この世は全部奇縁でつながっている気がします――『江戸前エルフ』の幕開けを彩る「奇縁ロマンス」で紡いだ、7周年を迎えた今だからこそ贈れたメッセージ|ナナヲアカリさんインタビュー
百鬼夜行をイメージしたMV お気に入りは“ひよこちゃん”
――『江戸前エルフ』の映像を見たときはどういう印象がありました?
ナナヲ:オープニングはもちろんなんですけど、本編も含め、めちゃくちゃチュルチュルで(笑)。絵がすごくきれいで感激しました。ユーモアにも溢れたオープニングですし。
――耳の描写もかわいい。
ナナヲ:そう、めっちゃかわいいし、戦車で「週休 7日!」みたいにやって、「ちゃんとして!」みたいな小糸ちゃんがやってるところとか「わあ、すごい! 好き!」って。オープニングを作ってもらってめちゃくちゃ感動しました。特に『江戸前エルフ』は日常アニメでこんな絵がきれいなアニメあったかな、って思うくらい絵もキレイで。それだけ気合いが入ってることも感じます。
――エンディング「おどる ひかり」(Cody・Lee(李))もお洒落ですよね。
ナナヲ:めっちゃお洒落ですよね! アニメのED映像を初めて見たとき「え、すご!」となりました。実写とアニメの融合という感じがして。自分のMVでも真似したいなって思いました。
――それはぜひ見たい! やはりアニメ映像とのコラボレーションは何度経験してもうれしいものだと思います。
ナナヲ:そうですね。やっぱりMVとは違うので、自分が想像してない形で楽曲に絵がつくという感覚はすごく楽しいし感動します。
――では、十八番茶さんが手掛けられたミュージックビデオを見られたときはどのような感触でしたか?
ナナヲ:本当に大満足です。何回観ても楽しいです。「このままアニメ化できそう」って思いました。
――物語ができそうですよね。赤い糸の演出がとても素敵で、古風な雰囲気なのに現代的っていう。
ナナヲ:MVは作品という位置づけではありますけど、一個の短い映画を見たような気持ちになれるMVは少ないと思うんですよね。超短編なのにそこで得られる感動があって、胸のすっきりする感じとかすごいなって。
――妖怪たちがかわいいんですよねえ!
ナナヲ:そう、キャラデザがかわいいんですよ。
――ナナヲさんからはどういうイメージを伝えていたんですか?
ナナヲ:今回は和風ということ、エルダがエルフということもあって、楽曲を聴いたときに“百鬼夜行”のイメージがあったんです。それで「かわいく百鬼夜行をしてほしい」といった要望を伝えていたんです。おどろおどろしい百鬼夜行じゃなくて、ポップに、かわいく行進している感じを入れてほしいなと思っていました。
そしたら今宵ちゃんと小夜ちゃんっていう案内人がいて……という案と、簡単なストーリーをいただいて。ナナヲがすごくお気に入りになるひよこちゃんというキャラがいるんですけど、最初そのひよこちゃんは隅にいて。「このひよこかわいい!」「この子いっぱい出してほしいです」とお願いしました。
――ナナヲさんたっての希望だったんですね。
ナナヲ:「このひよこをいっぱい出してください」って言ったら思った以上にいっぱい出てきて「ありがとうございますっ!」って(笑)。アーティスト盤のビックシルエットTシャツにも、ひよこちゃんをプリントしてもらいました。
ふと振り返ったときに思い出してもらえる存在でありたい
――カップリングに「忘れないでベイベー」についてもおうかがいさせてください。「奇縁ロマンス」不思議と繋がっているような気がしています。「忘れないでベイベー」のほうが先にリリースされているので偶然だとは思うのですが。
ナナヲ:図らずも。偶然ではあるんです。ただ、制作時期は近かったので、自分の気分が同じだったのかなと。「忘れないでベイベー」はタイアップものではないので、より等身大で、それこそナナヲの生身に近い感情の曲になってるなって思います。
――<いつかの日まで歌よ響け>など、今のナナヲさんならではの力強さが込められた曲になっているなと。
ナナヲ:メジャーデビューしてからいろいろ変わった部分もあったし、コロナ禍を
経ていろいろ考えることもあった上で……でもその中で、「やっぱり歌うことは好きだな」って思っていたんです。どういう形であれ歌っていたいと改めて思ったんですね。
その中で、“ナナヲアカリというコンテンツ”を卒業するかたもいらっしゃると思うんですよ。自分が誰かのファンだった時期があるから気持ちは分かるんです。好きじゃなくなる時期もあるかもしれないし、戻ってくるかもしれないし。
――7年という期間の中で、環境の変化があって、音楽を聴けなくなったり、ライブに行けなくなったりすることもあるかもしれないですし。
ナナヲ:そう。生きていればいろいろなことがあると思うんです。そうした中で自由に楽しんでもらいたいなって思うんですけど、最後の最後に……例えば人生の終盤とか、なんか寂しさを感じているときとかに、ふと振り返ったときに思い出してもらえる存在でありたいと思ったんですよね。
そうしたことを重すぎず歌いたいなって思ったときに......Guianoさんの楽曲が普段から大好きなので「作りたいです」とお願いしたら引き受けてくださって「めっちゃわかります!」と言ってくれたんですね。それで上がったきたのがこの曲で「わかってる!」と。
――確かに<忘れないで>とそのまま言葉にしてしまうと……。
ナナヲ:ちょっと重たい感じに取られてしまう可能性もあるんですけど、すごく爽やかで、だけど真剣さが伝わるような楽曲になったかなと思います。
――爽やかでさらりと聴けるんだけども、その決意や覚悟も伝わってきて。私は<本当はもっと私でいたい 悪口なに言われても 歌いたい それでもきっと好きでいてくれるかな 私のこと>というところがすごく好きなんですよ。
ナナヲ:ありがとうございます。この2行がこの曲の芯になるところなのかなと思っています。特におっしゃっていただいた部分はリバーブで飛ばしていて、ふわっと聴けるなって。
――ライブで盛り上がる1曲だと思っています。<この景色は忘れたくない>という言葉は、ナナヲさんからするとどんな景色なのかなと考えたときに、やはりライブでの景色なのかなと。
ナナヲ:やっぱり歌っているときに目の前に見えている景色がいちばん大きいかなと。いつも「みんないい顔してくれてるな」って思うんです。それがすごいかどうなのかは自分だと分からないのですが、ナナヲとしてはすごくうれしくて。
――ファンの方にとっても<この景色は忘れたくない>と思っているんだろうなと。
ナナヲ:そうであったらいいなと。互いにその思いであれば、その瞬間はめちゃくちゃいいものなんじゃないかなと思っています。
――生身のナナヲさんを感じる曲っていうのが出てきたのも、7周年ならではなのかなと。
ナナヲ:アルバム曲とかでは忍ばせてはいたんですけど、これだけ赤裸々に言ってるのは珍しいかもしれません。
――今作の2曲の制作を通して気づいたことや新しい発見はありましたか?
ナナヲ:この2曲とも今までのナナヲアカリにはなかったサウンド感で。「こういうのも歌えるんだ」という自分の気づきにもなりました。早くてわーっとするのももちろん楽しいんですけど、ミッドテンポのものを丁寧に歌っていく楽しさもすごく感じました。
――特に「忘れないでベイベー」は音の良さも注目してほしいところです。
ナナヲ:360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)さんとのコラボなので、良いヘッドホンで聴けば聴くほど音の世界に没頭できると思います。
パッケージには高耳神社の「御朱印」も
――今回のビジュアルもすごくかわいいですよね。しゃぼん玉が重なっていて。
ナナヲ:奇跡の1枚です。出したときに「合成?」という声が多かったんですけど、合成じゃなくてリアルシャボン玉なんですよ。
――じゃあずっとこの位置にしゃぼん玉がくるのをカメラマンさんが狙っている状態だったんですね。
ナナヲ:しゃぼん玉をサイドから吹いてもらって。で、いろいろなポーズをしながら、待って待って待って 今だ! カシャカシャカシャカ......って連写した中の奇跡の1枚です(笑)。
――しゃぼん玉だと割れてしまうこともあると思うので撮影は大変だったと思います。
ナナヲ:そうなんです。そういう意味でも奇跡の1枚ですね(笑)。
――浮世絵風のジャケットもとても素敵ですよね。このままポスターにしたいくらい。
ナナヲ:ほしいですよね(笑)。浮世絵風のジャケットにしたら絶対合うなと思っていたんです。「浮世絵風にしたいです」とだけ伝えたら、この質感にしていただけて、さらに御朱印をつけてくださったり、歌詞カードもすごくこだわってくださって、本当に最高な仕上がりになりました。自分の理想を超えてきてもらってすごくうれしいです。特に、開いたところにある御朱印がめちゃくちゃ気に入っています。
――期間生産限定盤のザラザラ感や、御朱印がいい味を出していますよね。
ナナヲ:『江戸前エルフ』ファンにはみんな持ってもらいたいです。今はサブスクでなんでも聴けちゃう時代なので、自分でもよほど気に入ったものじゃないと買わなくなってきていて。だからこれぐらい「いい!」と思えるものであれば、手に取る意味ができるのかなと。このサイズ感も好きなんですよね。前作の『恋愛脳/陽傘』と同じサイズで。
――本の隣にも置けるしいいですよね。このサイズというのは、ナナヲさんからのご希望だったんですか?
ナナヲ:前回のときに「揃えます?」って聞かれて「揃えます!」と(笑)。