『とあるおっさんのVRMMO活動記』ミリー役&EDアーティスト・岡咲美保さんインタビュー|ED曲「キボウノレシピ」は“気楽さ”や“一緒に歌うこと”を大切にした楽曲
「キボウノレシピ」はポジティブで前向きかつ、歌を通して繋がれる参加型の曲。歌唱する岡咲さん自身もハッとさせられた歌詞とは?
――今回はミリーを演じるほか、ED曲の「キボウノレシピ」も歌われています。楽曲を制作される際に意識した点と、アニメの制作サイドからオーダーがあった場合はそちらも教えてください。
岡咲:ED曲を担当させていただくことになって、改めてコミックを読んで、私が心を動かされたところをピックアップするところから始めました。アースの考え方や行動力の源には「自分の好きを信じて疑わない」ということが常にあって。『ワンモア』が始まった時、プレイヤーがほとんど強さだけを考えて武器やスキルを選んでいる中で、(あまり強くないと言われていた)弓を選んで、弓でできる可能性を追求して。きっと弓を選んだのも好きだからだと思うし、好きだから努力もできるし、周りに流されないところにピュアさを感じて、うらやましくなりました。
私も、自分の好きを信じて頑張ってきて、声優になる夢を叶えましたが、途中で不安になったり、立ち止まったり、周りの目が気になったこともたくさんありました。そんなことを経て、この作品と出会えたことに運命的なものを感じたので、ポジティブで前向きな曲にしたいなと思いました。ただ前向きさを歌うのではなく、いろいろな人と一緒に気楽に歌えて、歌を通して繋がれる参加型の曲にしようと。なので歌詞も「⾃分らしくマイペースに 楽しい楽しい気分で お気楽にいきましょう」とあるし、「今この時こそ楽しめばハッピーになれるから」といった考え方の指針やヒントを歌っています。
サウンドもリズミカルで、イントロの「パッパラパッパラ♪」にワクワク感があったり、サビの「Let's get it!!」や「君と君と君と」もアニメのEDを見て、ふと頭に残って口ずさんだり、ライブで皆さんと盛り上がれる曲になったかなと思います。
――タイトルの「レシピ」や、サビの「⽇常をスパイスして」、「最⾼をミックスして」といった言葉が入っているのは、アースが料理を得意としていることからですか?
岡咲:そうですね。歌詞をオーダーする時に「作品に登場するキーワードを大切にしたいです」とお願いした中で、「料理」っぽい要素も入れていただきました。
また、この曲のコンセプトの1つである「皆さんと一緒に」というのも、オンラインゲームを1人で楽しむのもいいけど、ゲーム内のプレイヤーの元に人が集まってきたり、人と関わることでもっとおもしろいことが起きるかもという意味を入れています。
――作品の持つ明るさやかわいさを、このED曲が担っている気がします。
岡咲:OP曲は、本編につなげる勢いをもたらすものだとすれば、ED曲は本編の余韻や、次の放送までの1週間への期待感や寂しさなど感情的なものを受け取ることが多い印象があって。「この作品のED曲だったら楽しく、リズミカルに彩りたいな」というイメージがありました。
――岡咲さんはアーティストデビュー以降、明るく・楽しく・かわいい曲を多く歌っている印象だったので、この曲も岡咲さんらしさが詰まっているなと思いました。
岡咲:ありがとうございます。毎回、楽曲を作ったり、コンペから選ぶ時に意識しているのは、「私の声で歌うことに意味がある曲かどうか」ということです。「岡咲美保の歌」を追求していきたいですし、それに挑戦していくことが私のモチベーションやパワーにもつながっています。この「キボウノレシピ」を聴いた時も、歌っている私が想像できたし、「この曲を歌ってみたい!」と思いました。
――岡咲さんの歌はいつもチアソングみたいにやる気や勇気を与えてくれますが、この曲もそうですね。
岡咲:それは嬉しいです! この曲が流れたら、朝、すっきり起きられそうだなという感じで(笑)。それも“たたき起こされる”というより、心地よさを感じながらという感じで。OP曲ほどではないですが、華やかなED曲になっていると思います。
――オケもにぎやかですが、ガチャガチャしていなくて。
岡咲:私がレコーディングで心がけたことは、「タテ線をそろえる」ということです。楽器隊の音はハネるようなリズムなので、そこに合うか、合わないかで聴き心地の良さがだいぶ変わってくるし、それに加えて感情表現のメリハリも意識して歌いました。
――レコ―ディングで何かディレクションはあったのでしょうか?
岡咲:作詞・作曲・編曲の青柳 諒さんは今回始めてご一緒する方で、「ここはこうしてほしい」というオーダーは特にありませんでしたが、私は作家さんの想いを知りたいタイプなので、少しでも気になったら「ここはどういう意味ですか?」とお聞きしたり、タテ線のそろえ方を教えていただいたりして。レコ―ディングではいつも私から積極的に質問していくことが多いんです。
逆に、サビの「Let's get it!!」で「ガヤを入れていいですか?」と提案させていただきました。みんなで歌っている感じが欲しかったので、「そのフレーズを高い声や低い声で歌ってみて、楽しそうだったら使ってください」とお伝えしたら採用されました。
――岡咲さんは楽曲の内容をとことん理解した上で、アイデアも出せるタイプの歌手なんですね。
岡咲:歌っている時は、楽曲の世界に染まらないと、音程は取れても、“届く歌”にならない気がして。私は心配性なところもあるので、納得がいくまでお聞きしちゃうんですよ。
――ミリー役を演じていることで、曲にもミリー要素は入っていますか?
岡咲:歌詞を書いていただく前に、ミリー要素を入れてもらうか、アース視点で書いてもらうか悩みました。両方を取り入れようとすると、ピントがぼやけてしまう気がしたので、今回はアース視点で書いていただきました。
ミリーは役を通して表現できればと思っていましたし、ミリーもアースに興味を持ってギルドに誘ったので、アースの気持ちに影響された歌詞を書くことで、ミリーが「いいな」と思っていることも一緒に書くことになると思って。それにアースは、セリフ量も動きも、この作品の圧倒的な主人公ですから。なので「キボウノレシピ」はアースに影響を受けた曲と言えます。
――いずれ、ミリーの気持ちを歌うキャラソンもできたらいいですね。
岡咲:そうですね。でも、どんな歌になるんだろう? 読みにくい子だから変調や転調がいっぱいあったりして(笑)。
――この曲の中で好きなフレーズやお気に入りポイントは?
岡咲:音的に楽しいのはサビの「君と君と君と」や「きらめきらめきらめく」ですね。歌詞の意味が深くわからなくても、ただただ楽しくて。幼少期に言葉の意味はわからないけど、リズミに合わせて手拍子するみたいな、無邪気な楽しさがあって。
歌詞だと「いつだって 流れるまま⾝を任せて」から始まる落ちサビですかね。その前のDメロで「時にはちょっと空ぶっても」とナイーブな一面を見せつつ、一歩踏み出さなきゃいけないではなく、今を止めないで流れていければいいんだよと。「今この時こそ楽しめば ハッピーになれるから」もまさにそうだなと思っていて。先を見て不安になったりすると今に集中できなくなるけど、もし今に集中できたら見えてくるものも変わってくるかもしれないし。そういう気付きを繰り返すことで、いつしか習慣になるかもしれないという、一見わかりやすい言葉だけど、実は難しいことで。それを歌が教えてくれるのはありがたいです。
――この曲はどこまでもポジティブですね。
岡咲:「ツライことがあっても頑張ろう!」というよりも「何か嬉しいことがあったら、ちゃんと喜ぼう」のほうが近いかもしれません。「嬉しい」をちゃんと感じられるように今を生きようと思っているので。結局、今が重なって、未来になって、人生になることはみんな平等に決まっているので、その中で「嬉しい」に気付けて喜ぶことを意識するか、しないかで日々の過ごし方も変わってくると思います。
――今のお話を聞くと、すごく深い哲学的な曲なんですね。
岡咲:こんな話をするとそう思われてしまうかもしれませんが、そんなに難しい曲じゃありません(笑)。でも「今この時こそ楽しめば ハッピーになれるから」の一行で言ってくれることで、どんな時でも気軽に聴けるし、気持ちも楽になってもらえたらいいなと思います。