81ACTOR'S STUDIO講師・中尾隆聖さんと、教え子である原紗友里さん、米内佑希さんが養成所時代を振り返る 「私の最初の仕事はみんなの意識を変えていくこと。養成所に来た時点で、もう“憧れ”の世界ではないんです」【短期連載 第1回】
ものまね芝居は悪いことではない 最初は真似も大事
――いろんな人がいるからこそ、お互いに良い影響があるものですよね。
中尾:ひとつ屋根の下というかね。あと、居場所を作ってあげるという役割も大事なことだと思っています。「ここに来ていいんだ」「居ていいんだ」って思ってもらえないと。居心地が悪いなって思っちゃうと、できる・できないの次元までいかないですから。
まず、その人の居場所を作ってあげるのが私の仕事です。学ぶのはそこからですよ。そういう意味では、ふたりとも食いついてきましたよ。「あまり質問されてもわかんから来るなよ!」って言っても来る。
米内:はい(笑)。
原:私も米内くんと一緒で、声優さんのことを知らずに入所してしまったので、「声優を志す人の振る舞い」を理解していなかったなと思います。だからこそ食いついてしまったのかもしれません(苦笑)。
中尾:それで良いんですよ。
原:養成所に入ると、いろんな方がいます。それこそ、ファンとしての歴も長くて知識もあって、声優になりたい気持ちも強い子と知り合うと、劣等感を抱くこともあったんです。私って何も知らないんだなって焦りを感じることもありました。「だからダメなんじゃないか」とか。
米内:めちゃくちゃわかりますよ。
中尾:良いんですよ。好きでこの世界に入った人もいていいし、そうじゃなくても良い。
原:今になるとそう思います。知ってる方も大事だし、でも、知らなくても全然大丈夫だなと。
米内:むしろ、自分の感覚がより際立ちやすいようにも思います。好きなものの“っぽさ”を目指してしまうところがあったりしますし。ものまね芝居をし過ぎちゃうところがあるのかなとも思います。
中尾:でもね、今の子たちはものまね芝居はやらないよ。最初は真似することが大事だと思うんだけどね。
米内:僕も真似することは推奨してますけど、今はやらないんですか?
中尾:今の子たちは真似しちゃいけないって思っちゃってるんだよね。例えば、Wキャストのお仕事があったとして、片方の役者と全く違うことをしないといけないって思っている。
そういう時は敢えて、そうじゃないよ、って言ってる。「良いところは盗まないと、真似したとしてもその人になれないんだから」と。別の人がやっているんだから、同じにはならない。
でも、真似をするんだったらしっかり自分の中に良いものを残さないといけない。上っ面だけは駄目だよね。
米内:“っぽさ”を真似るんじゃなくて、本質的な部分を参考にするというか。
中尾:そうだね。
原:その役に必ず必要な要素・感情ってありますもんね。そこを避けた結果、変になっちゃうと元も子もないですよね。真似をしても、真似しきれない部分があって、それが個性なんですよね。始めたばかりだとそれがわからない。
新人の頃って芝居が小さいので、出てくる個性も小さいんです。差が自分でわからないから、同じことしてるんじゃないか……って不安になるんじゃないかな。気持ちはすごく分かる。
中尾:うんうん。気持ちはわかるんだけどね。盗んだものを自分のものにするのが大事だね。どっちが正しい、とかはないんですけどね。ただ私の中では「それは悪いことではないよ」と思っています。真似のように見えてもちゃんと掘り下げて、自分のモノにしていけば、真似にはなりませんから。
原:とにかく大きくお芝居をすることを念頭に置いておけば、なにかしら違いが出ますよね。
米内:散々言われますからね。「とにかく大きく」って。
原:「小さくキレイにやっても伝わらない」というのは、今思うと、本当にそうだなって思います。
中尾:それが私がいつも言ってる「うまくやろうとするな」という言葉に繋がるんです。