冬アニメ『戦国妖狐』第一部「世直し姉弟編」斉藤壮馬さん(迅火役)×高田憂希さん(たま役)インタビュー|キャスト・スタッフ陣の作品愛にあふれたアニメ。「魂を出し尽くした」第一部ラストまでぜひ見てほしい
人間好きの妖狐・たまと、人間嫌いの仙道・迅火の“義姉弟”が、人間にあだなす闇(かたわら)と戦う世直し旅を続ける戦国バトルファンタジーアニメ『戦国妖狐』(原作:水上悟志)が2024年1月10日(水)より放送スタート!
これを記念し、アニメイトタイムズではインタビュー連載を実施。第1回は主人公・迅火役の斉藤壮馬さんと、たま役の高田憂希さんです。
作品愛の強いキャスト・スタッフが集まった本作の魅力や見どころをたっぷりと語っていただきました。
“水上悟志作品”の大ファンである斉藤さんが語る『戦国妖狐』の魅力とは?
――原作や台本を読んだり、演じてみて感じた作品の印象や魅力を感じた点をお聞かせください。
迅火役・斉藤壮馬さん(以下、斉藤):元々、『戦国妖狐』だけではなく、水上(悟志)先生の作品の大ファンでした。『戦国妖狐』は登場キャラそれぞれにドラマがあって、単純な勧善懲悪や善悪の二元論ではない、壮大なドラマが魅力的だなと思いました。登場キャラの人懐っこさやユーモラスなところも素敵だなと思っています。
アニメの台本を読んだ時の感想は、原作に忠実で、たぶん原作が大好きなチームの皆さんがスタッフィングされているのかなと思うくらい、たくさんの『戦国妖狐』愛を感じました。
たま役・高田憂希さん(以下、高田):原作が読みやすく、かつおもしろくて。シリアスなシーンが続くのかなと思いきや、楽しかったり、おもしろいシーンがポンと挟まっていることで一息付けたり、肩の力を抜いて読める印象がありました。登場するキャラもみんな個性的で、そのお話にしか出ないキャラでも愛らしさを感じられるキャラが多く、そこが魅力的だなと思いながら読み進めていました。
アニメに参加させていただくことになった時、全3クールとお聞きしてすごくビックリしました。それでも全17巻、約100話あるお話を3クールにまとめるのは大変だろうなと思いましたが、台本を読むと取捨選択しながら原作に沿いつつ、アニメで初めて触れる方にも楽しんでいただけるように工夫されているのがわかりました。
例えば、第3話で登場する、たまと源蔵(迅火の父親)のシーンは原作では後半に出てきますが、あえて序盤に挿入されたことで、たまと人、迅火と人、それぞれの想いを対比できて理解しやすくなっていて。作品愛の深いスタッフさんならではなのかなと思っています。
――ご自身が演じるキャラの印象と、自身と似ている点や魅力を感じる点をお聞かせください。
斉藤:迅火は人間でありながら、人間嫌いの闇好きで、いつか自分も闇になりたいと願っています。同年代の少年と比べると、いろいろ壮絶な経験をしているがゆえに、どこか普通ではないものを持っているところが魅力かなと思います。一方で、十代特有の青さも感じさせるキャラなので、「異質な人」とは捉えず、あくまでも彼も人間なのだという観点で演技プランを構築していきました。
演じる際、キャラと自分が似ているかどうかは重視していませんが、十代や思春期特有の精神的な揺らぎやもろさは、僕も過去に経験しているので、迅火らしい危うさを視聴者の方にお届けできればいいなと思いながら毎回収録していました。
高田:原作を読んでいた時から、たま自身のことを知るのが難しいなと感じていました。迅火や真介は物語の中で成長や変化が見られますが、たまは、いい意味であまり変わらず、そういうシーンもあまり見られなくて。
例えば、彼女が口にしている「世直し」はどういう考えで言っているのかも深くは描かれていなくて。だからこそ、水上先生が描く真っすぐな言葉には重みがあるんだろうなと思い、説得力が出るようなお芝居をすることを心がけました。また、真介と初対面のシーンでは石を投げつけるような破天荒なところもありますが、かわいらしさを感じていただけるように演じました。
似ている点は……大根が好きなところです(笑)。よく大根をむしゃむしゃ食べているシーンが出てきますが、「妖狐なのに(好物は)お揚げではないんだな」と思いながら収録していました。
テイクを重ねた迅火の叫びのシーン。たまは真っすぐな言葉を届けるよう意識
――演じる前に監督からオーダーされたことや受けたディレクションがあればお聞かせください。
斉藤:僕は特になかったですね。各キャラの概略はお話しいただきつつ、一旦我々が提案したものをベースに、作風にマッチするかを重視してディレクションをいただいた気がします。
個人的に印象に残っていることは、迅火はこの先いろいろなタイプの叫びを披露するんですが、ある叫びのシーンで「獣のように叫んでください」というディレクションがあって、「テストでやったものよりも更に動物的な、人間ではなくなってしまったかのような叫びを出してください」と。
叫びのシーンを何度も繰り返して収録することはあまりないんですが、この作品では叫びはすごく重要なので、どの話数でもテイクを重ねた印象があります。
――迅火は、たまたちと旅をしている時の落ち着いた雰囲気から、精霊転化(せいれいてんげ)して戦う時のテンションの差がすごくて大変そうだなと思いました。
斉藤:そうですね。技名をカッコよく叫ぶシーンもあれば、涙ながらに叫ぶシーンもあったりして。でも意識的にメリハリを付けるのではなく、その時の迅火の感情であったり、シーンが求めている感情の振れ幅にウソなく向き合えればいいのかなと心がけました。
高田:たまに関しては、特にこうしてほしいというオーダーはなく、むしろ不安になるくらいお任せいただいて(笑)。水上先生のテンポが速く、読み応えのある作品をアニメにすると、シリアスなシーンとコミカルなシーンが交互に入れ替わることが多くて、切り替えるのがとても難しかったです。何度もトライさせていただいて、視聴者の方に少しでも楽しく見ていただけるようにと思って頑張りました。
――たまは、見た目は少女でかわいいですが、200年以上生きていて、迅火の姉的な存在であるというギャップを意識されたことは?
高田:闇として長い時を生きてきた彼女が「千年後に良い世になっていれば満足だろう」と心から言えるのが素敵だなと思っていて。そんな彼女の真っすぐさが偽りなく伝わったらいいなと思って全力で演じました。見る人によっては楽しいシーンになっていたり、「おもしろいことを言っているな」と思ってもらえるのも嬉しいですが、私自身は「本気で心から思っているぞ」という気持ちで臨んでいました。
――お互いのキャラの印象とお芝居の感想をお聞かせください。
斉藤:たまは、見た目はキュートな雰囲気がありつつ、迅火よりだいぶ年上ですが、その両方の要素がしっかり感じられました。見た目相応の、かわいかったり子供っぽく振舞う部分もあれば、どこか物事を俯瞰で見ているような視点も持っていて、一筋縄ではいかない、たまの魅力につながっていると思います。
原作を読んでいる時は、たまがどんな声なのかなという具体的なイメージが浮かんでいませんでしたが、最初に高田さんのたまの声を聞いたら、たまの声にしか聞こえなくなるほど本当に素晴らしかったです。特に「世直し姉弟編」のラストのたまがとても素晴らしくて。原作でも素敵なシーンでしたが、テストでたまのお芝居を聞いてすごく心が動かされました。闇だけどとても人間味があるキャラを、高田さんがいろいろな緩急をつけて、巧みに演じられているなと思います。
高田:ありがとうございます。迅火は原作を読んでいる時、彼の過去や人間に対して特別な感情を持っているところが印象的でしたが、アニメを通して、斉藤さんのお芝居をお聞きしていると、「実はいろいろな表情を持った子だったんだな」と感じられました。
原作ではクールな印象が強かったんですが、アニメで真介と話す時にマウントを取りに来るような(笑)、十代ならではの若さを感じて、「迅火ってまだ幼い面があるんだな」と。そして、たまと向き合った時のふいに出る心の開き具合がお芝居にすごく乗っていて。迅火にとってたまは特別な存在だなと思えたし、迅火がより愛おしい存在になりました。
だからこそ、お話が進んでいくと胸が苦しくなったし、第二部収録中の今も苦しいんですけど(笑)。魅力的な迅火を最後まで見守ってほしいです。
――収録時の雰囲気や裏話などがあればお聞かせください。
斉藤:全員集合の収録ではありませんでしたが、迅火、たま、真介(役の木村良平さん)はほぼ一緒に収録できました。
――この作品は熱い掛け合いが多いので、一緒に録れたほうがいいですよね。
斉藤:スタジオではテストは一緒にできますが、収録のシステム上、本番は別の部屋に分かれて同時に録る形でした。でも同じ場所で、同じ想いを共有することがとても大切なことですから。
高田:迅火と真介の叫びがどのパートもすごくて。その叫びも「こういうニュアンスで」と細かい指示があるので、何度もトライされていて、本当にお二人が汗だくの状態でした。命がけでマイク前に立たれている姿を見て、「頑張れ!迅火!」「頑張れ!真介!」と心の中で応援しながらお二人の背中を見つめていました。収録が終わった後は飴をお渡ししていました。
斉藤:のど飴をよくいただきました(笑)。
高田:それだけ魂がこもったお芝居をたくさん見られたことは刺激的でしたし、一緒に演じられて良かったです。
斉藤:でも休憩中はまったりしていて。たくさんしゃべって盛り上がるというよりは、割と穏やかな空気が流れていました。
高田:木村さんとは今回初めて共演させていただくこともあって、最初は少し緊張しましたが、斉藤さんが上手にお話を振ってくださったり、まとめてくださって、とても助かりました。
斉藤:良平さんは序盤から「たま、めっちゃいいな」と言っていて。普段の良平さんはそういうことをあまり言わない人なので、ちょっとうらやましいなと思っていました(笑)。
「世直し姉弟編」の最後は3人での収録で、「出せるものは出し尽くしたな」と思ったら、直後に良平さんが連絡をくださって「今日はこの3人で収録できて良かった。今年一番ゾクゾクしたかもしれない」と。
高田:え~っ!? 嬉しい!
斉藤:第一部の最終回ということもあって、全員が魂を出し尽くせたかなと思うので、ぜひ見ていただきたいです。
――これでハードルが上がりましたね(笑)。
高田:そのハードルもきっと超えられると思います。