冬アニメ『百妖譜(ひゃくようふ)』東山奈央さん(桃夭役)インタビュー|美食家でサバサバした 「桃夭」と東山さんの類似点は?
2024年1月6日(土)から3日間限定で第1話・第2話のオンライン先行配信を行い、更に1月10日(水)からフジテレビの「B8station」で放送開始となるTVアニメ『百妖譜』(ひゃくようふ)。本作は中国の動画配信サービス「bilibili」で、シリーズ総計4.4億再生を記録した大ヒットアニメの日本語吹き替え版となる。
今回は放送に先駆けて、主人公「桃夭」(とうよう)を演じる声優の東山奈央さんに、作品の見どころや中国と日本の文化の違いなどを伺った。本稿を読んでから『百妖譜』を見れば、何倍も楽しめるはず!
『百妖譜』はオムニバス形式のハートウォーミング作品
――まだ『百妖譜』を知らない読者に向けて、東山さんが演じる「桃夭(とうよう)」と、簡単なあらすじをお願いします。
東山奈央さん(以下、東山):私が演じる「桃夭(とうよう)」は、妖怪たちのお医者さん「霊医」(れいい)です。『百妖譜』は、その桃夭がさまざまな妖怪たちに出会って、心の傷を癒やしていく旅の物語です。物語は2話でひとつのエピソードが完結するアニメで、2話ごとに登場する妖怪や旅する場所が変わっていきます。
――オムニバス形式の作品なのですね。
東山:はい。初めから見ていただきたいのはもちろんですが、もし見逃してしまったとしても、どこからでも楽しめるアニメだと思います。
――ストーリーのテイストは、どのようなイメージでしょうか?
東山:いまアフレコをしている最中ですが、どのエピソードもグッときます。私が特に好きなのは第3~4話のお話で、涙がポロポロ出てきてしまうお話です。
――ということは、泣けるアニメ?
東山:すべてのエピソードに当てはまるわけではありませんが、全体的にハートウォーミングなお話が多いです。メッセージ性を感じられるのが、『百妖譜』の特徴だと感じました。
――ハートウォーミングな作品は、視聴者を選ばないのでいいですね!
東山:妖怪たちは心に傷を負っていて、霊医・桃夭に助けを求めるのですが、妖怪はひとりでに傷ついているわけではありません。人間との触れ合いのなかでいろいろなことがあって傷ついてしまったんです。愛を知ったり、悲しみを覚えたり。その過程が、物語のなかで大切な部分だと思います。
――先程「心の傷」とおっしゃいましたが、桃夭は外科ではないのでしょうか?
東山:はい。霊医のお仕事は、現代に当てはめると「カウンセラー」に近いかもしれません。どうして傷を負ったのかをヒアリングしながら、治療するお医者さんです。
主人公「桃夭」は、率直でマイペースな霊医
――わかりやすい例えをありがとうございます!
東山:とまぁ……わたしが演じる「桃夭」を紹介させていただきましたが、ここまで聞いていただけると「桃夭は妖怪に寄り添っている優しい主人公」というイメージを持たれてしまうと思います。
――はい。そう受け取りました。違うのでしょうか?
東山:違うんです(笑)。実際はサバサバした性格で、多少率直なこともサラッと言ってしまうような、主人公の型にはまらない女の子です。
一同:(笑)
東山:私も第1話のアフレコで、「優秀でクールな女性なんだろうな」と思っていました。間違いではないのですが、妖怪に対して優しくアプローチしていたら、演出さんから「率直過ぎるくらいの感じで接してほしい」と言われました。一緒に旅をしている少年「磨牙」(まが)や、初めて会う妖怪に対してもまったく物怖じせず、いつも自分が中心にいるマイペースな性格です。
―― 一般的なお医者さんキャラクターではないのですね。
東山:ですが、一見すると冷たくドライに見えるけど、さりげない優しさは持っています。そもそも優しさがなかったら、妖怪を癒やす旅には出かけないと思います。根っこはとてもいい子だけど、ちゃんと見ていないと彼女の優しさを見逃してしまうような、さりげない優しさを持っている子です。
視聴者同士が語り合える奥深いメッセージ
――物語をジャンルに当てはめると、ファンタジーでしょうか?
東山:ファンタジーではありますが、それだけではない不思議な世界観です。昔話とか神話のような印象もあります。摩訶不思議な世界観と言ったらよいのでしょうか? あとは昔の中国が舞台になっているので、いろいろな中国のモチーフが見られる作品ですね。
――なるほど。「昔話」でしたら我々日本人も知っている物語のように、メッセージ性が高いのもうなずけます。
東山:『百妖譜』はメッセージをまっすぐ届ける作品ではなく、妖怪たちの存在を通して手渡されてくるので、見てくださった方々がそれぞれ自分の解釈ができる作品だと思います。
――人それぞれに感想が異なる?
東山:台本を読んでいても、説明しすぎないところがあるなと思っています。私たち演者も、自分たちで語り合える余白があるんです。実際にアフレコ現場で、役者さん同士で解釈を語り合っています。台本にすべて説明されていませんからね。
――それはおもしろいですね。
東山:さらに、基本的に前後編の2話完結で、2話ごとにお話が変わるので、桃夭と一緒に旅をしているメンバー以外のキャストががらっと変わるんです。2話ごとに別作品かと思うくらい座組が変わります。そんな収録現場ですが、いつも作品を中心として話が盛り上がるような、和気あいあいとした空気感でアフレコをしています。メッセージ自体はシンプルですが、人それぞれ、受け止め方は変わってくると思います。
――東山さんが受け取ったメッセージは? ネタバレにならない程度にお願いします。
東山:そうですね……。私は第3話・4話(「漱金(上)」「漱金(下)」)が好きで、受け取ったメッセージは「親孝行」とか「お金より大切なもの」です。一緒に収録している(磨牙役の)村瀬歩くんと、「親が元気なうちに親孝行しなきゃね」なんて話をしていました。