第三期fripSideが放つ1年ぶりのニューアルバム『infinite Resonance 2』sat(八木沼悟志)・上杉真央・阿部寿世ロングインタビュー|「お客さんを置き去りにしないまま、今までやっていなかったことにもチャレンジしたい」
fripSideの核を担うプロデューサーsat(八木沼悟志)と、ツインボーカルで新たな色を彩る上杉真央、 阿部寿世。3人の意志と個性が新作『infinite Resonance 2』でさらなる共鳴を果たした。
第三期fripSideとして1年振りとなるニューアルバムには、2nd Single「Red Liberation」(TVアニメ『ひきこまり吸血姫の悶々』OPテーマ)や、「The Light of Darkness」(ゲーム『ティンクルスターナイツ』主題歌)といったタイアップ曲やふたりのソロ曲、「final phase」など代表曲のカバーがズラリ。「今までやっていなかったことにもチャレンジしていきたい」という思いが反映された新曲もパッケージされている。
これまでの道のりを振り返りながら、『infinite Resonance 2』に込めた思いや、サウンドメイキングにおいてのチャレンジを語ってもらった。
「ここまで来られたのはお客さんのおかげ」
――新体制となってからは1年ぶりとなる作品。この1年を振り返ってどのような変化を感じられていますか。
satさん(八木沼悟志/以下、sat):ふたりにとっては、fripSideという歴史のあるグループに入って1年目。いろいろなことを経験しながら、猛スピードで成長してくれたなぁと思っています。大きなトピックとしては、夏のライブツアー(「fripSide phase3 concert tour -the Dawn of Resonance-」)をふたりだけで成立させたこと。ライブを経てふたりともfripSideのメンバーとして地に足がついてきたなとも思っていて。前回の2枚と比べると、チームとして熟成してきたのかなと感じていますね。
阿部寿世さん(以下、hisayo):夏のツアーでは、satさんがステージにいない中で、fripSideの名に恥じることのないように、私たちふたりが実力をさらにつけていくということを目標に挑んでいました。去年はsatさんが同じステージにいるという安心感があって。頼ったり、甘えたりしてしまうところもあったんです。でも今回はsatさんなしで、真央ちゃんとふたりでステージを作り上げていかなければならない。最初は不安ではありましたけど「やるしかない!」と。必然的に真央ちゃんとのコミュニケーションも増えていき、11公演回っていく中で、自分たちでもひとまわり大きく成長したことを実感していて。今後もさらに成長をしていきたいなと思っています。
上杉真央さん(以下、mao):去年fripSideとしてデビューさせていただいた時は、右も左も分からない状態でした。芸能の世界に身をおいていたわけではなく、普通に働いていた中から歌手として活動させていただくことになったので……しかも周りがなんでもできる人ばかりだから、自分だけ何もできない、どうしよう自信がない!って。
今年の夏のツアーでは、さきほど寿世が話してくれたように、satさんが私たちを野に放ってくれて(笑)。自分から積極的に出ていかなきゃいけないんだという状況に置かれたことで、前に出て良いんだという自信が生まれました。自分に自信をつけることのできた1年だなと感じています。
sat:それはお客さんのおかげだね。
mao:そうですね。
sat:そういう意味でも、夏のライブハウスツアーはふたりにも大きなものを与えてくれたんじゃないかなと。いろいろなスタッフさんの力を借りながら、ふたりでライブを成立させて、お客さんが満足して帰ってくれたというのは非常に良い経験だっただろうなと思っています。
僕も長年ツアーをやってきましたけど、お客さんから得るエネルギーはものすごく大きいものですし、それがモチベーションにもつながります。あと、単純に楽しいんですよね。いろいろな場所に行って、いろいろな景色を見て、いろいろなものを食べて。そんなのご褒美でしかないじゃないですか。俺は今年はご褒美をもらえず、ひとりで悶々とスタジオで制作していて。「今青森かぁ、良いなぁ」って(笑)。
――(笑)。ファンの存在はやはり自信を与えてくれるものですか。
sat:そうですね。ステージに立つこと、お客さんの前で自分たちの曲を演奏するというのは音楽家としての使命だと思っていて。僕らがパフォーマンスすることで、僕らを応援してくれたり、感動してくれたり、っていうのは本当に力になりますね。「よしまた頑張ろう」って気になりますね。
hisayo:しかも今回のツアーではお客さんの声が解禁されて。間近でファンの方の熱量を感じられたことが私たちのパワーにもなりましたね。
sat:「ひーちゃん!」「まおまお〜!」とか呼ばれるわけでしょ?
hisayo:呼ばれます。それがすごくうれしくて。
mao:MC中にも反応してくれるんです。それが新鮮でしたね。
sat:会話もできるというのはライブハウスならではだよね。
――ライブハウスの場合は距離が近いだけにお互いの表情もはっきり見えますよね。
sat:そうなんですよね。あーライブハウスツアー良いなぁ(笑)。
――ライブハウスって本当に良い場所ですよね。だからこそ「小さい場所からからはじめたい」という思いがあったんでしょうか。
sat:そうですね。前任者の南條愛乃さん、その前のnaoさんとは、お客さんの少ない場所から徐々に進めることができたんですけど、彼女たちの場合はデビューが埼玉スーパーアリーナでしたから。やっぱ、そのままホールに放つというのは……基礎がないまま飛び級してしまうような感じになるのかなと。もちろんそれが良いパターンというのもあるんでしょうけど、ふたりにとっては勿体ないなと思っていました。ライブハウスで得られるものは大きいはずだよ、ということで。
hisayo:得るものは想像以上に大きかったです。それと、ツアーの時には全国のアニメイトさんにお世話になって。
mao:ポップを作ってくださっていて、すっごく温かく迎えてくださったんです。それがすごくうれしくて。
hisayo:まだ行けていない場所もあるので、今後ご挨拶させていただきたいですね。