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- わたなべみきこ
- 出産を機にライターになる。『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『アイドリッシュセブン』と好きなジャンルは様々。
様々な罪状で死刑を言い渡された死罪人たちが、無罪放免となるべく、極楽浄土と称される島・神仙郷から「不老不死の仙薬」を持ち帰るため奮闘する賀来ゆうじ先生の漫画『地獄楽』。
主人公・画眉丸や彼の打ち首執行人・山田浅ェ門佐切をはじめとした魅力的なキャラクター達やミステリアスで妖艶な独特の雰囲気が魅力で、現在放送中のアニメを毎週楽しみにしている方も多いことでしょう。アニメをきっかけに原作を楽しんでいる方もいらっしゃるかと思います。
原作は漫画アプリ「少年ジャンププラス」で公開中なので、これを機にぜひ読んでいただきたいのですが、同アプリ内で公開されている賀来先生の読切作品も見逃すともったいない良作ぞろい!
そこで本稿では、それら3本の読み切り作品のあらすじと見どころをご紹介します。それぞれテーマや雰囲気が全く異なる3作品ですが、どれも『地獄楽』に通じるポイントがあり、『地獄楽』ファンにはぜひ読んでほしい作品ばかりです。
今際の際に残る想いは……
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現世に未練のない主人公の青年・三上は、山ほどの“冥途の土産”を持って“あの世”へ渡ろうとする女性・織機と死後の税関で出会います。三上は荷物を持たず手ぶらで税関を通ろうとしますが、その死が間違いであり生き返ることができると判明。
一方、「初めて歯を磨いた時の思い出」などごく些細な思い出まで持ち込もうとする織機は、量を減らすよう税関職員に言われ、あの世行きの便の出発までに現世で未練を果たしてくることに。
成り行きで織機の未練果たしに同行することになった三上は、世間知らずの“箱入り娘”な織機の言動に呆れながらもその天真爛漫さに眩しさも感じます。果たして織機は“冥途の土産”に何を選ぶのでしょうか。
本作の見どころは、50ページにも満たない短い読み切りにもかかわらず、いくつもの伏線が張られ、それらが最後に見事に回収される点です。些細すぎる思い出まで大切にする、驚くほど世間を知らないといった織機の不可解な部分が明かされるラストはとても衝撃的で思わず泣いてしまったという読者もいるほど。
また、「死生観」をテーマにしているところが『地獄楽』との共通点ですが、それぞれ違う角度から描かれているため、その違いもぜひ楽しんでいただきたいです。
この姫、ただの姫に非ずーー
— 『地獄楽』公式 (@jplus_jigokurak) July 2, 2018
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西の夕日の裂け目より魔物の軍勢が現れ、美しいシーナ姫を拐っていきました。魔物を率いるのは二千年の眠りから目覚めた恐ろしい魔王。姫を救うため国王は世界中の戦士たちを集めました。言い伝えにある“伝説の勇者”を求めて…しかし救出は難航。誰もが囚われの姫を案じ、眠れぬ日々が続きました。一方 当のシーナ姫は……自力での脱獄を試みていました。(作品冒頭より引用)
下級魔族としてひどい扱いを受けていた魔物を救ったことで彼らの一族を味方につけ、脱獄を画策するシーナ姫。脱出経路が正面入口と下水道のいずれかしかないとわかると、脱出しやすそうな下水道ではなく、姫としての体裁(イメージ)を崩さない正面入口を選択するほど、姫の体裁を死守しようとします。
シーナ姫がどんなときでも体裁を守り抜くことを第一に行動する理由は、民衆の前ではどんな時も笑顔を絶やさず女王の体裁を守り亡くなった母からの教え。彼女は姫の体裁を守り抜く命懸けの過酷な戦いに身を置いているのでした。
賀来先生の描く女性は『地獄楽』に登場する佐切や杠のように芯のあるキャラクターが印象的ですが、本作のシーナ姫も芯が強く、そして腕っぷしも強いキャラクター。品のある言動と傭兵の魔物をサラッと倒してしまう姿は、姫ながら惚れ惚れするほど格好良いです。
“体裁を守る”と聞くと、あまり良い印象を持たない方も多いかと思いますが(筆者もそうでした)、この物語ではそれを守る大切さやそのための強さが描かれており、その印象がガラリと変わります。さらに、細かい伏線が張られており、それがきちんと回収されるのも読んでいて気持ちが良いところ。“強い女”が好きな私個人としては、3本の読み切りの中で一番好きな作品です。
その男、最強の悪…!
— 『地獄楽』公式 (@jplus_jigokurak) September 17, 2018
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本日の『地獄楽』更新はお休みになり、代わりに過去の読み切り作品『イビルハート』が掲載されています。
— 賀来ゆうじ (@ug_kaku) September 16, 2018
ガサついた描線に挑戦するきっかけにもなった作品で、個人的に思い入れも深いです。是非ご一読ください。https://t.co/XwBMpkNDH1
全銀河支配を目論む悪の組織アポコリプスに属するデスクロウ。彼は宿敵であるヒーロー、A・W(アストロ・ウィング)を殺すために組織が総力を結集して作り上げた戦闘兵でした。しかし、満を持して初めて対峙したヒーローに恋をしてしまったのです。
不様な敗北を喫したデスクロウは、自分の使命そっちのけで彼女に振り向いてもらおうと試行錯誤。見かねた組織の首領は、「きっと上手くいく」と彼に告白することを勧めます。しかし、本当の目論見は、振られ、その恋心が憎しみに変わり、彼が最強のヴィランとして覚醒することでした。
スーツに身を包み花束をたずさえ、A・Wへの告白を試みるデスクロウ。その恋路の結末やいかに……。
戦闘兵として育てられたデスクロウが初めて知った恋に邁進する本作。ヒーローを殺すことしか教えられなかった彼が、不器用ながら愚直に頑張るのは彼女の笑顔を見たいから。『地獄楽』の主人公・画眉丸も妻に会いたい一心で、不気味な化け物にも怯まず神仙郷での仙薬探しに注力しますが、その姿からどこかデスクロウと重なる部分が感じられます。
ひたむきに愛を貫くデスクロウの男前っぷりにご注目いただくと共に、爽やかながら少し切なさも感じさせる気持ちの良い読後感をお楽しみください。
それぞれ違った世界観で、キャラクターたちの個性もバラバラですが、『地獄楽』に通じている部分も持っている賀来先生の読み切り作品たち。短編で読み返しやすく、一度だけでなく、二度、三度と読んでみるときっと新たな発見があるので、『地獄楽』とともにぜひ何度も楽しんでいただきたいと思います。
1990年生まれ、福岡県出身。小学生の頃『シャーマンキング』でオタクになり、以降『鋼の錬金術師』『今日からマ王!』『おおきく振りかぶって』などの作品と共に青春時代を過ごす。結婚・出産を機にライターとなり、現在はアプリゲーム『アイドリッシュセブン』を中心に様々な作品を楽しみつつ、面白い記事とは……?を考える日々。BUMP OF CHICKENとUNISON SQUARE GARDENの熱烈なファン。