収録3曲すべてタイアップ楽曲! カノエラナさん「Queen of the Night」リリース記念インタビュー|『ティアムーン帝国物語』『Helck』『千紘くんは、あたし中毒。』をそれぞれ違うアプローチと歌声で表現
「ハニーホリック」は、1番でヒロインの未知を、2番で千紘の気持ちを歌う
――3曲目「ハニーホリック」は、少女マンガ『千紘くんは、あたし中毒。』のイメージソングで、前シングル「ヨトギバナシ」でのインタビューの時にお話をお聞きしましたが、やっと音源化されますね。それにしても、他の2曲とはあまりにも対照的なド派手な曲で。
カノエ:本当にそうですよね(笑)。このイメージソングのお話をいただいた時も「私が少女マンガ!?」とビックリしました。ですが、チャレンジできるチャンスだなとも思ったんです。昨年、私が妄想したアニメの主題歌集としてリリースしたアルバム「歌楽的イノセンス」では、ギリギリのチャレンジをしました。「どこまでポップな曲にできるか」とか「ダークにできるか」とか「自分を振り切ることができるか」とか。この曲は自分が試してみたかったことと、少女マンガが結びついて化学反応が起きた感じです。
――『千紘くんは、あたし中毒。』は、高校生デザイナーの千紘に一目ぼれされた平凡な女の子の未知がモデルとして成長していく過程と2人の恋の行方が描かれた作品ですが、歌詞の中に「ランウェイ」という言葉が使われていたり、「ガラスのシューズ」もシンデレラストーリーにつながっていたりして。「真剣な目が 強引な唇が近付いて」などまさに少女マンガっぽいフレーズを、カノエさんが乙女心をキュンキュンさせながら作詞されたのかなと思わず想像してしまいました(笑)。
カノエ:原作を初めて読んだ時、すごくビックリしました。最初っからフルスロットルで、「少女マンガって、今こんなに進んでいるんだ! 若いっ!」って。読んでいる時、どうしても口元が緩んでしまって。あの時の顔は絶対、人には見せられません(笑)。
また、ひらがながいっぱいあるところなどに懐かしさを感じて。うちの母親は少女マンガが大好きで、今でもコミックスを買っているくらいなので、私も目にしていたし、たしなんでいましたが、私はギャグの4コマの単行本を買い集めるのが好きで。『千紘くん』を読んで相手を好きになるスピードが速いなと思ったけど、学生の時の恋愛ってそうだったなって。ちょっとでも距離が近づくと、ドキっとしたりして。自分の数少ない経験の中から何とか蜜を搾り出そうとした結果、曲にも甘い要素が必要だなと思って、そのまんま「ハニー」をタイトルに入れました。
「ちょっと意地悪みたいなワードも押していただきたい」というオーダーもあったので、小悪魔っぽい意地悪的な要素を足すのであれば、タイトルから「ホリック(中毒)」をいただいて、この曲名になりました。
――2人の恋模様にドキドキするけど、お互いに好き合っていて、周りも温かく見守る感じがいいですね。
カノエ:恋愛ものって、たいがい2人の恋を邪魔するキャラが登場するものですが、この作品にはそういう存在がいないし、キャラ全員がいい子で、自分の夢に向かって頑張っているんですよね。千紘くんと未知ちゃんも恋愛にどっぷりという感じではなく、お互い、ちゃんとお仕事したり、目標を叶えるためにどうしたらいいのかという芯があって、繋がり合っているのがいいなと。なので、曲の歌詞も1番で未知ちゃんの気持ち、2番では千紘くんの気持ちで分けて書いて、最後に2人の気持ちをミルフィーユのように重ねてみました。
ゴージャスなブラス+バンドサウンドで、カノエさんもハイテンションに。コラボMVも必見!
――サウンドもブラスを使ったゴージャスでにぎやかなアレンジで、各楽器のソロパートが楽しそうに主張しているところもマンガっぽいなと思いました。
カノエ:先日、バンドライブをやった時に初めて「ハニーホリック」を歌わせていただきましたが、その時に私も主張が激しいと思いました(笑)。間奏で各楽器のソロパートを回したりと、普段のギター弾き語りのライブではできないような、めちゃめちゃ遊べる曲だなと思ったし、私自身もテンションが上がって、手でハートマークを作ったり、私の中にあまりなかった甘く、振り切ったフィールドを出せて。私にとっても発見でした。
それでいて、カノエラナの曲としての自我もあってほしいと言われたので、カッコいいバンドサウンドだけど、サビでランウェイを歩いたり、結婚式のようなイメージは外さずに、間のイントロなどで「忘れないで! カノエが歌ってますよ」と、上から手を振るみたいな(笑)。
――部分部分で歌い方も変えていますよね。
カノエ:そうですね。例えばAメロでは低いところまで下りていく感じですが、語尾を上げたり、男性っぽさも残したり、くどかったり、毒々しくならないように意識して歌いました。
――コラボMVが公開されていますが、マンガの世界観と楽曲がバッチリ、マッチしていました。
カノエ:楽曲の歌詞やイメージをしっかり読み解いてもらえていて、すごく嬉しかったです。少女マンガのモノクロから急にカラーになるような演出や、いまどきっぽくチェキがコルクボードに貼られていたり。一番驚いたのは、曲のラストの「運命だろ」「運命なの」と確かめるフレーズで、子供の頃の2人と今の2人が一緒にいる絵で。たぶん私だけでなく、原作ファンの方にも感動的で胸アツだったのではないでしょうか?
――この曲で、『千紘くんは、あたし中毒。』ファンの方も引っ張り込めそうですね。
カノエ:(笑)。あと、このマンガのファンの方は若い方が多いと思うので、できるだけわかりやすい歌詞をチョイスしながら曲を作りました。起承転結もわかりやすいので、いまどき珍しい、深読みしないで済む曲になったかなと。
「Queen of the Night」はストレートで、「ヒカリ」は考察系、「ハニーホリック」は完全に別世界で、このシングルでは3曲3様の世界観を表現できたと思うし、「ハニーホリック」も自分の中で納得できる振り切り方ができました。
3曲の共通項は「赤いじゅうたん」!? 高貴な雰囲気のジャケットに
――ジャケットは、前作の「ヨトギバナシ」の妖怪チックなビジュアルとは対照的で、シックで高貴なイメージです。
カノエ:3つの曲のイメージを入れたくて。3曲とも、元になった作品に赤いじゅうたんが登場するなと思って。「Queen of the Night」の『ティアムーン帝国物語』では王の間にあるようなきれいなじゅうたんで、「ヒカリ」の『Helck』ではちょっと荒廃した城のじゅうたんのイメージ、「ハニーホリック」の『千紘くんは、あたし中毒。』はランウェイとしてのじゅうたんで。ゴージャス感を出したかったのと、中世的な要素、私が好きなアンティーク調も欲しくて、高貴な雰囲気の場所で撮影しました。
――表情もキリっと引き締まっていて素敵ですね。
カノエ:嬉しいです。撮影時、メイクを自分でやったので。髪型の三つ編みも前日に研究して、撮影に臨みました。
――何でも自分でやってしまうんですね。
カノエ:人に細かく伝えるのが苦手で、後で「ああすればよかった」と後悔するくらいなら、まずは自分でやってみて、後で何とかすればいいやと楽観的にやってきたので。でも今回、こんなに自由にやらせていただいて、ビックリしています(笑)。
――そのうち、カノエさんに丸投げされる未来も?(笑)
カノエ:創作するのが好きで、曲だけでなく、イラストを描いたり、最近はメイクなどいろいろなことに興味があって。好きなものは口に出さないと伝わらないということも言われ続けてきて、気付いたことでもあるので、自分自身の核の部分を隠しながら表現していくことに楽しみを感じています。今回のシングルの楽曲やビジュアルなどから、ファンの方には「最近、カノエはこんなことにハマっているんだな」と思ってもらえるんじゃないかなと。また、初めましての方に目を向けてもらうために、今回のシングルは絶好の機会だと思うし、タイアップさせていただいた作品に真剣に向き合っている姿勢も示せたのかなと思っています。