『映画プリキュアオールスターズF』 インタビュー 監督・田中裕太さん、総作画監督・キャラクターデザイン・板岡 錦さん対談で明かされた制作秘話【ネタバレあり】
ツバサが「プリンセス!」と叫ぶ場面は「後から付け足した」
──今回のチームの采配はどう決められたんですか?
田中:結構その質問はされるんですよ。
板岡:いろんなところで必ず聞かれる話ですね。
──何度も同じ話をさせてしまい恐縮なのですが、それだけ気になるところなのかなと。
田中:最初はロードムービーというテーマの提示があったんです。(プリキュアが)旅をする、という話があったんですけども、いかんせんキャラクター数が多いので、シリーズ毎のチーム単位で動いたらにっちもさっちもいかなくなるなと。それでキャラクターは最初に絞らせてもらいました。
各シリーズの中から1人ないし2人をピックアップして、即席のプリキュアチームを作って旅をしたら良いんじゃないか、ということを思いつきまして。
シナリオの初期の段階にその話が出て「今までにやったことのない形式だし、その面白さもあるよね」と。じゃあどういうチームにしようかって考えはじめていって。
主人公チーム(キュアスカイチーム)は比較的すんなり決まったんです。直近の三世代の主人公を集めて。じゃあ残りのチームはどうしたかと言うと……最初の段階では、もっと分かりやすい属性や立ち位置で決めていました。
それを最初にシナリオに落とし込んだら、うまく話が転がらない部分が増えてきたので調整していきました。だから主人公チームと大人チーム(キュアバタフライチーム)以外は、分かりやすく◯◯チームということが言いにくくなっています。
キャラクターごとの関係性を踏まえたときに「この子とこの子なら、こういう会話ができそうだな」とか……そういうことを考えながら入れ替えていって、最終的にまとまったのが今のチームです。
──キュアウィング/夕凪ツバサ役の村瀬 歩さんの推しが『Go!プリンセスプリキュア』のキュアフローラということはご存知でしたか? キュアフローラは同じキュアウィングチームで、かつ村瀬さんは『Go!プリンセスプリキュア』に王子役として出演していました。インタビューの時に「田中監督が考えてくださっていたんですかね?」という話になったのですが……。
田中:その情報は後から知ったんですよ。シナリオの段階では全然知らなかったです。『Go!プリンセスプリキュア』ではあくまで単発のゲストキャラでしたから、そんなに覚えてもらえているとは思っていなかったんです。だから全部見直してくれたと知ったときはすごく驚いたんです。
──改めて全話見直されたそうですね。
田中:村瀬さんが『Go!プリンセスプリキュア』のお話をいろいろな場所でしてくださっているのは本当にありがたいですね。やっぱり8年も前の作品なので。今、そうやって話題に出してもらえるのは本当に嬉しい限りです。
その話を知ったので、後にツバサとはるかの出会いの場面にセリフを足しました。(ツバサがはるかに)「プリンセス!」と声をかけるところですね。
──あの場面はとても印象的でした。王子も思い出しつつ、ツバサくんらしさもありつつ。インタビューのときも盛り上がっていました。
田中:あのセリフはシナリオにはありませんでした。あのあたりのコンテを描いている時に、たまたまネットニュースでそういう話を見て。「ああ、そうなんだ!」と。当時のネタの再現じゃないですけども、村瀬さんにもう一度はるかを「プリンセス!」って呼んでもらいたいなと思って、これは個人的な遊び心ですね。
スタッフ陣も「オールスターズ」で
──キャストインタビューではこれだけキャラクター数がいる中で、統一感があるのがすごいという話にもなりました。
板岡:同じ人が描くと、その人のフィルターを通るから統一感は出るんですよ。原画マンにしても、作画監督にしても。なんて言うんだろうな。等身なり描き方なりがその人の表現に寄せられるから、統一感が出ます。
全体がバラバラにならないように描くっていうのも一応作監としての仕事かなと。まあ、普通に描いたら自然になじむんですけどね。どうしても自分のくせが画面に出ちゃいますから。
それは自分がやっても、青山(充)さんがやっても、他の作画監督がやってもそうだと思いますよ。自分なんかは特に癖が強いと言われるので「癖出てますよ」とよく言われていましたからね。(田中さんを見ながら)監督修正によく書いてありましたよ。
──田中監督は、今回の板岡さんの作画をご覧になられてどのような印象がありましたか?
板岡:えっ、聞くの怖い(笑)。
田中:板岡さんの絵なので、別にいつも通りっちゃいつも通りで。
板岡:まあね(笑)。
田中:ただ、作画監督として見るのは初めてで、映画として、この大舞台でどう見せていこうか、というところはありました。なので直すべきところは直したし、これはこれでいいかなっていうところは流しました。
そういう意味では、シーンごとカットごとで全然顔が違いますから。今回、パート作監とかで、歴代シリーズの各キャラクターデザインの人もちょっとだけ参加してくれているんです。その人の絵があると、たまに「あ、本物の絵だ」と思われるかもしれません。
それはそれで、そういう楽しみ方もできると思います。その味も含めて「プリキュアの映画ってそうだよね」というか。
──エンディングのクレジットを見るのが楽しかったです。
田中:結構多くの人たちに参加してもらっているんです。テロップを見るとかなり豪華です。いろいろな顔が混じっていますね、今回の映画は。
──スタッフ陣もある意味オールスターズですね。
田中:そうですね。名前だけ見てると「よう集めたな」と(笑)。
──後半『ふたりはプリキュア』のキュアブラック、キュアホワイトも出てきます。あの部分の作画に関しては……。
板岡:ああ、あれ(『ふたりはプリキュア』8話の回想部分)はね。担当してくれた原画マンがすごくうまいんですよ。
田中:それと、(『ふたりはプリキュア』42話の)回想シーンに関しては川村(敏江)さんがパート作監に入ってくれています。
──決戦シーンのふたりもですか?
田中:最後の決戦で1カット、ブラックとホワイトが活躍するシーンは作監を稲上(晃)さんがポイント作監でやっていただいたので。もうあれは“っぽさ”というより、本物ですね(笑)。
──プリキュアたちが飛び出してくる場面も『プリキュア』ならではだなと。
板岡:様式美みたいなね(笑)。
田中:あれは作画じゃ相当つらいのでCGにしてはいますけど。
板岡:「78人描け!」って言われたら「やだ」って言いますよ。「あんな画を作画でやれ」と言われたら「できるかー!」って。
田中:78人を一画面に入れるのは手描きだとちょっともう無理ですね。CGでもかなりきついと思います。