猫猫の考えを理解しすぎてはいけない? 会話の流れやギャップが肝心な演技――『薬屋のひとりごと』壬氏役・大塚剛央さんインタビュー
シリーズ累計2700万部突破の大人気後宮謎解きエンタテインメント『薬屋のひとりごと』のTVアニメが絶賛放送中! とある大国の帝の妃たちが住む後宮を舞台に、そこで起こる事件や陰謀に巻き込まれる主人公・猫猫(マオマオ)の活躍が描かれています。
2024年1月6日から第2クール目がスタートする本作。今回、猫猫の「実力」に気付き、皇帝の寵妃の毒見役に抜擢した壬氏(ジンシ)役の大塚剛央さんにインタビュー! どんどん素の一面を見せている壬氏のお気に入りのシーンや役作り、映像に込められたスタッフ陣のこだわりをお話いただきました。
どんどん素を見せる壬氏。役作りは“先”を見据えて――
――今作はオーディションで出演が決まったのでしょうか?
壬氏役・大塚剛央さん(以下、大塚):はい。大変人気のある作品ですし、決まったときは嬉しさと同時にプレッシャーも感じましたね。オーディションのときから役を固めてはいましたが、改めて原作を読み込んでからアフレコに臨みました。
最初に監督と音響監督さんと“第1話から先を見据えた役作り”をしていこう、というディスカッションをさせていただきましたし、この作品はとにかく丁寧に作り上げていく現場でした。
――役者目線で『薬屋のひとりごと』という作品はどう映りましたか?
大塚:面白いからこそ楽しく読み進めてしまいますが、やはり「このシーンはどう演じようか」と考えてしまうことがありました。でも、あまり馴染みがない後宮の世界を身近に感じられたのは新鮮で。役者目線を忘れて読んでいたところは大きいですね。
――演じられる壬氏の第一印象を教えてください。
大塚:まずは見た目の美しさと、その容姿を上手く利用するしたたかさ、あとは後宮内での立ち回りからの賢さも持ち合わせているのかなと思いました。しかし、猫猫と出会ってからは徐々に素の部分が出てくるようになって。視聴者の方にはギャップのある映り方をするのではないかなと思いました。
――最初はクールなキャラクターに見えましたが、どんどん表情豊かな面が目立っていますね。
大塚:猫猫によってどんどん引き出されていますね。表情豊かな素の部分をどれだけ見せていくのか、という部分はアフレコでもよくディレクションをいただきました。
――慎重に演じられたんですね。
大塚:この作品はコメディからシリアスまで幅があるので「壬氏ならどこまでやって良いのか」を見極めながら演じています。
――話も進んできていますが、演じる中で印象に変化などはありましたか?
大塚:素の部分にある子供っぽさが思っていたよりも強いなと。演じる上でも、話数が進むごとに「ギャップにもっと幅を持たせて良いんだ」と気付きました。
猫猫の考えを理解しすぎない
――役作りはどのように?
大塚:第1話のタイミングで監督と音響監督さんから「どんな壬氏を作っていきたいのか」と聞かれたので、自分の中の壬氏のイメージを伝えながら大まかな方向性を固めました。そこから「素の部分をどう見せていくか」を話し合いつつ、自分が思っていたものがどれだけ表現できているのか、監督、音響監督が求めているものにどれだけ近づけているのか、という部分を詰めていきました。
――ディレクションは具体的にどんな話を?
大塚:「もう少し中性的に」や「もっと甘く」とか、その都度細かくありました。でも、演じるにあたっての大まかな流れは悠木(碧)さんが作っています。猫猫はセリフ量が多く、いろいろなキャラクターたちとモノローグを挟みながら会話をしていますが、それらのセリフはほとんど別録りではなく、自然な流れで演じられているんです。
僕としてはもちろんその空気感を崩したくなかったので集中して現場に入っていました。自分を含め、キャスト陣が集中して挑んでいるからこそ見ごたえのある会話劇になっているのではないかなと思います。
――ちなみに、原作の人物紹介で壬氏は「はちみつのような甘い声を持つ」と書かれていました。
大塚:なんでこんなことが書いてあるんだ、と(笑)。
――(笑)
大塚:でも壬氏はその甘い声を自覚して使っているところがあるんですよね。演じるにあたってそこは意識していて、特に、色目を使うシーンではわざと声色を変えていたりします。
――猫猫には辛辣なことを言われたり、気持ち悪がられたりしています(笑)。演じる上で変わり者な一面を意識しているのでしょうか?
大塚:進んで気持ち悪くしていたりはしないですが(笑)、猫猫に対する興味であったり、どういう風に利用しようか、という内心のワクワクは意識しました。そこに動きや音が付いた結果、猫猫にとって気持ち悪いように映っているんじゃないかなと思います。
――コミカルなシーンのキラキラした表現が印象的です。アニメならではの要素は事前に説明があったり?
大塚:SEを含めて、「キラキラしている」とか「艶っぽく頬を染めて」みたいなことはト書きに載っていました。ひとまずそれを頭に入れて、どんな映像になるのか想像しながら演じたところはありますね。
――アフレコはみなさん一緒でしたか?
大塚:最初のほうはコロナの影響もあり、別録りが多かったのですが、後半は同じシーンの方たちは一緒に録ることができました。ほかの方のお芝居で壬氏のセリフに動きがあったりするので一緒に録れたのはありがたかったですね。特に猫猫との会話。先ほどお話したように壬氏と猫猫の会話中は猫猫のモノローグが入ることがありますが、彼女が考えていることは壬氏にはわからないことが多いんです。だからこそ猫猫の考えを理解しすぎないように、会話の流れを上手く汲み取ることを意識しています。
――会話が多いからこそ、ほかのキャストに積極的にコミュニケーションを取りに行ったりはしましたか?
大塚:この現場以外でもそうなんのですが、僕は自分からワイワイと盛り上げるタイプではなく、いつも話しかけていただくことが多いんですよね。この現場でも悠木さんをはじめとしたキャストさんたちから声をかけていただいて。
――良い雰囲気の現場だったんですね。
大塚:みなさん、収録外ではワイワイされているんですけど、一度収録が始まるとピリッとされていて。そこは良い緊張感に包まれているなと思いました。
――高順役の小西克幸さんとは掛け合いも多かったと思います。
大塚:小西さんは安心感がすごくて。壬氏と高順は付き合いが長いので、その信頼感が大事なんですけど、僕は安心して身を任せました(笑)。だからこそ、高順とふたりっきりのシーンは思いっきりリラックスできているんじゃないかなと。