『無職転生』アニメ第2期OPテーマ「spiral」LONGMANインタビュー|アニメの世界観のおかげで踏み込めた新境地
TVアニメ『無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~』のOPテーマ「spiral」を歌うのは、愛媛発の男女ツインボーカルパンクバンド、LONGMAN。8月30日にシングル「spiral」、そして、10月4日には約3年半ぶりとなる2ndアルバム『10/4』をリリースするLONGMANのひらい(Gt/Vo)、さわ(Ba/Vo)、ほりほり(Dr)の3人に、「spiral」のこととアルバムについて、話を聞いた。
負の感情を受け入れながら進んでいく感じになれば
――メジャーデビューをしてアニメタイアップを歌いたい、と話している記事を読んだのですが、実際に「Wish on」で、TVアニメ『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』のEDテーマを担当していたり、実写ドラマの『ゆるキャン△』の主題歌も印象的でした。アニメなどは好きだったのですか?
さわ:私がもともとアニメ好きで、メジャーデビューをしてアニメの曲をやってみたいという憧れから、勝手に言っていただけなんです。
ひらい:僕はアニメに関わるようになってから興味を持つようになって、今は結構ハマっています。『呪術廻戦』や『約束のネバーランド』『進撃の巨人』など、人気のある王道のアクション系作品はよく見ていますね。
ほりほり:人気のあるバンドは、何かしらのアニメ主題歌を歌っている気がするんです。UVERworldが好きなんですけど、アニソンはやっぱり歌っているから、登竜門的なイメージもあって。僕もアニメが好きなので、そこは絶対に通りたいなと思っていました。だから今回の『無職転生Ⅱ』の話が決まったときも、誇らしい気持ちになりました。
――やはり周りの反応も違いますか?
さわ:普段バンドの曲とかを聴かない人からも連絡が来たり、『BORUTO-ボルト-』の頃は、まだ愛媛でバイトをしていたんですけど、店長が『BORUTO-ボルト-』好きで、そのことを話したら、すっごく驚いてくれたりして(笑)。
――近くにすごいアーティストがいたっていう感じですね(笑)。『無職転生Ⅱ』の話が来たときは、率直にどう思いましたか?
さわ:めちゃめちゃ嬉しくてテンションが上がったんですけど、落ち着きを取り戻したあとに、『無職転生』と言えば大原ゆい子さんのイメージがすごく強くあったので、これ、どうする?ってなりました。
ほりほり:人気はもちろん知っていたので嬉しかったんですけど、お題が大きい分、いい曲を作るというところで、どうするんやろなって思っていました。
ひらい:「ひらいさん、どうするんやろう?」って?(笑)。
ほりほり:ひらいさん頑張ってねと。(笑)
ひらい:第三者目線すぎるて(笑)。でも、この2人の反応を見て、すごいことが決まったんだと実感したんです。そこからアニメも見させていただいたら、めちゃめちゃ面白かったし、壮大な物語の中で僕らの音楽が流れると思うとドキドキもしました。
でも確かに、大原ゆい子さんの曲があまりにも良すぎて、作品に溶け込んでいたんですよね。とにかく素晴らしすぎて、それは『無職転生』ファンの方も思っているだろうから、相当良いものを作らないと、と思い、覚悟を持って曲を作りました。
――それは確かにそうですね。
ひらい:第1期で8曲あったんですよ。どういうスケジュールで作っていたんだろうっていう(笑)。僕らこの1曲にめちゃくちゃ時間がかかったので、本当にびっくりなんですけど、全部素晴らしい曲なんですよね。
でもこの間、大原ゆい子さんから「オープニング何度も聴いています!」っていうリプがあって、めっちゃ嬉しかったです。第1期の曲に恥じない曲を作ることを目標にしていたので。
さわ:そのスクショが送られてきました。「見てー」って(笑)。
ひらい:原作の理不尽な孫の手さんからもフォローしていただいて、認められた感じがして嬉しかったです。
――楽曲制作に関しては、アニメサイドからのリクエストはあったのでしょうか?
ひらい:じっくり打ち合わせをした上で制作に挑めたので、作品に寄り添った楽曲を作るということに関しては、すごくやりやすかったです。
最初2曲提出しようと考えていたんですけど、結局6曲作り、そこか3曲をブラッシュアップして、そこから2曲に絞り、提出するという形を取りました。それで、選んでいただいたのが「spiral」です。
ちょうどツアー中で、スケジュールもタイトな中作っていたけど、ワクワク感が強くて、しんどさはあまりなく、楽しかったんです。ボツになった5曲も、また別の形で出せたらいいなと思っているくらい、いい曲ができていた期間でした。
――歌詞も、オーダーがあったのですか?
ひらい:そうですね。噛み砕いて言うと、再出発をしていくルーデウスに寄せて書いてほしいということだったので、第1期の最後の落ちに落ちたところから、完全に立ち直れてはいないけど、前を向こうとしている様子を書けたらいいなと思いました。それと、現世での引きこもりニートさんの気持ちって、誰にでもある感情だよなと思ったので、そちらにも寄り添いながら、負の感情を受け入れながら進んでいく感じになったらと思いました。
――お二人は曲を受け取ったときはどうでしたか?
さわ:私は「めっちゃ天才!」って言いました。
ほりほり:僕、LONGMANの中で好きな曲ランキングがあるんですけど、その1位は、僕が加入するときにすでにあった曲なんです。そこからずっと1位が更新されていなくて。
ひらい:なんか複雑やわ……(笑)。
ほりほり:その1位が、更新されましたね!
ひらい:ドラムの1位を更新するのに10年かかりました(笑)。ホンマに一番高い壁……。
さわ:いっぱい良い曲はあるんだけどなぁ。
ひらい:すでに超えていたはずなんだけどね……。
ほりほり:いろいろ込みでその曲が好きだったので、初期衝動を超えてきました。
――LONGMANはパンクロックのイメージもありますが、曲調という点では、特に苦労もなく?
ひらい:テンポの遅い曲もやっているので、そこまで苦手意識もなく、作りやすかったです。でも今回は、アレンジャーのNaoki Itaiさんが、ものすごく力を貸してくださって、僕自身も勉強になりました。自分の作ったデモ音源がこういう感じになるんだって。Itaiさんご自身も第1期の『無職転生』を見ていて、雰囲気も作品と近づいたので、大感謝です。
――イントロの雰囲気も、すごくいいですよね。
ひらい:バンドサウンド以外のところは基本的にItaiさんが作ってくれているんです。イントロに関してもそうですね。ちなみにイントロのギターフレーズは、Sum 41の「Heart Attack」のイントロのフレーズのオマージュです。
――そういうルーツを感じさせるのもバンドっぽくて良いですよね! 歌詞は作品を意識しつつ、自分たちに重なるところを探ったのですか?
ひらい:バンドを10年やってきて、ここ3年はコロナ禍で、あからさまにお客さんが減ったし、大変な状況を経験してきて、もっとこうすれば良かったのかなとか後悔もあるので、寄り添いやすかったといえば、やすかったです。ただ、作品の世界観というのもあるので、それを崩さない言葉使いというのは意識していて、出だしの〈描いた地図は〉とかは、普段のLONGMANだったら使わないフレーズなので、アニメの世界観のおかげで、新しいところに踏み入れられたと思っています。