『映画プリキュアオールスターズF』 インタビュー 監督・田中裕太さん、総作画監督・キャラクターデザイン・板岡 錦さん対談で明かされた制作秘話【ネタバレあり】
プリキュア 20周年記念映画『映画プリキュアオールスターズF』が大ヒット上映中です。歴代の全プリキュアが集結する“オールスターズ”は、2018年公開の『映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』以来、5年振りとなります。
監督は『Go!プリンセスプリキュア』の他、プリキュアシリーズを手掛けられてきた田中裕太さん。そして、総作画監督/キャラクターデザインは、プリキュアシリーズの変身シーンや原画を数多く手掛けられてきた板岡 錦さんが担当されています。
映画完成直後の9月上旬。おふたりが『映画プリキュアオールスターズF』 を手掛けることになった経緯や、物語誕生の軌跡についておうかがいしました。ネタバレが含まれているため、鑑賞後に読んでいただければと思います。
ふたりがタッグを組むまでの経緯
──オールスターズ作品としては2018年10月公開の15周年記念作品『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』以来5年ぶりとなります。田中監督がオールスターズ映画を手掛けるのは初ですよね。
田中裕太さん(以下、田中):そもそも最初はオールスターズという話ではなかったんです。「次の映画の監督どうですか?」とお声がけいただいたのが最初でした。
正直な話をしてしまうと、その段階では「(監督として)これまで映画は2回もやってるし、どうしようかな」という感じでした。
──田中監督はプリキュア映画で言うと『映画魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!』(2016)、『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(2019)もご担当されていますね(『映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』では副監督他を務めている)。だからこその葛藤があったということでしょうか。
田中:はい。新鮮味がないんじゃないかなと。別の人がやったほうがもっと新しい映画になるんじゃない?という気持ちがありました。もうそんなに新しいものは出てこないよと(笑)。
ただ、声を掛けてくれた方が熱心に誘ってくれたんです。「じゃあ、今の自分が作るとしたらどういう映画ができるんだろう?」と。その時に今回のお話のベースになる部分を思いつきました。「それぐらいならできるかも」と……それぐらいって言ってもかなり大変ですけども(笑)。
──その段階ではどんな構想があったのでしょうか。
田中:もともとオールスターズではなく、20年の歴史のうちの後半10年をさらおうかなと思っていました。春映画(春に公開されていたプリキュアの映画)でよくやっていた三世代映画の範囲を広げるようなイメージで。
オールスターズまではいかないけど、いつもよりちょっとだけスペシャルで、なんとか20周年らしい内容にできるかな、と。まあ、結果的にはオールスターズになってしまったわけですけども。
板岡 錦さん(以下、板岡):オールスターズになるか・ならないかって話は水面下で動いていたことなので、自分は全然知らなくて。自分が知ったときには、もうオールスターズってところまで決まっていたんですよ。
「次の映画の監督、田中裕太らしいよ。オールスターズらしいよ」という情報が回ってきて「(作画監督を)やりたい!」と手を上げた流れです。
──田中監督と聞いて手を挙げた、その理由をぜひうかがいたいです。
板岡:付き合いが古いですしね。監督がどういう仕事をするかは知っているし、(田中監督ということは)面白いものが作れるのは確定してるというか……面白くなるのが確定している中で、自分がそのポジションにいないのは悔しいなと。だからその場にいたいなと思いました。
選ばれるかどうかは別として「とりあえず手を上げておこう」という感じだったので「選んでもらえてありがとうございます」という感じですね。
──田中監督は熱心なラブコールを板岡さんから受けて、どのようなお気持ちだったのでしょう。
田中:直接聞いたわけじゃなかったんですが、制作の人から「板岡さんがそう言ってるんですけど」と聞きました。その前に「作画監督をどうしようか」という話があって。こういう映画なので、できる人ってそもそも限られているんです。
何人か他に候補の方がいる中で、「それだけ言ってくれるんだったら、今回は腰を据えて作画監督としてお願いしてみようかな」と、わりと素直にたどり着きました。
板岡:本当? 紆余曲折はなかったの?(笑)
田中:特になかったですね。ここまでやる気がある人って珍しいと思うんです。企画段階でとんでもない物量なのが最初から見えているので、「興味はあるけど……ねえ」と思う方が多くて。「じゃあやります!」という方はなかなかいないんですよね。
そういう意味で貴重な人材かなと。多分、オールスターズ映画を自分がやるのはこれが最後になると思いますし、今やこの企画自体がそもそも何度もやれるものでもないですから。
そう考えた時に「最初で最後かもしれないから、板岡さんとちゃんとガツッとやってみようか」という気持ちがありました。
──その田中監督の言葉に相反して、公開されたら(インタビュー段階では映画公開前)「(監督の次のオールスターズ映画が)また見たい」という声が上がると思います。
田中:いやぁ、難しいんじゃないかな。ある程度予想はしていましたが、実際にやってみて、やはりオールスターズは本当に大変でした。仮に次があったとして、その場合またプリキュアの人数が増えてるわけで…カロリー的にもう一度はやれる気がしないです。
板岡:今、できたてほやほやの状態ですからね(笑)。そう思うのも無理はない。
田中:大変でしたね。