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- 小川いなり
- 会社員からライター、編集者の道へ。アニメ、漫画、特撮、映画など、手当り次第に鑑賞します。
アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞し、世界中を席巻した『スパイダーマン:スパイダーバース』から5年。続編『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が2023年6月16日(金)に全国公開を迎えました!
主人公・マイルズ・モラレスとグウェン・ステイシーが、多次元世界を巡る旅の中で、スパイダーマンの運命と対峙する壮大な戦いへと足を踏み入れます。
映画シリーズ史上類を見ない”スパイダーマン同士”の戦いは本作の大きな見どころです。またミゲル・オハラなど、主役級の魅力を持ったキャラクターたちの活躍も見逃せません。
蜘蛛糸のように様々な要素が張り巡らされた本作。本稿ではその魅力を紹介するとともに、作品が持つ”面白さ”を深掘りしていきます!
以前から高い評価を受けていた映像表現が、本作でさらなる進化を遂げました。
SF映画を意識した未来世界や伝統と文明が混ざり合う大都市など、そこだけで2時間観たいほどの独創的なルックが次々に登場します。色彩やライティングが妥協なく作り込まれており、あらゆるシーンに多次元世界の息吹を感じられました。
特に印象的だったのは、スパイダーマンならではの逆さ吊りが上下反転で描かれる場面。降り注ぐように建つニューヨークのビル群は、言葉にならないほど幻想的です。
躍動感溢れるアクションシーンにも注目です。スピード感と見やすさの両立において、本作がシリーズ最高峰と言えるかもしれません。特にムンバッタン(アース50101)での戦いやヌエバ・ニューヨーク(アース928)のチェイスシーンは、まさに劇場で体感すべき仕上がりだと感じました。
1年と4か月が経過し、思春期真っ只中を迎えたマイルズとグウェン。卒業後の進路や両親との衝突、周囲に秘密を抱える負い目など、ふたりの葛藤はどこまでも等身大です。壮大な世界観を持つ作品でありながら、物語全体で彼らの心情が丁寧に描かれるため、展開を見失うことはありませんでした。
彼らを中心として、新キャラクターを含めた個性的なスパイダーたちが脇を固めています。
渋い魅力を発揮するミゲル・オハラ/スパイダーマン2099(CV:関智一)やバイクアクションが格好良いジェシカ・ドリュー/スパイダーウーマン(CV:田村睦心)、スーツがイケてるパヴィトル・プラパカール/スパイダーマン・インディア(CV:佐藤せつじ)など、名実ともに主役級のヒーローが多数登場。
筆者のお気に入りを挙げるなら、スパイダーパンクことホービー・ブラウン(CV:木村昴)でしょうか。組織に縛られず、自己を貫くパンク精神を持った最高にクールな青年です。
本作は「身近な人を失う」というスパイダーマンの”運命”を覆すという斬新なテーマに挑戦しています。ヒーローになるための通過儀礼とも言える展開ですが……彼らは必ず起こる悲劇から自分自身を救えないのでしょうか。それを我々に問いかけるのが、マイルズ・モラレスなのです。
対してミゲル・オハラ率いるスパイダー・ソサエティは、多次元世界の秩序を維持するために時の流れを乱すなと警告します。さらに、スパイダーマン誕生の裏で静かに芽を出していたヴィラン・スポットの存在もマイルズを悩ませます。一見小物に思える彼が、やがて宇宙全体を揺るがす巨悪に成長していく流れは必見です。
筆者は本作を通じて「スパイダーマンとはどんなヒーローなのか」を改めて考えてしまいました。マイルズとグウェンの気持ちに共感しつつ、ミゲルやスポットらを悪と断じることもできません。そんな中でマイルズが主役を担う理由……それは彼が身近な人を見捨てない”親愛なる隣人”というスパイダーマンの原点を貫いているからではないでしょうか。
片方を諦めるのではなく「どちらも救いたい」という彼の主張は、これ以上ないほど『スパイダーマン』シリーズの主人公らしく映りました。ともあれ2部作という構成上、物語はまだ道半ば。本作で提示したテーマに次回作でどのような解を出すのか、心から楽しみにしています。
スパイダーマン好きには堪らない他作品の小ネタやオマージュも随所に仕込まれています。それらは単なるファンサービスに留まらず、それぞれの作品を壮大な「スパイダーバース」という枠組みの中でつなげる役割を果たしているのです。
ミゲルが異なる世界の”魔術師”に言及するシーンや、映画『ヴェノム』で見たことのある”店員”、LEGO®の世界や”不眠症の”(Insomniac)スパイダーマンなど、すぐに分かるものだけで枚挙に暇がありません。
実写映画シリーズが好きな方ならグッとくる場面もあります。2、3回と観るのはもちろん、画面の背景にまで目を凝らしてみてください。
おそらく本作を観終わった方の多くが「早く続きを!」と思ったのではないでしょうか。マイルズとグウェンの運命は? 後編で新たなスパイダーマンは登場するのか? 張り巡らされたネタと伏線に思いを馳せつつ、2024年公開予定の『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』を楽しみに待ちましょう!
会社員からライター、編集者の道へ。アニメ、漫画、特撮、映画など、手当り次第に鑑賞します。”面白い”や”美しい”を沢山の人に届けるため、今日も全力全開!
大ヒット公開中!
“救うのは、愛する人か、世界か――。”
かつてのスパイダーマンたちが受け入れてきた哀しき定め。
今初めて、その<運命>に抗うひとりのスパイダーマンが現れる。
スパイダーマン VS 全てのスパイダーマン
史上かつてない戦いが始まる!
ピーター・パーカー亡きあと、スパイダーマンを継承した高校生マイルス。共に戦ったグウェンと再会した彼は、様々なバースから選び抜かれたスパイダーマンたちが集う、マルチバースの中心へと辿り着く。
そこでマイルスが目にした未来。それは、愛する人と世界を同時には救えないという、かつてのスパイダーマンたちが受け入れてきた<哀しき定め>だった。
それでも両方を守り抜くと固く誓ったマイルスだが、その大きな決断が、やがてマルチバース全体を揺るがす最大の危機を引き起こす…。
原題:『SPIDER-MAN: ACROSS THE SPIDER-VERSE』
監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン
脚本:フィル・ロード&クリストファー・ミラー、デヴィッド・キャラハム
日本語吹替版音響監督:岩浪美和
日本語吹替版主題歌:LiSA 「REALiZE」
シャメイク・ムーア
ヘイリー・スタインフェルド
ジェイク・ジョンソン
イッサ・レイ
ジェイソン・シュワルツマン
ブライアン・タイリー・ヘンリー
ルナ・ローレン・ベレス
ヨーマ・タコンヌ
オスカー・アイザック
マイルス・モラレス/スパイダーマン:小野賢章
グウェン・ステイシー/スパイダー・グウェン:悠木碧
ピーター・B・パーカー/スパイダーマン:宮野真守
ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099:関智一
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