冬アニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期連載インタビュー第1回:原作・桜井のりお先生|山田の葛藤を市川が見つけてあげる第13話、アニメだけ見ている人の感想も気になるところ
TVアニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期が、テレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠・BS朝日・CSテレ朝チャンネル1にて放送スタートしました。桜井のりお先生が『マンガクロス』(秋田書店)で連載中の『僕の心のヤバイやつ』は、SNSを中心に人気を集め、コミックス累計発行部数400万部を突破中の話題作です。
アニメイトタイムズでは、第1期に引き続き、『僕ヤバ』連載インタビューをお届けします。第2期の幕開けに登場してくれたのは、原作の桜井のりお先生です。昨年12月、LINE CUBE SHIBUYAにて行われた「僕の心のヤバイやつ」FAN FESTA 2023~karte12.5 僕らは渋谷に集まった~開催直前にお話をうかがいました。
インタビュー後半には原作の「これから」にまつわるお話がありますので、原作をまだ未読の方はご注意の上読み進めていただけたらと思います。
ふたりの関係に合わせて音楽にも変化を
――前回お話をうかがったタイミングが昨年の5月下旬でしたので、改めて第1期のことについてもおうかがいさせてください。桜井先生はTVアニメ第1期の放送の反響の大きさはどのように受け止められていましたか?
桜井のりお先生(以下、桜井):原作もそうなんですけども、徐々に盛り上がっていっていることを感じていて。その盛り上がりが思っていた以上に大きかったなと感じています。また、第2期が第1期の最終話で発表されて、多くの人に喜んでいただけたことも嬉しかったですね。
――桜井先生自身が第1期のアニメーションを見終えたとき、どのような思いがありましたか?
桜井:原作でも4巻の終わりが第1期最終話だったんですが、原作では一区切りを銘打ってなかった場面だったんです。アニメ第1期の終わりとして余韻を持たせつつ、きちんと締められていて、それがすごく良かったなと思っています。そこが、第1期のシリーズ全体のできの良さにもつながっているのかなとも感じました。
――原作の4巻の終わりには、萌子のクスリとするようなツッコミがあって(笑)。また違ったエモーショナルな余韻があったように思います。
桜井:そうですね。原作、というか、私はふざけて終わってしまうことが多いので(笑)。映像作品としての余韻をもたせた、良い終わり方をしていただいたなと。
――第2期もキャストの方々にお話をうかがっています。朝井さんが桜井先生のインタビューを読んで「役者冥利に尽きる」と言ったお話をされていて、めちゃくちゃ喜んでいました(※後日公開予定)。小林以外にも、改めて気づいたキャラクターの魅力はありましたか?
桜井:やっぱりその……足立の良さを改めて知ったというか。足立を演じてくださった岡本(信彦)さんの声を聞いて、足立って実は内面が熱いヤツなのかなぁって。それは私の中で発見でした。基本的にふざけてるけど、根は真面目なところがあって。人と向き合うことに対して真面目な性格なのかなって。岡本さんの声がついたことでそれは感じましたね。1期のアフレコのあとに体育祭のエピソード(原作8巻収録)を描いていたんです。その影響はあったかなと思います。
――第1期のお話し合いの中で音楽にこだわりたいとお伝えしたというお話がありました。第2期の音楽面に関して、なにかお伝えされていたことはあったのでしょうか?
桜井:こちらからは特に改めてなにかをお願いするということはなかったのですが……第1期のオープニングテーマ(ヨルシカ「「斜陽」)に関しては、市川の心の内面を丁寧に表現した楽曲で。2期ではふたりの関係性が近くなるので、市川が学校を楽しいと思っているような、弾むような明るい曲が良いのかなと思っていました。それを伝えた記憶はありますね。
――実際、あたらよさんの“「僕は...」”を聴かれて、どのようなご印象がありましたか?
桜井:すごく爽快感的なものがあって。曲調自体は明るくてポップなんですけど、歌詞では市川の深い心の内が表現されていて。さらに第1期のような内面を丁寧に描いたエモさもあって、それにプラス、青春っぽい爽やかさがある楽曲になっているのかなと思っています。すごく好きですね。聴けば聴くほど良いなぁと感じています。
――エンディングテーマは第1期に続き、こはならむさんで。「恋してる自分すら愛せるんだ」のご感想についても教えてください。
桜井:物語が一回終わって、そこからまた盛り上がっていくような、エンディングにふさわしい爽やかな曲になっているなと感じています。次も早く見たい、と思ってもらえる曲なのかなって。今日は2曲とも生で聴けるので楽しみです。
――今日のFAN FESTA 2023~karte12.5 僕らは渋谷に集まった~もすごいことになりそうですね。
桜井:前回のイベント(先行上映イベント ~僕らは初めて集まった~)に行けなかったので、ライブを見られることがすごく楽しみですね。
『僕ヤバ』の朗読劇は初めての試みです。台本は事前に拝見しているのですが、声優さんたちの力で、きっと素晴らしいものになるんだろうなと楽しみにしているところです。
山田の葛藤を市川が見つけてあげる13話
――第2期の幕開けを飾る第13話をご覧になってどのような印象がありましたか?
桜井:第13話は雪が降ってくる回で。その空気の冷たさが市川の焦りだったり、山田の悩みだったりにリンクしているような気がしました。劇伴もとても良くて、寒さが伝わってきて、心がギュッとなりました。
――劇伴はどのような雰囲気なのでしょうか。
桜井:もちろん第1期も素晴らしかったのですが、市川だけではなく、第2期では山田の心に寄り添った曲調がプラスされていて。本当に素晴らしいなと思いました。
――第13話は山田のお仕事に対する気持ちも垣間見れますね。
桜井:そうですね。山田の心の内が第2期を通して徐々に見えてくると思うので、そこは私も楽しみにしています。そして、その山田の心の葛藤を市川がちゃんと見つけてあげる、というのがひとつのテーマになっているのかなと。
――第13話の中にも、市川のお土産の秋田けんたろうが登場します。秋田けんたろう、かわいいです。
桜井:秋田犬がかわいいので(笑)。山田も犬が好きですし、ちょうど良いかなと……安直に描きました(笑)。
――木に掛かっているキーホルダーに気づいた市川がすごいなって。
桜井:キーホルダーなどの落とし物が木に引っかかっていたり、消化器の上に置いてあったりするのをよく見るんですよね。それを参考にしました。
――ところで、秋田県が市川の父の実家という設定は、桜井先生が秋田県に旅行されたことがきっかけだったとか……?
桜井:あ、そうです(笑)。市川の実家はなんとなく雪国が良いかなと思っていたんですけど、個人的に旅行に行った秋田県の乳頭温泉付近がすごく良くて、風情があって、とても静かで。本当に雪深いんですけども……ちょっと入っていくと何もない森があるんですよね。
雪国は寒いんですけど、静けさと山深い感じに、安心するところもあったんですよね。それで市川の父方の実家が秋田というのもありなのかなと……。
――雪国に行くことは桜井先生のリフレッシュにもなっているのでしょうか。
桜井:そうですね。毎年になるかはわからないんですけども、雪国の温泉に行っているんです。雪国が個人的には好きで。たまに行く雪国って特別なんですよね。
――さきほど旅行のお話がありましたが、年末はどこかに行かれるんですか?
桜井:今年は青森県に行く予定です。これで東北を制覇します。
――雪国が本当にお好きなんですね……! 桜井先生の作品には雪が登場する機会も多いような……。
桜井:言われてみれば『僕ヤバ』に限らず『みつどもえ』にも雪が降るシーンがあって。埼玉県にずっと住んでいるので、雪って特別感があるんですよね。たまに振って積もるとテンションが上がるけど、外出するとちょっとうんざりする(笑)。それも含めて、非日常感があって好きですね。それと、私の父の実家も雪国だったんです。子供の頃は毎年冬に行っていました。その影響もあるのかなと。
――それこそ桜井先生は以前市川が自分に近いというお話をされていましたが、父方が雪国というアイデアも、もしかしたらご自身と重ねたところも……?
桜井:ああ、そうかもしれないですね。そこは意識してなかったんですけども。
――桜井先生的に、アニメ本編第14話以降で楽しみにしててもらいたいところというと?
桜井:原作でいちばん好きだったのが卒業式の回なんです。その絵コンテを確認させていただいたのですが、すごく良くて。私は普段絵コンテを見させていただいた時に「めちゃくちゃ良いですね」みたいな感想を、特にお伝えはしてないんです。あまり良くないとは思うんですけども……。でも今回は「すごく良かったです」ということを珍しく伝えさせてもらいました。
――それだけ心が動かされたという。
桜井:本当に良かったです。絵コンテだけでもすごく良いので、早く映像を見たいなと思っています。特に卒業式は、原作を読まれている方も楽しみにされている回だと思うんです。その反応も楽しみですね。それと、アニメだけ見ている人の感想も気になるところです。