「僕らの軌跡と共に、20周年を綺麗に彩ってくれた」20周年を記念してリリースされるトリビュート『SID Tribute Album -Anime Songs-』に小野大輔、朴璐美、森田成一など豪華声優陣が参加! 感慨深げにその思いを語る/シド メンバー全員インタビュー
2023年に結成20周年を迎えたシドが、12月6日(水)にトリビュートアルバム『SID Tribute Album -Anime Songs-』を発表する。本作は、これまでシドが手掛けてきたアニメタイアップ楽曲をそれぞれのアニメに出演した豪華声優陣がカバーするという前代未聞のトリビュートだ。
収録曲は全7曲。参加声優は、小野大輔(『黒執事』セバスチャン役)、朴璐美(『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』エドワード・エルリック役)、森田成一(『BLEACH』黒崎一護役)、戸松遥(『マギ』モルジアナ役)、村瀬歩(『将国のアルタイル』マフムート役)、雨宮天(『七つの大罪 神々の逆鱗』エリザベス役)、福山潤(『天官賜福』三郎(サンラン)役)。
参加声優、楽曲タイトル、及び声優によるコメントが発表される度に、SNSで大きな反響があった。そしていよいよリリースとなる『SID Tribute Album -Anime Songs-』。また、同日には、1年9ヶ月振りとなる新曲「微風(そよかぜ)」がデジタルリリースと、これまでの感謝を楽曲で伝えながら、20周年のラストを飾る日本武道館に向けて、そして“これから”に向けて大きな弾みをつける。
マオ(Vo)、Shinji(Gt)、明希(Ba)、ゆうや(Ds)に『SID Tribute Album -Anime Songs-』、新曲について、話を訊く。
ロックバンドとしての道のりとアニメと一緒に歩んできた道のり
――トリビュートアルバム『SID Tribute Album -Anime Songs-』はどのような思いから立ち上がっていったものなのでしょうか?
マオさん(以下、マオ):20周年ということで、トリビュートアルバムという企画がまず立ち上がって。どういう方向性でいくか決めていく中で……僕らはアニメのタイアップを結構やらせてもらってて。これまでを振り返ったときに、ロックバンドとして歩んできた道と同時に、アニメと一緒に歩んできた道もあるなと思ったんですね。20周年という節目で、アニメとの歩みも出せたらなと。
僕らがやったアニメ主題歌を集めてアルバムにするだけだと、「普通かな」と思って。せっかくなら普通じゃないことをやりたいなとなった時に……確か僕が切り出したと思うんですけど「キャラクターを演じられている声優さんに、アニメの主題歌を歌ってもらうことが成立したら、すごいことになると思うんだけど、でも難しいですよね?」って感じで、ダメ元でレコード会社の方に切り出しました。
その時は「まあムリだろうな」とは思いつつでした。その後「トリビュートの話はどうなったのかな?」と思っている頃に「決まりました!」とご連絡をいただいて。その時点でメンツも決まっていたんです。しかも「えっ!?」という驚くような面々で、これはもうスタッフの方の尽力のおかげだなと。すごいことをやってくれたなと思いました。
――チームのスタッフの愛が。
マオ:愛しかないのかな、とそこで感じましたね。
――今20周年のお話がありましたが、20周年を迎えたお気持ちというのもお一人ずつおうかがいしていいですか?
明希さん(以下、明希):今マオが話していたトリビュートの件しかり周りの方に恵まれているんですよね。その中で、20周年をファンの人にも祝福してもらえて。僕らだけの20周年ではなくて、みんなで20周年を迎えられるというムードがすごく嬉しいなぁ、と。20年続けているとこんなにも良いことがあるんだなと思いましたね。
――これまでのアニバーサリーとはまた違うものがありましたか?
明希:5年、10年、15年とそれぞれアニバーサリーをやらせてもらってきたんですけど、その時はその時で感動があったんです。でも20周年はファンの方とここまで一緒に歩んで来れたなという感慨がとても強いですね。特にキャリアが上がれば上がるほど、それを感じるなぁと。
Shinjiさん(以下、Shinji):20周年って僕の中ではあっという間で。その内の10年はもっとあっという間でした。特にファンの方からの祝福の声は本当に嬉しいなと感じていました。それと今回のトリビュートですよね。参加してくれる方々の名前を聞いた瞬間に「嘘だろ」と思いました。僕はアニメを見ていると声優さんの名前を調べてしまうタイプなので、「まさか」と。僕らへのプレゼントという感覚もありますね。
ゆうやさん(以下、ゆうや):15周年から20周年まで、ものすごく速さを感じていまして。というのも、2020年から始まったコロナ禍で、世界的にも、本当はやりたかったことがあったけどできなかったような時間を皆さんが過ごしてきて。
だから20周年をお祝いできる今があることが、とてもありがたいことだなと思っています。思い返すと、噛みしめるような気持ちになります。
――コロナ禍は今考えると、不思議な、なんとも言えない期間でしたよね。
ゆうや:そうですね。当時は何が起こっているのかよく分からないまま日々が過ぎていって。今振り返ると「夢だったのかな?」とぼやっとするような感覚もあります。その中でも、1年1年、シドなりに今できることをずっと追求してやってきて。その先で、20周年のお祝いのひとつとして、このような素晴らしい作品をもらって。僕らの軌跡と共に、20周年を綺麗に彩ってくれたなと思いました。
――マオさんはいかがですか。
マオ:20周年という節目に立った時に、バンドを始めた時のことを思い出したんです。当時は「何年続けよう」「将来どうなりたい」とかってことはあまり考えていなくて。一歩歩いたらCDを出せるようになって、また一歩歩いたらライブにたくさんのお客さんが来てくれるようになって、と、一歩一歩、歩いて行って、その先で20周年が待っていたというようなイメージです。その途中に、必ず見守ってくれたスタッフ、必ず応援してくれていた大切なファンのみんながいて。自分たちだけでここに来られたわけじゃないんですよね。
今は何かしらの事情でライブに来られていないというファンの方もいると思うんです。でも、そういう子たちが関わってくれたり、聴いてくれたりしたことで、シドが20周年に向かっていけたわけで。誰一人欠けても、ここには立てていなかったんだろうなと改めて感じました。だから、思い入れはひときわ深いですね。
――原点を思い返すこともあったんですね。マオさんは昔を振り返ることはよくあるんですか?
マオ:僕は性格上、昔を振り返ることって……ちょっと照れくさいタイプというか(笑)。あまりそういうことはしないんです。昔のDVDを見るってこともほぼないですし。でもこういうタイミングで振り返ると、シドの歴史を愛おしく思いますよね。当時の自分も、見てて「かわいいな」と思えるし。そういうところまでやっと来られたんだなと。
――ご自身で客観的に過去を見るとなると時には複雑な思いになることもあると思うんですが、今は「かわいい」と思えると。
マオ:そうですね。例えば、ミュージシャンではなくても、卒業アルバムを普段見たら恥ずかしくなるけど、成人式の日に見たら少し思いが違うってことがあると思うんです。それに近い感覚ですね。人生の節目で、過去のアルバムを開いたときにはまた違った感情が生まれましたね。
――この20周年の歩みの中で、アニメはシドにとっても大きな存在だと思います。アニメとシドの親和性の高さについて、どう分析していますか。
マオ:僕らは『黒執事』という素晴らしい作品と一緒にデビューすることができて。『黒執事』のアニメデビューもそのタイミングだったので「一緒にデビューしましょう」という形だったんです。なかなかそんな奇跡はないと思うんですよね。
それに加えて、当時の僕らの音楽性やビジュアル、『黒執事』の世界観が、世の中的にもハマってくれたというか。しっかりマッチした感じを自分ら的にも感じていました。一番思い出すのは、そのスタートが良かったということですね。
そこから成功体験じゃないですけど、「アニメと俺たちがタッグを組んだら上手くいった」という実績が一つあると、次にアニメのお話が来たときに「これも成功させよう」という気になるもので。そこからまたアニメを勉強し始めて、「僕らが育ってきた世代のアニメと今のアニメはちょっと違った側面もあるんだ」「意外と大人のファンも多いんだな」とか、色々なことに気づいて。そこからでしたね。どんどんアニメのことが好きになって、気づけばアニメファンの方たちの中でも、「シドが主題歌で嬉しい。安定してる」と言ってもらえるようになってきました。「安定してる」って言ってもらえたときが、一番嬉しかったです。アニメファンの方がなにかのきっかけで見たときに「シドじゃん。これは大丈夫だね」と言ってくれているのを見ると、すごく嬉しいです。
――アニメがきっかけになって、シドを好きになった方も多いと思います。
マオ:ロックバンドの中でも、僕らはヴィジュアル系というジャンルで。ヴィジュアル系というジャンルは盛り上がってはいたんですが、誤解を恐れず言えば、ある意味では閉鎖的なジャンルだったとも思っていて。その殻を完全に破ってくれたのは、アニメとのタイアップだったのかなと。
アニメとの出会いで色々なものが広がっていったし、なんなら僕らの人生自体が変わったんです。だからすごく感謝しています。今では“なくてはならないもの”ですよね。過去に一緒にやらせてもらった作品たちのことをすごく大事に思っています。
――今回のトリビュートには、その作品のキャラクターを演じられたキャストが集結しています。アニメとタイアップを続けていく中で、声優の方々とのお付き合いもあったのでしょうか?
マオ:何度か対談をさせていただいたことはありましたが、ご一緒させていただく機会はそれぐらいで。このトリビュートアルバムを作るに当たって「20周年おめでとうございます」というメッセージをそれぞれの声優さんが寄せてくださって。改めて「シドを知ってくれているんだ」という喜びがありましたね。
すごい方たちが、自分たちにメッセージを寄せてくれてるというのは……ちょっと不思議でした。「シドって書いてくれてる!」と言いますか(笑)。これをきっかけにまた声優さんたちと何かご一緒させてもらったら嬉しいなとは思っています。
――楽しみです。明希さんはMachicoさんに10周年記念楽曲「Shall we…?」を提供されていますよね。私はMachicoさんの取材をさせていただいているのですが、Machicoさん自身シドの大ファンだということもあって、ものすごく喜んでいらっしゃって。楽曲提供を通して、改めて気づいた声優という職業に対する魅力はありますか。
明希:これまでに歌い手さん、声優さんなど、色々な方と組ませていただく機会がありました。例えばMachicoさんは、シンガーとしての魅力がものすごくある方。歌い方を含めスキルがめちゃくちゃ高いんですよね。「歌はもっと頑張らないと……!」ってずっと言ってらしたんですけど、僕からしたら「いやもう十分だよ(笑)」と。
マイクから聞こえてくる音と発する音のギャップがないんです。「相当耳が良いんだな」と。それはMachicoさんもそうですけど、どの方にも共通して言えるところなのかなと思いますね。仮歌の時点で何となく見えるんですけど、「Shall we…?」に関しては「良い作品になるな」という感覚があって。作っていて楽しかったです。未だに聴きますからね。本当に素晴らしいので。