『無職転生』アニメ第2期OPテーマ「spiral」LONGMANインタビュー|アニメの世界観のおかげで踏み込めた新境地
僕の持っている声の一番いいところを探していきました
――最後の最後に一歩踏み出すというドラマがあって、それも非常に良かったです。
ひらい:絶望の中でも希望を持って進みたいという思いはあるので。第1期の最後にルーデウスが歩き出すシーンがあるんですけど、あの景色をイメージして、そこで流れていてもいいくらいの気持ちで作っていました。
さわ:私も、そのラスサビのところはめちゃめちゃ好きで。人間誰しもが持っているネガティブな部分というのがちゃんとあって、最後前を向いたとしても、完全に上を向いているわけではなく、それでもまだ下を支えている暗い部分があるんですよね。それが両立しているところが好きなんです。
――それがリアルですよね。それとラスサビになるまで、お二人の掛け合いがあったり、音楽的にも徐々に上がっていく感じが良いなと思いました。
ひらい:ラスサビも、ちょっとメロディを変えて上がる感じにもしているのでいいですよね!
さわ:歌割りも初めてのパターンで、1番がひらいさんで、2番が私になっていて、掛け合いがあってラスサビになるんです。
――男性ボーカルというのは、ルーデウスの思いが込められているからというのもあって?
ひらい:そうですね。メインボーカルは男性でいきたいという話があって。逆に大原さんでずっとやってきていて、第2期でいきなり男性ボーカルにするということに、僕は気概を感じたというか。新しい風を吹かせようとしているんだなという気持ちが伝わってきました。
ほりほり:ひらいさんはよく日本語の歌詞をメロディに乗せるのが苦手だと言っているんですけど、この曲を聴いて、全然苦手じゃないじゃん!って思いました。すごく自然だったし、アニメの雰囲気にも合っていたし、詩的でファンタジーの雰囲気もあるところが良かったです。
――ボーカルのテイストも、これまでにない感じですよね?
ひらい:そうかもしれないです。いつも東京でレコーディングをしているんですけど、今回は地元の愛媛で、自分たちだけでボーカル録りをしたんです。すごく時間をかけて録れたので、僕の持っている声の一番いいところを探しながらできたし、今までにない歌い方ができたのではないかなって思っています。
――静かなところから、最後に力強くなっていく緩急も良かったです。
ひらい:入りは『無職転生Ⅱ』の世界観もあって静かに入るんですけど、最後の盛り上がりに関しては、自我ですね(笑)。
――さわさんのボーカルは、いつもとは違いましたか?
ひらい:さわちゃんは、サビは低いし、Aメロは裏声だから、珍しかったんじゃない?
さわ:確かに。いつもだと転調をして、私の歌いやすいところにキーを合わせるんですけど、この曲は何もせずに、そのまま歌っているんです。そこで新しい自分を発見できた感じはします。
――ひらいさんのキーをベースに歌っているということですか?
ひらい:そうですね。僕に合わせて歌ってくれています。
――では、「spiral」のパートごとの聴きどころを教えてください。
ひらい:歌は僕の低い声と、さわちゃんの高い声の高低差は楽しんでもらいたいです。ギターは結構シンプルで、イントロなども簡単なのでコピーしてみてほしいです。
さわ:ベースは、歌いながら弾くのが結構難しかったです。最初はベースラインも穏やかな感じなんですけど、後半になるとフレーズも動いて、流れが楽しい感じになるんです。楽器ひとつひとつを意識して聴いてこなかった人も、ちょっと意識して、いろんなパートを聴いてもらいたいなって思える楽曲です。
ほりほり:ドラムは、一歩ずつ踏み出すイメージで叩いています。散歩とかハイキングとか、そんなイメージというか(笑)。あと、フレーズ的なところだと2番Bメロが面白くて、ビートの中にタム回しがあったりするので、そこは聴きどころかもしれません。あとは、バラードなんだけど、シュッとしないよう、振り上げて叩き込むような、パンクとかロックな感じで叩いています。
ひらい:2番Bメロは、メロディにも変化があるし、ドラムが全部フィルみたいなことをしているので、そこは確かに面白いと思います。
――楽曲的に2番からの変化が多いから、フルで聴く面白さはありますよね。
ひらい:わりと遊び心を持って作っているので、フルも聴いてほしいです。
――シングルには、TVバージョンのほかに、 English Short Ver.も収録されています。
ひらい:世界的にも見られているアニメなので、実際にアニメで流すわけではないですが、英語でも届けてみようかなと思って作りました。
さわ:英詞に合わせてメロディも少し変わったりしているので、そういうところも聴いてほしいです。
ひらい:あと、中国語で歌った動画もアップしています!
――そしてカップリングの「Don't kill my vibe」ですが、半分以上が英詞のパンクロックになっています。
ひらい:とは言え、バンドサウンド以外の音を使っていたりするんです。前衛的だけど大衆系の橋渡しになるような曲を作りたいと思って、今アルバムを作っているんですけど、そのアルバムを象徴するような1曲になっているかと思います。
――アルバムの先行楽曲ということなんですね。
ひらい:アルバムには入らないんですけど、これまでのLONGMANファンの方はもちろん、そうじゃない方もバンドサウンドを好きになってもらいたいなっていう思いも入っていますね。
――それにしても、この曲の歌詞は何を歌っているんですか? ちょっとユニークですよね(笑)。
ひらい:これはカフェで照れている男子と、それに呆れている女子というカップルの歌ですね……(笑)。
さわ:照れている男子が、おしゃれなカフェでそわそわしているんですけど、女の子はそのままのあなたが素敵なんだから、しっかりしてよ!みたいな感じなんです。
――男性がカフェに入るなり、すごくあたふたしている感じが漫才みたいで面白かったです(笑)。
ひらい:カッコつけんでいいよっていう、ある種のラブソングですね。これは、アルバムのコンセプトにもつながるんですけど、そういう風景を切り取った曲になります。
さわ:次のアルバムは、1曲1曲にストーリー性があるので、これまでにない感じになっていると思います。
――英詞の部分でカッコいいことを歌っているのかと思っていました。
ひらい:そうっすよね(笑)。
ほりほり:これを聴いて、LONGMANってこんなバンドなんだ!っていうのがわかると思います。この曲って“パンク!”って感じの曲でもなく、良い中間地点の曲なんです。パンクを聴かない層も聴きやすい感じというか。
さわ:やっぱり『無職転生Ⅱ』のファンの方からしたら、大原さんの印象もあるし、女性ボーカルの曲が好きな方も多いイメージがあるんです。そういった方にも受け入れられるのかな、とは思いました。
――この曲はメインボーカルはさわさんですからね。10月4日にリリースされるアルバムは、どんなものになっているのですか?
ひらい:このアルバムもボーカルは愛媛でじっくり録っていて、楽器は東京でレコーディングをしているんですけど、えげつないアルバムができたので、ブレイクしそうです(笑)。パンクロックをメインストリームにしたくて、それをテーマにしているんですけど。ライブでみんなも体を動かす感じになってくれたらいいなって思っています。
これまでのパンクロックの先輩たちが築き上げてくれたものを踏襲するだけでなくて、新しいものを加えたり、それこそ前衛的かつ大衆的なものを作れたと思うので、パンクが世の中に溢れたらいいなって思うし、そういうアルバムにはなっていると思います。
――今の時代の要素も取り入れているということですか?
ひらい:マシン・ガン・ケリーという、ヒップホップから、今はパンクをやっているアーティストがいるんです。パンク界で今一番売れていると思うんです。その曲を聴いて、まだまだ新しいことができると実感をしたことが、僕の中でも転換点になっていて。今回もダンスミュージックの音とかも取り入れたりしているので、新しいアルバムになっていると思います!
[文/塚越淳一]
「spiral」CD情報
2023/08/30 発売
1,650円(税込)