映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』スプリンター役・堀内賢雄さんインタビュー|タートルズの父親的な存在のスプリンターを演じて「同じ親として気持ちがよくわかる」
かわいいカメの4兄弟のキャラクターでおなじみの人気アメコミ作品『ミュータント・タートルズ』がCGアニメになって再びスクリーンに! 2023年のニューヨークを舞台に、人間たちと同じように普通に暮らし、愛されたい思春期のタートルズ4人が謎の犯罪組織に立ち向かう映画『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』が現在好評公開中!
日本語吹替版で主人公のタートルズ4兄弟を演じるのは、レオナルド役を宮世琉弥さん、ラファエロ役を土屋神葉さん、ミケランジェロ役を戸谷菊之介さん、ドナテロ役を榊原優希さん。また4人の父親的な存在のスプリンター役を堀内賢雄さんが担当されるほか、梶裕貴さん、中村悠一さん、朴璐美さん、竹内順子さん、沢城みゆきさんなど豪華声優陣が勢ぞろい!
映画の公開を祝して、スプリンターを演じている堀内賢雄さんにインタビュー。1991年に初めて日本でアニメが放送された時の吹替でタートルズの1人であるレオナルドを演じたこと、そしてオリジナルをジャッキー・チェンさんが演じていること、本作の見どころなどたっぷりと語っていただきました。
※本稿にはネタバレが含まれています。
進化のスピードを感じつつ、演じるのがタートルズじゃなくて良かった!?
ーー『ミュータント・タートルズ』初のアニメが1991年に日本で放送された時、レオナルド役として吹替を担当されたのが『ミュータント・タートルズ』との初めての出会いですか?
スプリンター役 堀内賢雄さん(以下、堀内):そうです。レオナルドはタートルズの中でリーダー的な役割で。初めて見た時は「何だ!?これは!」と驚きながらも、どんどん作品に引き込まれましたね。当時の収録現場には、諸先輩方がたくさんいらっしゃって、和気あいあいとした収録でした。収録が終わると毎回飲み会があったことが印象に強く残っています(笑)。
ーー作中で描かれるポップカルチャーはその時々の流行に沿っているんですね。
堀内:セリフの一つ一つがタイムリーでギャグ的なのも凄くセンスが良いですよね。今回のタートルズたちは会話がかぶりまくっていて、且つラップを歌うシーンがあったりと大変だなと思います。
当時の「ミュータントタートルズ」はそこまで難しくなかったので、改めて今回はスプリンター役で良かったと思いました。
ーー演じるスプリンターの印象と自身との共通点、魅力を感じる点などお聞かせください。
堀内:今作ではタートルズの誕生から描かれる、いわば原点です。スプリンターは父親としてタートルズたちを育てていくわけですが、人間に憎しみを抱いているので人間の怖さをタートルズたちに伝えたりと、前半では厳格な父親として接しています。
タートルズたちがスプリンターに隠れて人間の少女・エイプリルと一緒に行動していることを知った時は「俺を裏切るのか!」と怒っていましたが、そのうち彼らの行動や想いに理解を示すようになって。
そんなスプリンターの想いや感情の変化をうまく表現できたらいいなと思いながら演じていました。
ーー10代の思春期の男の子だけで自由にさせていたら、道をはずれてしまう可能性もあって。スプリンターが4人を大切にしているからこその厳しさだと共感できました。
堀内:僕にも子供がいるし、現代の父親の姿が反映されているから「そういう気持ちになるんだろうな」と理解できました。子供たちが「違う世界を見てみたい」「いろいろなものを知りたい」という好奇心が湧き出してくるのもわかるから、「人間ってひどい」という印象を言葉で植え付けようとする親の気持ちも痛いほどわかります。
それでも子供への気持ちをずっと押さえつけることはできないし、親としてもどうにもできない葛藤があるんだよなと感じながら演じていました。
ーータートルズたちの兄弟愛や、タートルズとエイプリル、他のミュータントとの友情が描かれていますが、家族愛の部分を担っているのがスプリンターですね。
堀内:幼いミュータントたちと出会って、寂しかったスプリンターに初めて家族ができた。
「この子たちを守らなければ」と愛情を一身に注ぐ姿にはグッとくるものがあるだろうなと思いました。
スプリンターを演じるのは恩師の石丸博也さんが吹替したジャッキー・チェン
ーー収録はお一人だったんですか?
堀内:そうなんです。ただ皆さんが先に収録していたので、その声を聞きながら収録させて頂きました。まだコロナの影響が残っているなかで、掛け合いがある人同士は一緒に収録していたので、とてもチームワークがとれていましたね。特に問題なく収録できました。
ーーディレクションも特になく?
堀内:いっぱいありましたね(笑)。スプリンターの原音はジャッキー・チェンさんが担当されていたので、本来ならジャッキーさんの吹替は石丸博也さんが担当されるのですが引退されたので、今回オファーをいただいたんですけど、僕はモノマネがうまくないので、似せることはできないけど、「少しでも意識してもらえれば」というディレクションをもらいました。
でもあの軽やかさを出すのは難しいし、その中で説得力も持たせないといけないし。収録の最初の頃はもう少しコミカルだったけど、少し抑え気味にしてハートフルなセリフを使うような演出で着地しました。
ーーコミカルにしすぎてしまうとジャッキーさんのモノマネになって、そのイメージが強く焼き付いてしまうけど、堀内さんのお芝居はスプリンターらしくて良かったと思います。
堀内:やっぱりすべて真似をしようとすると嘘っぽくなってしまうし、スプリンターの子供たちへの愛情も映画では重要なところでもあるので、こういう形になりました。
ーー堀内さんが演じていると事前に知らなければ、誰が演じているのかわからない人も多いと思います。ただ劇中で、堀内さんらしいイケメン声でセリフを言った瞬間があって。
堀内:あれはアドリブです。「ここはいい声使ってもいいかな」と思って。でも何も言われず、そのまま通り過ぎていきました(笑)。
ーーオリジナルではジャッキーさんが演じていた役を演じることについて感慨のようなものはあったのでしょうか?
堀内:ジャッキーさんの吹替を長く担当されてきた石丸さんは僕の大好きな役者さんです。面倒見もすごくいいし、僕が若い頃からかわいがっていただきました。石丸さんが引退なさったのはとても残念ですが、今はお疲れ様ですという気持ちです。筋としてまず石丸さんの事務所に連絡してから、僕のところへ連絡をいただいたそうですが、逆に「僕にしていただいてありがとうございます」という気持ちでした。この映画が公開した時に、石丸さんへ「1本やらせていただきました」と連絡するつもりです。
ーー堀内さんにとっては、ジャッキーさんの吹替というよりも、石丸さんが担当されていた役をやることが大きいんですね。
堀内:日本ではジャッキー・チェン=石丸博也さんというイメージが浸透しているし、公私ともにお世話になっていたこともあったので。