この記事をかいた人
- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
——お2人は、作品にとって重要なキャラクターとしてシリーズ途中から参加することも多いかと思うんですが、作品に途中から参加する楽しさや大変さはありますか?
緒方:私個人としては、最初からいるのか、途中から参加するかで気持ちや姿勢が変わることは特にありません。
でも、本作の音響監督を務める飯田里樹さんに「緒方さんが途中参加すると、慣れてきた若手がピリッと引き締まって良いシリーズになるから、いつも4話以降に出てきて欲しい」と言われたんです。なので、じゃあどんな作品でも4話で呼んでくださいよって話をしたんですけどね、中々呼んでくれません(笑)。
——確かにいち視聴者として凄くよくわかりますね。緒方さん演じるキャラが登場すると物語が動くぞ! というワクワク感があります。
緒方:そうですか? あくまで飯田さんが言うにはで、自分で現場を引き締めてやろうと思っているわけではないですからね!(笑)
釘宮:私も「途中からですが、よろしくお願いします。」という気持ちで参加しましたが、今の緒方さんの話は凄くわかります。緒方さんの演じるキャラはただならぬ雰囲気があるイメージが強いので。
日常にいる役ではなく、なにかしら物語の運命を握っているようなところで緒方さんは配置されている印象があります。
緒方:ファミリー向けのアニメには全然呼ばれないんですけど、ごくまれに『ケロロ軍曹』とかの一年に一回だけあるシリアス回のゲストとか、『ドラえもん』とかも20周年記念のシリアスゲストとかで呼ばれたりします(笑)。
釘宮:緒方さんは業界全体のとっておきですよね。
——そうですよね〜。
緒方:あんまりとっておきにされ過ぎたら死んでしまうので適度にお仕事いただけるとありがたいです(笑)。
——緒方さんは年齢差が大きいキャラクターを演じるというお話がありましたが、その演じ分けをされることは最初から決まっていたんですか?
緒方:よくわからない部分もありますけど、オーディション時にはそう書いてありました。ここまでの年齢差がある役を求められることはあまりないです。私も実際オーディション受けながら、うまく行かなかったら別々の役者さんにお願いするんだろうなと思っていました。特に女性声優だと、少年をやることはあっても青年となると限界がありますし。
最近は男性声優さんが子供のキャラクターをやることもあるのでその線かなとも思ったんですけどホント、少年役女性声優の分野は侵食されてるんですよアイツらに!いい仕事するのでアレなんですけど!
—— 一方で釘宮さんのキャラクターは凄く可愛らしい反面、純粋すぎてちょっと怖さもありましたね。そのバランスはどのようにとっていたのでしょう?
釘宮:特に考えはなく演じていたのですが、混じり気のない気持ちを煮詰めていくと感情が一種類しかなく、好き、助けたいという善意が究極までいってしまうと狂気っぽくなってしまいます。
緒方:釘宮だから可愛いですけど、ストーカーに近い?(笑)。純粋な好きっていう気持ちの究極的な部分が行動に出ちゃうとね。
釘宮:純度が高ければ高いほど、その感情以外が消失してしまって、意識していないところで恐怖を与えるようになっているのではないかと思いました。台本にはところどころ「狂気っぽい」とはありましたが、私も狂気的に演じようという気持ちはなく演じていますた。
——緒方さんのおっしゃるとおり、釘宮さんだから可愛く聞こえてるけどって面はありますね。
緒方:釘宮だから可愛いんだけど、後半はいくら釘宮が可愛くやったって重すぎて!(笑)
——流石に(笑)。また、公式のコメントで、緒方さんが田口監督が作る映像が大好きだとおっしゃっていて、『ペルソナ3』や『キノの旅』、『アクダマドライブ』などに実際に参加されていると思うんですが、田口監督作品のどういうところがお好きなんですか?
緒方:田口さんの映像には空気感が乗るんです。必ずその作品なりの。ホワッとした日常的なもの、風景、戦闘シーンまで、独特の空気感が乗るんですよ。もちろん他の監督ができてないという意味ではないですが、そこにいつも引き込まれるんです。
例えば実写映画を見ているような空気のまとい方と言いますか。実写の空気感はロケの風景も大事ですが、出てくる役者さんがしっかりと色んなものを背負うことができていると、シーンの世界がグッと深くなる 。
それがアニメーションになると、我々音声担当が作る空気と、画の方が作る空気、それを意識的に一緒にしないといけない。それを田口監督は、丁寧に導いて、どの作品も繊細に、大胆に一体感を持たせられている。声優や作画を担当する方を、良い意味で利用している。間の使い方も本当に絶妙。
『アクダマドライブ』や『BLEACH』のようなめちゃくちゃ速くて、ガンガン行っちゃう作品はキレとテンポがいいし、『キノの旅』みたいに草原が風で揺れているみたいなシーンや、『ペルソナ』の雪が降っているシーンなどは凄く綺麗で、音が付いてなくてもしんしんと降り積もっている音や温度が伝わって来るような画を作られる。凄い監督だなと思います。
最初に田口監督と会ったのは彼が27歳くらいだったんですけど、その歳でこんな画を作る監督がいるのかって凄く驚きました。ご本人とお話しても、物事を深くまで考える方。これから、もっともっと世界に出ていく監督だなと思います。
——なるほど。
緒方:沢山の方が関わって作り上げるのがアニメなので、田口監督だけが、というお話でもないですし、逆に大変な苦労をする現場もあると思います。
ですが、最終的にまとめ上げるのはやはり監督なので……。弊社の中学生の俳優がデビューさせていただいた『夏へのトンネル、さよならの出口』(2022年公開)も田口監督作品で、今でもフランスなどで高い評価を受けていますよね。
——今作も田口監督の映像に注目ですね。
緒方:はい。本作の完成版は我々もまだ見られていないんですが、飯田さんから聞いたんですが、音響もかなりこだわっていて映画館で見ると全然違うとのことでした。アドリブなども丁寧に拾って下さっているらしく、試写が楽しみです。
——なるほど、映像も音響も楽しめるように、できるだけ劇場で見て欲しい作品ですね! 本日はありがとうございました。
10月27日(金)公開
【ストーリー】
お台場とデジタルワールドを行き来した冒険の日々から10年が過ぎた2012年。
それぞれの道を歩き出しつつも、本宮大輔ら選ばれし子どもたちとパートナーデジモンは変わらぬ絆で結ばれていた。そんなある日、突如巨大なデジタマが東京タワー上空に出現し、世界中へメッセージが発信される。「みんなにともだちを。世界中すべてのひとにデジモンを」世界がその動向を注目する中、大輔たちの前に「世界ではじめてデジモンとパートナー関係を結んだ人間だ」と話す謎に包まれた青年・大和田ルイが現れる。選ばれし子ども誕生の裏側には、幼いルイのたった一つの願いが隠されていた…
過去そして現在、全てが繋がった時、デジモン史上最大の危機が訪れる。果たして大輔たち02チームが選んだ道とは?
今再び、大人になった選ばれし子どもたちが出動する!
【キャスト】
片山福十郎(本宮大輔役) 野田順子(ブイモン役)
ランズベリー・アーサー(一乗寺賢役) 高橋直純(ワームモン役)
朝井彩加(井ノ上京役) 遠近孝一(ホークモン役)
山谷祥生(火田伊織役) 浦和めぐみ(アルマジモン役)
榎木淳弥(高石タケル役) 松本美和(パタモン役)
M・A・O(八神ヒカリ役) 徳光由禾(テイルモン役)
緒方恵美(大和田ルイ役) 釘宮理恵(ウッコモン役)
【スタッフ】
原案:本郷あきよし
監督:田口智久
脚本:大和屋 暁
キャラクターデザイン:中鶴勝祥
デジモンキャラクターデザイン:渡辺けんじ
アニメーションキャラクターデザイン:立川聖治
音楽:富貴晴美
スーパーバイザー:関 弘美
アニメーション制作:ゆめ太カンパニー
製作:東映アニメーション・東映
映画『デジモンアドベンチャー02 THE BEGINNING』公式サイト
https://www.toei-anim.co.jp/movie/digimon-adventure/
©本郷あきよし・東映アニメーション・東映
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。