎないように気を付けたほうがいいのかもしれません。
関:うん。正にそういうことですよね。
──本作の脚本を担当された深見真さんは、狡噛の正義は、一般的な倫理観に俺ルールが加わるとおっしゃっていました。
関:「PSYCHO-PASS サイコパス」って、「狡噛が正義と思って行動したから許される」という話ではいけないと個人的には感じていて。
このシリーズって、法に従って裁かないといけないという物語でもあると思うんです。もちろん、彼なりに償いはしているけれど、物語の整合性を考えれば、だから許されていいという訳ではない気がしていて。
──狡噛自身も「いつかは裁かれるべき」と言葉にしています。
関:ですね。
野島:それこそ正義も移ろうものなので、法律も変わってしまうかもしれない。難しいですね。
関:でも、やっぱりちゃんと裁きは受けるべきなのかなと思っています。
見ている側がちゃんと当事者であることを感じさせてくれるのがシリーズの魅力
──改めて、お二人が思う本作の見どころを教えてください。
関:本作は総力戦みたいなところがあるので、そこが見どころです。あと、狡噛や宜野座など昔の公安局刑事課一係の一部が集って動くシーンでは、シリーズ1期で出動するときにかかっていた曲が使用されているんですよ。
あれは音響監督の岩浪(美和)さんのアイデアだとお聞きしました。スタッフも総力戦です。みんなが力を合わせて、いい仕事をして、すごい作品が出来上がりました。最新にして最高になったんじゃないかと思います。
野島:監督が、本作は劇場で公開されることを意識して作ったとおっしゃられていました。なので、ぜひ劇場に足を運んで見て欲しいです。あとギノさんも活躍します(笑)。
ギノさんは毎シリーズ髪型が色々と変化しますが、本作でも彼のビジュアル面を楽しんでいただけるんじゃないかと思います。
──今後、「PSYCHO-PASS サイコパス」でどんな展開を見てみたいですか?
野島:殺伐としたシーンが多い作品なので、一度でいいから彼らの日常を見てみたいです。休日のギノさんとか、タバコを買いに行く狡噛さんとか。何でもないところにその人らしさが見えたら面白い気がします。
関:やはり狡噛の行く末がどうなるのか知りたいですね。ニコニコ笑って幸せに暮らすエンディングは、彼には似合わない気がします。結末がどういうものになるのか知りたいですね。
──最後に、お二人が思う「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの魅力について語っていただければと思います!
野島:SFでフィクションではありますが、扱っている題材や登場人物の思いは僕らにも訴えかけてくるくらいのリアリティがあります。本作を見て、僕は選挙に行って投票できることって幸せだなと思いました。
見ている側がちゃんと「当事者」であることを感じさせてくれるのが、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの魅力だと思います。
関:環境や時代は違っても、僕らの社会と似たような悩みを抱えながら登場人物たちが心を揺らします。その悩みを少しの勇気と仲間との結束で乗り越えていく姿に、ちょっとした元気をもらえるんですよね。
SFではありますが、そういうところがしっかり描かれているのも本作の魅力です。この作品を日々の生活に役立てばいただけたらと思っています。
映画『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』作品情報
公開日
2023年5月12日(金)全国公開
レーティング R15+
イントロダクション
人間のあらゆる心理状態を数値化し管理する巨大監視ネットワーク〈シビュラシステム〉が人々の治安を維持している近未来。あらゆる心理傾向が全て記録・管理される中、個人の魂の判定基準となったこの計測値を人々は「サイコパス(PSYCHO-PASS)」の俗称で呼び習わした。
犯罪に関する数値〈犯罪係数〉を測定する銃〈ドミネーター〉を持つ刑事たちは、罪を犯す前の〈潜在犯〉を追う。
2012年にスタートしたオリジナルTVアニメーション作品『PSYCHO-PASS サイコパス』。10周年を迎えたシリーズ最新作であり集大成となる本作は、劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__』と第三期TVシリーズ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』をつなぐエピソード。これまで〈語られなかった物語〉がつむがれる。
常守朱と狡噛慎也、慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフをつなぐミッシングリンク。変わりゆく時代の中で、人々が貫く正義とは――。
ストーリー
2118年1月。公安局統括監視官として会議に出席していた常守朱のもとへ、外国船舶で事件が起きたと一報が入った。
同じ会議に出席していた厚生省統計本部長・慎導篤志とともに現場に急行する朱だったが、なぜか捜査権は外務省海外調整局行動課に委ねられていた。
船からは、篤志が会議のゲストとして呼んだミリシア・ストロンスカヤ博士が遺体となって発見される。事件の背後には、行動課がずっと追っていた〈ピースブレイカー〉の存在があった。
博士が確立した研究…通称〈ストロンスカヤ文書〉を狙い、〈ピースブレイカー〉の起こした事件だと知った刑事課一係は、行動課との共同捜査としてチームを編成する。そこには、かつて公安局から逃亡した、狡噛慎也の姿があった――。博士が最後に通信した雑賀譲二の協力を得て、文書を手に入れるべく出島へ向かった一係だったが…。
〈ストロンスカヤ文書〉を巡り、予想を超えた大きな事件に立ち向かっていくこととなる朱と狡噛。その先には、日本政府、そしてシビュラシステムをも揺るがす、ある真実が隠されていた。ミッシングリンクをつなぐ〈語られなかった物語〉が、ついに明らかになる――。
スタッフ
監督:塩谷直義
構成:冲方 丁
脚本:深見 真、冲方 丁
キャラクター原案:天野 明
キャラクターデザイン・総作画監督:恩田尚之
色彩設計:鈴木麻希子
美術監督:草森秀一
3DCGI:GEMBA
撮影監督:荒井栄児
編集:村上義典
ベースド・ストーリー原案:虚淵 玄
音楽:菅野祐悟
音響監督:岩浪美和
アニメーション制作:Production I.G
制作:サイコパス製作委員会
配給:東宝映像事業部
主題歌:「アレキシサイミアスペア」凛として時雨(Sony Music Labels Inc.)
エンディング・テーマ:「当事者」EGOIST(SACRA MUSIC)
キャスト
常守 朱:花澤香菜
狡噛慎也:関 智一
宜野座伸元:野島健児
六合塚弥生:伊藤 静
唐之杜志恩:沢城みゆき
霜月美佳:佐倉綾音
雛河 翔:櫻井孝宏
須郷徹平:東地宏樹
花城フレデリカ:本田貴子
雑賀譲二:山路和弘
ドミネーター:日髙のり子
慎導 灼:梶 裕貴
炯・ミハイル・イグナトフ:中村悠⼀
舞子・マイヤ・ストロンスカヤ:清水理沙
甲斐・ミハイロフ:加瀬康之
慎導篤志:菅生隆之
砺波告善:大塚明夫
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』配信情報
下記配信サービスにて配信中
・Amazon Prime Video
・DMM TV
・dアニメストア