史実に基づいたオリジナルのプロローグを分かりやすく伝えるためにーー木戸孝允役・北園涼さん×西郷隆盛役・spiさん×桐野利秋役・坪倉康晴さんの新政府軍による三者鼎談|明治モダン歌劇「恋花幕明録~前日譚~」稽古秘話を語る
激動を経て新たに生まれ変わった明治時代に、歴史上の武士たちと出会い、恋の物語が花開く、恋愛シミュレーションゲーム『恋花幕明録(以下、こいばく)』。
本作に登場するキャラクターの過去に迫る、明治モダン歌劇「恋花幕明録~前日譚~」が、2024年2月8日(木)からIMM THEATER(東京)にて、2月23日(金・祝)からAiiA 2.5 Theater Kobe(兵庫)にて公演されます。ゲームのスタート地点に至るまでの”前日譚”を描く本作では、新政府軍と旧幕府軍が対立し、激しい戦いを繰り広げた戊辰戦争を舞台に物語が展開します。
公演に先駆け、木戸孝允役の北園涼さん、西郷隆盛役のspiさん、桐野利秋役の坪倉康晴さんの新政府軍3名のインタビューをお届けします! 歴史が大きく動いた時代のイメージや演じ方、本作ならではの見どころ、稽古期間中の心境などを伺いました。
武士が刀を置く“激動の時代”! 大和言葉のイントネーションに苦戦
ーー本作では明治維新が扱われていますが、幕末から明治までの時代にどのようなイメージを持たれていますか?
木戸孝允役・北園涼さん(以下、北園):激動の時代です。僕ら世代だと『るろうに剣心』などで見ている時代ですね。武士が刀を置くという新しい時代の中で、政策の鎖に繋がれている人と抗いたい人で戦っているイメージです。
桐野利秋役・坪倉康晴さん(以下、坪倉):よく血が流れる時代というイメージがあります。涼くんと似ているんですけど、刀を捨てなきゃならない、武士の命のようなものを捨てるということに抵抗心があったり……。武士が武士らしくある、漢らしい時代かなと思います。
西郷隆盛役・spiさん(以下、spi):かなり心拍数の高い時代で、死生観も今とはだいぶ違いますね。あとは、この時代を舞台にした物語がたくさんありますよね。ということは、とても残酷な時代だったんだなと。ヒップホップも同じですが、貧困だったり危険にさらされている時代にはとても胸を打つ作品が生まれたりするんですよ。それだけ題材に溢れているので。
北園:普通ではない事が起こってる。
spi:そうそう。だから、当時生きている人はとてもしんどかっただろうなと思います。
ーーまさに辛い時代で、明治維新の頃は近代史最大の内乱と言われています。そんな時代が舞台となったゲームや脚本に触れた時の感想はいかがでしたか?
北園:(しみじみと)いや〜難しい……。
ーー難しいと言いますと……?
北園:全て、文字数も多いし、言葉も! 人名や時代、軍の名前などあまり耳馴染みのない言葉が多いので覚えるのが大変そうだなと思いました。
脚本を読んだ時は、たくさんのエピソードが詰まっていると感じました。戊辰戦争の中で起きた色々な戦いをグッと凝縮するので、これは大変だなと。当時戦っていた人の苦労を考えると、それを舞台で表現するのは難しいことだろうなと思いました。
ーー坪倉さんとspiさんはいかがでしたか?
坪倉:初めて読んだ時は涼くんと同じ感想でした。それに、場面が次々に進んで大阪城のすぐ後のシーンが甲府城だったりするので、今どこにいるんだ?となりました。
あとは、この時代なのでもちろん戦いは欠かせませんが、会話のシーンも多いです。ひとりひとりにしっかりとドラマがあって見せ場があるように(脚本・演出の)ほさか(よう)さんが作られているので、どのキャラクターの視点から見ても素敵だと思います。
spi:僕は、出演が決まってから原作の「恋花幕命録」をやってみました。ただ、西郷隆盛のエピソードはまだ配信されていないので、斎藤一(のルート)をやってみたり、ルームに物を置いて遊んでみたり。その時は、舞台も同じような世界観で、お客様に向かって甘い言葉を言ったりするのかなと思っていたんです。
ーー乙女ゲーム要素があるのかと思われていたんですね。
spi:だから、どうしようかな、そういう作品はやったことないし…と思っていました(笑)。なのに脚本を貰って読んだら思っていたのと全然違って、台詞がびっしりなんですよ! 長セリフも多いし。
一同:(笑)
spi:今までは、言葉数が少なくても存在感がある、みたいな役が多くて、台詞より歌が多いくらいでやってきたので、脚本を見た時は本当に大変だと思いました。こんなに舞台上で日本語を喋ったことないし。
北園:僕らでも分からない言葉はありますよ。
spi:大和言葉とかいっぱい入ってるんだよね、普段使わない言葉だからイントネーションも難しい。「出張ってくるはず」とかでも、「でば(↗︎)ってくる」のか「でば(↘︎)ってくる」なのか。
坪倉:「で“は”ってくる」なのか。
spi:「しん(→)政府軍」、「しん(↗︎)政府軍」なのかとか……読み方とイントネーションがとにかく難しい。
ーー聞き馴染みのない歴史用語が出てきますが、イントネーションのほかに言い方など気をつけていることはありますか?
坪倉:言葉を大事に伝えるようにしています。難しい固有名詞が多いとお客さんがストーリーを分からなくなりがちということを、ほさかさんから聞いていたので。“甲府城”とか、場所を伝えるときは特に台詞を立たせることを意識しています。