溢れんばかりの愛情を声に乗せてーー“「美少女戦士セーラームーン」細胞”から滲み出た演技とは? 劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」水樹奈々さん&井上麻里奈さんインタビュー
セーラームーンの最後の戦いが描かれる劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」が、2023年6月9日(金)より全国ロードショー中! シリーズ最終章となる<シャドウ・ギャラクティカ>編を描く本作で、セーラー戦士たちは新たな敵へと立ち向かいます。
≪前編≫の公開を記念し、セーラー火球/火球皇女役の水樹奈々さんと、セーラースターファイター/星野光役の井上麻里奈さんのインタビューをお届け!
おふたりも幼少期から大好きな作品かつ、ファンの愛も根強い作品のため、キャスト発表後の反響にドキドキしていたとのこと。子ども時代から憧れていたセーラー戦士となった喜びとプレッシャー、「美少女戦士セーラームーン」が好きだからこそできた演じ方などについて語っていただきました。
あの頃の憧れのセーラー戦士は?
ーーアニメジャパンでの「セーラー戦士になるのが夢だった」という井上さんの言葉は、「美少女戦士セーラームーン」ファンみんなの心だなと思いました。
セーラースターファイター/星野光役:井上麻里奈さん(以下、井上):ですよね! 「井上麻里奈はセーラームーン愛が強いな」ではなく、これはみんな同じことを思っているはずです(笑)。
ーー(笑)。おふたりとも子どもの頃から「美少女戦士セーラームーン」がお好きとのことですが、当時憧れていたセーラー戦士は誰でしたか?
セーラー火球/火球皇女役:水樹奈々さん(以下、水樹):私はセーラーヴィーナス(愛野美奈子)です。「コードネームはセーラーV(※)」が大好きなんです!
※:美奈子を主人公とした、「美少女戦士セーラームーン」が始まる前の物語
井上:そう、全てはVちゃんから物語が始まっていますから! 「美少女戦士セーラームーン」への登場の仕方がズルすぎます!
水樹:そうなんですよ。うさぎちゃんが目覚める前からVちゃんは活動していたので、より応援したくなります。
普段はミーハーでキャピキャピしていますが、心が男前で、太陽系のリーダーとして仲間のために命を懸けて戦う覚悟が強くて。そのギャップにやられました!
ーー特に今回は、そんな美奈子の一面が描かれていますね。
井上:元々、プリンセスが目覚める前に使命を背負っていましたから。
水樹:そんなところがかっこよくて、大好きな推しです!
ーー井上さんの推し戦士は?
井上:私はまこちゃん(セーラージュピター/木野まこと)推しです。ピンクのバラのピアスに一目惚れしました。パワフルながらも、家庭的で誰よりも乙女なのがかわいくて、まこちゃんが大好きです。あともうひとり、(土萠)ほたる(セーラーサターン)ちゃんも。
水樹:わかる、かわいい!
井上:影があって、不思議な魅力を持つ黒い瞳に惹かれました。
あとは、みんな大好きウラヌスとネプチューン(スーパーセーラーウラヌス/天王はるかとスーパーネプチューン/海王みちる)。みんなが通る道ですから。ずっとふたりでいてほしいんです。「ふたりだけの尊い世界だ」と思いながら見ています。
水樹:そっと見守っていたいよね。
ーー大人になってから「美少女戦士セーラームーン」の見方は変わりましたか?
水樹:より涙腺にくるように……。子どもの頃は素敵な変身や華麗な戦いの方に目がいってしまっていたので、改めて読むと「こんなメッセージが込められていたのか!」と、より胸にグッときて泣いてしまいました。
井上:子どもの頃と全然違うと思います。当時はシリアスな場面をちゃんとは理解できていなくて、セーラー戦士たちの楽しい日常や気持ちよく敵を倒していくシーンが好きで見ていました。大人になってからは、「Moon Revenge」を聞いたら泣いてしまう体になってしまいましたね。
「溢れんばかりの「美少女戦士セーラームーン」への愛をただ込めさせていただきました」
ーー星野光役を演じることが決まった時のお気持ちはいかがでしたか?
井上:実は前にもオーディションを受けていて、その時は悔しい思いをしてきました。まさか、最後となる今回で星野光役をいただけるとは思ってもいなくて。恐れ多くも、溢れんばかりの「美少女戦士セーラームーン」への愛をただ込めさせていただきました。
役をいただけたことは本当に光栄ですが、実感が沸かなかったのも事実です。台本で自分の名前を見た時に、ようやく星野役の実感が生まれました。
ーー受かった連絡をもらった時はどんな感じでしたか?
井上:もう2年前の話になりますが、電話で合格の連絡をもらいました。嬉しいのですが、事実ではないような不思議な感覚で、本当に実感が沸きませんでした。
水樹:私も麻里奈ちゃんと同じで、「Crystal」シリーズのオーディションを受けていました。その時は残念ながら不合格で…。なのでまさか今回、火球皇女役でお声がけいただけるなんて!と驚きましたし、光栄で震えました。「私で大丈夫なんでしょうか?!」って(笑)。
皆さんの愛が強い作品なので、「ファンの方に納得していただけるキャラクターを作れるのか」と喜びと同時にプレッシャーもありました。
ーー発表された際の反響も大きかったですし。
水樹:皆さんの反響が怖くて、最初は見られませんでした(笑)。
井上:怖いですよね!
ーーやはり水樹さん同様、井上さんもプレッシャーを感じられていましたか?
井上:すごく感じていました。収録時にもありましたが、発表された時の反響に驚きました。「星野は初恋です」というコメントを見て、愛されているキャラクターなんだなとプレッシャーに……。皆さんの星野への愛情深さと思い入れの強さに気後れしましたね。
水樹:みなさんからの「すごく楽しみ」「水樹さんぴったりです」「すでに脳内で再生しています」という声が嬉しかったです。すでに収録は終わっていたので、心強い応援の声を胸に収録に挑みたかったなとも思いました(笑)。
井上:でも応援の声を聞いていたら、(プレッシャーが強過ぎて)演じられないかもしれません。そう思うと良かったのかな?(笑)
ーー大きなプレッシャーを感じつつ演じられたのですね。役を演じる上でどのようなことを意識しましたか?
水樹:一ファンとして大きな愛がある故に、キャラクター作りにブレが生じてはいけないので、フラットな気持ちで今回のシナリオと向き合いました。
火球皇女は自分の星をギャラクシアに攻められ、大切な人を失っているという過去があるのですが、そこで悲しみに暮れ立ち止まるのではなく、ひとりでも多くの人を救うため、前に進む強さと深い愛を持ったキャラクター。ただ守られるだけのプリンセスではない、包容力と戦士としての凛とした姿を感じていただけるよう意識しました。
井上:私は完全に分断するより、どの要素を抽出しようか迷いました。原作の星野、アニメの星野、ファンが思い描く星野は同じ人物でありつつ、抱いているイメージが少しずつ違うんです。
もちろん本作は原作準拠ですから、原作の星野が主軸ですがファンの気持ちに寄り添いたくて、アニメの星野も取り入れようと模索しながら演じました。
星野は我々の大切なプリンセスの火球皇女を思いながらも、新たなプリンセス(月野うさぎ)に寄り添います。特に星野はうさぎちゃんに特別な感情を抱くので。
「銀河一身分違いな片想い」という星野の気持ちは、私が三石さんに抱いている気持ちと一緒なんです。三石さんは私たちにとって子どもの頃からのプリンセスですから、当然の感情です。「こんな私の愛を伝えてはいけない」という思いとリンクしているので、そのシーンは変に意識せず、星野に感情移入できましたね(笑)。
ーー先程、本作と脳内の星野が存在しているとお話しされていましたが、どのような違いを感じていますか?
井上:90年代アニメの星野は活発で、うさぎちゃんがときめくくらいの
強引さがあります。今までにないタイプの男の子に、うさぎちゃんもちょっと心惹かれていたり。正統派がまもちゃん(地場衛/タキシード仮面)だとしたら、新たなタイプの男の子なイメージです。
改めて今回原作を読み返したら、星野は意外とクールで使命に忠実だなと。うさぎちゃんの悲しむ姿と戦う様子に心惹かれていく紳士な印象が強いです。
うさぎちゃんと過ごしている時間も違いますが、少しのニュアンスの差で、見え方が違うなと思います。