夏アニメ『自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』ヒロイン・ラッミス役:本渡楓さんインタビュー|定型文しか話さないけど、愛おしく感じるんです――前代未聞な本作ならではの工夫・魅力とは?
定型文しか話せないハッコンとラッミスの距離感
——そんなハッコンと共に冒険するのが怪力なハンターの少女・ラッミスです。
本渡:最初はすごく素直で、感情を表に出す子だなと。ハッコンとの出会いのシーンでは、警戒心も人並みに持っていますが、それ以上に優しいキャラクターであることが分かります。
自動販売機ってラッミスたちの世界にはないものじゃないですか。それにも関わらず、仲間になれるのは優しくて真っ直ぐな子だからですし、食べ物を提供してくれたハッコンに対する恩義を果たそうとしているんです。本当に良い子だなと思ったので、オーディションでは素直な演技を心がけました。
——演じていく上で、ラッミスに対する印象の変化はありましたか?
本渡:ラッミスは天真爛漫なキャラクターなんですが、もちろん悩みも持っています。でもハッコンと出会って色々な経験をすることによって成長し、乗り越えていくんです。その後のラッミスの姿はより頼もしく感じましたし、キラキラしています。本当にハッコンと出会って良かったですね。
——なるほど。先程も少しお話がありましたが、ハッコンとの掛け合いとしてはいかがでしょうか?
本渡:ラッミスとしては定型文しか聞こえないんですけど、第1話などを福山さんと2人で収録させてもらったので、ハッコンのモノローグを聞きながらお芝居することができたんです。そのモノローグがハッコンの本心だと思うので、凄く優しいキャラクターだなと思いました。
——おふたりで収録されたんですね。
本渡:そうなんです。序盤の話数は福山さんのモノローグが多くて、「まだまだある……終わらない……」と仰っているのを後ろで応援していました! そのモノローグがあるからこそ、ハッコンの意思や魅力が視聴者の皆さんに伝わると思います。無機物なんだけど温かく感じられました。
——ラッミスだけでなく、本渡さん本人もハッコンを受け入れることができたんですね。
本渡:すぐに、ハッコンがそこにいることを実感できました。でも、ラッミスは定型文しか聞こえていないので、序盤の距離感は演じる上で大変でした。あまり寄り添いすぎないようにしつつ、制限された言葉でコミュニケーションを取って関係を築いていく感じです。これも自動販売機ならではだと思いますね。
——キャラクターとしてはモノローグが聞こえていないので、最初から寄り添いすぎるとバランスが崩れてしまうと。
本渡:はい、でも横から聞こえてくるので、程よく聞かないようにしながらも、意思は汲み取っていくという作業です。
——ハッコンとの掛け合いにも工夫があったのですね。ラッミスを演じる上で意識した点はありますか?
本渡:やはり方言の使い方ですね。ラッミスのテンションが上がった際に関西弁風の方言になるんですけど、私自身は愛知の出身で関西弁に馴染みがなくて、いざやってみると難しさを実感しました。程よくエセなんですけど、ある程度は違和感のないような話し方をしないといけないので、テンション上がった時の嬉しい勢いで話すと不自然になったりして。
——ちなみに、これまで関西弁のキャラクターを演じる機会はあったのでしょうか?
本渡:九州や広島あたりはよくあるんですけど、関西弁はないかもしれません。今回ラッミスを通して気が付きましたが、関西弁が一番難しいかもしれないです……! 関西弁って単語を抑揚なしで言う事や、標準語のイントネーションとは違う単語があったりしませんか? 標準語を使うことが多いので、独特なイントネーションが難しくて、現場の方にお訊きしながらやっていました。
——それこそ福山さんは関西のご出身ですよね。
本渡:福山さんもすごく力になってくれたのですが、最終的には「まあ、異世界だし! 頑張れ!」って言われて(笑)。
——放任主義だったんですね(笑)。こういう方言を持つキャラクターを演じる楽しさはありますか?
本渡:キャラクターの性格やイメージが伝わりやすい気がします。関西弁だと前のめりな感じがすると言いますか。ラッミスであれば勢い余って関西弁が出るので、そのテンションが上がった様子と一緒に関西弁が出ると、より感情がリアルになりますよね。
つい出ちゃったんだなって伝わると言いますか。言葉だけじゃない感情の強さや空気感を強調してくれるのかなと思います。方言の種類によって、逆に優しい雰囲気になることもありますし。声優になってなかったら触れることがなかった方言ばかりなので、難しいけど勉強になることが多いです。