TVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』オープニングテーマアーティスト・Ayaseさん✕R-指定さん|「『飛天』は登場人物たちと自分たちのリンクを書いた楽曲」
2023年7月6日よりフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送開始となる、TVアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』。
本作のオープニングテーマを務めるのは、ボカロPやYOASOBIのコンポーザーとしての活動に加えさまざまなアーティストへの楽曲提供も行っているAyaseさんと、日本最高峰のMCバトル「ULTIMATE MC BATTLE」大阪大会にて5連覇、Creepy Nutsとして活動するラッパーのR-指定さん。
日本のトップクリエイターがコラボしたOPテーマ「飛天」は、Ayaseさんが作曲を、AyaseさんとR-指定さんが共同で作詞を担当。『るろうに剣心』の怒涛の展開を予感させる疾走感あふれたサウンドと、キャラクターに寄り添ったリリックが印象的です。
2人はどのように作品を捉え、楽曲に落とし込んでいったのでしょうか。アニメイトタイムズでは、Ayaseさん、R-指定さんの対談インタビューを実施。コラボ楽曲制作の経緯や『るろうに剣心』にまつわるエピソードなどの話をお伺いしました。
二度目のコラボ「音楽で通じ合えた」
――「飛天」のお話を伺う前に、まずはお互いの印象や魅力についてお聞きしたいです。
Ayase:以前から「フリースタイルダンジョン」を見ていたり、様々なところでご活躍する姿を見ていたので、超スキルフルでラッパーとしてめちゃめちゃすごい人というイメージがありました。
それは今も変わらないのですが、プラスして一度ラジオ(オールナイトニッポン)で共演した時にすごく真面目な人という印象を抱いて。その時、「ばかまじめ(※)」という曲を一緒につくったのですが、曲名通りに真面目な人だなと。
R-指定:まだYOASOBIのビジュアルすら分からない状態で曲がガンッと流行った時、楽曲だけ聴いた印象は「喋らない」「掴みどころがない」「とんでもなく才気溢れるタイプ」なのかなと思っていたんですよ(笑)。
Ayase:はははは(笑)。
R-指定:でも、ラジオでお会いした時、すごく気のいいシャイな兄ちゃんでした(笑)。ただ、一緒に「ばかまじめ」をつくった時、楽曲のテーマや対象物、一緒につくる自分ら(Creepy Nuts)をほんまによく見ていて。とにかく観察の視点がすごい。
俺と(DJ)松永と、Ayaseさん、幾田りらさんをテーマに書いてくださったリリックもあって、こういう言い表し方をするんやと勉強になったんですよ。
今回の「飛天」も、Ayaseさんは『るろ剣』をそう見たんだと感心させられる。毎回ワクワクさせてくれます。今回は、俺もそれに応えたいと力が入りました。
(※)Creepy NutsとAyaseと幾田りらがコラボした楽曲。2022年オールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えてる』主題歌。
――ラジオで共演した際、「お互いに人見知りで、あまり会話ができなかった」というエピソードを拝見しました。今回はいかがでしたか?
Ayase:今回はお互いに忙しいこともあって、電話口で打ち合わせをしたんですよ。なので、前回よりコミュニケーションが成長したかという意味では、そこまで成長はできていません(笑)。電話での打ち合わせなのにめっちゃ緊張しましたし(笑)。
R-指定:あははは! お互いに何足も草鞋を履いている状態だから、なかなか予定が合わなくて。楽曲をつくるコミュニケーションがメインでしたね。
Ayase:でも、一緒につくっていく上で楽曲との向き合い方を話していると「自分はこういう曲にしたい」と本音が出てくるので、ちゃんと音楽で通じ合えた感覚はあります。
とはいえ、一回飲みに行かなきゃいけないなとはずっと思っています(笑)。
R-指定:たしかに、まだ行けてない! 「ばかまじめ」の時は(コロナ禍という)時期が時期だったので、打ち上げも行けんかったし。
Ayase:そうなんですよ。なので、今度ぜひ行きましょう(笑)。
音と映像が重なる瞬間もアニメのおもしろさ
――それでは、今回コラボするに至った経緯を教えてください。
Ayase:最初に『るろうに剣心(以下、るろ剣)』サイドからお声がけいただきました。その時、僕とスタッフの間で「誰かパワーのある人を巻き込んでおもしろいことができるのではないか」と話していたんです。
また、頭の中で『るろ剣』の曲をなんとなくイメージしていたら、「ラップが入ってきたらカッコいいよな……」と思って。「ばかまじめ」のレコーディングの時、Rさんにいつか自分がボーカルをやるミュージシャンとしても一緒にやりたいと軽く話していたので、それならRさんに相談しようとお声がけして、ご快諾いただきました。
R-指定:そういえば「ばかまじめ」の時に、そんな話をしましたね! 「いろんな楽曲をつくっていきたいし、いろんなラッパーともやってみたい。ぜひRさんとも」とAyaseさんに言っていただいて、ワクワクするなと思っていたんですよ。
だから今回、お声がけいただいて「あの時のあれが、ついに来ましたか……!」と(笑)。しかも『るろ剣』の主題歌という二重の喜びがありました。お互いのデータのやり取りをしている中で、Ayaseさんの生み出す音や言葉がどんなものになるのか楽しみやった。
――「飛天」の制作工程についてはいかがでしょう。詞先行なのか、曲先行なのかどちらですか?
Ayase:僕はどの曲をつくる時も、基本的には曲先行で、歌詞は最後に考えます。今回は、まず『るろ剣』の原作を読み込んで、(緋村)剣心の抱えているものと自分の中でリンクするものの中から使いたい音をチョイスしてメロディを完成させていって。
その中で、「ここはRさんに詞を書いてほしい」と思う部分をお伝えして、歌詞を考えていただきました。
R-指定:Ayaseさんのパートができている状態のデータをいただいたので、そこにまずスキャットという宇宙語……何語でもない言葉をダラダラ乗せていって、それを確定させてから歌詞を入れていきました。
俺の中では、『るろ剣』のキャラクターたちが戦っている様子をラップのフロウに重ねたかったんですね。音と映像が重なる瞬間もアニメのおもしろさだと思い、ラップはそういう部分を意識しながらいろいろイメージしていって。めっちゃ早くなるバースがあるのですが、そこは「縮地」や「牙突」のグンっとくるイメージをラップにしました。
また、『るろ剣』に登場するキャラクターたちは時代の変わり目に右往左往してもがいているのだけど、今を生きている人ともめちゃくちゃ重なるんですよ。大きく時代が変わる瞬間、今までの生き方や信念が丸っきり通用しなくなる。これまで良しとされてきたものが、一気に良くないものに変わる。
『るろ剣』の世界とは比にならないとは思いますけど、そういうところは今に通ずる部分があるなと。そんな感じたことが、俺の書いた歌詞になんとなく表現されていると思います。