作品に触れることもきっと支援になる──地震の被害にあった能登半島にゆかりのある作品『スキップとローファー』を見て私たちにできること
2024年1月1日に石川県能登半島を襲った大きな地震から1ヶ月。石川県在住の筆者も自宅で地震に見舞われ、大きく長い揺れを経験しました。
幸い自宅は県南部だったため、地震や津波による被害はなかったものの、地震発生時に能登にいたという友人・知人から当時の話を聞いたり、1ヶ月経った現在でもテレビには避難所や復興に関する情報が常に表示されていたりと、震災を身近なものに感じています。
被災地復興のために働いている人たちを目にすることもあり、ライターである私にもなにかできることはないだろうかと考え、能登半島にゆかりのある作品『スキップとローファー』を紹介することにしました。
能登半島から東京の高偏差値高校に進学した岩倉美津未(いわくらみつみ)を中心に、高校生たちのあたたかなスクールライフが描かれている本作。心に陽が差し込むようなぬくもりが魅力の本作を通して能登半島や石川県に心を向けていただければうれしいです。
「作品に触れる」という支援
甚大な被害が出た災害であっても遠い地域のことだと、いつもと変わらない日常を過ごしているとつい忘れがちになってしまうものだと思います。私もきっと石川県に住んでいなければそうなっていたでしょう。
しかし、今回のような大きな被害が出た地域は今後何年もかけて立て直していくことになり、その長く苦しい戦いには物理的にも精神的にも大きな力が必要となるはずです。
だから、作品に触れてその地域に関心を持つこと、作品の聖地の復興のために戦っている人がいることを忘れないことが復興の一助になると思っています。『スキップとローファー』の作者・高松美咲先生も震災直後に下記のようなポストを投稿されています。
— 高松美咲👞スキップとローファー (@takamatsumisaki) January 3, 2024
そうやって知った地域が観光客を受け入れられるようになった際には、実際に現地に足を運んでみることで、さらなる支援につながります。いわゆる聖地巡礼です。
みつみの地元のモデルとなった珠洲市は、これまでに道の駅とコラボキャンペーンを行っていたり、アニメが放送された直後の昨年8月にはバスツアーを実施したりと作品ファンを歓迎してくれています。ツアーには全国からファンが参加し、作品の世界観を楽しんだそうです。
「聖地巡礼」被災地へ 「スキップとローファー」の舞台 〈がんばろう珠洲〉|地域|石川のニュース|北國新聞
誰だって自分の地元のことは良く思ってほしいもの。元から地震が多かったことや今回の能登半島地震が起こったことによって、「能登半島=地震」という印象を今では多くの日本人が持っていると思います。しかし、能登半島は海と山に囲まれた魅力あふれる土地。今は訪れることができなくても『スキップとローファー』でその魅力に触れられるのです。
作品の魅力は?
とはいいつつも、『スキップとローファー』は、地震を度外視しても大変に面白い作品です。
高校生たちの温かいスクールライフが爽やかに描かれており、一生懸命に生きる高校生たちの心情描写がとても細やかで、思わず見入ってしまうような魅力を持つ作品です。
純粋な主人公・みつみ(美津未)
本作最大の魅力はピュアな主人公・みつみにあります。地元は石川県の端っこ。近所の駅は10年以上前に鉄道の廃線で無くなり、中学の同級生は8人という過疎地です。
とても賢く勉強ができるため地元では神童と呼ばれており、東京の高偏差値高校・つばめ西高校に首席で入学しました。彼女の目標は官僚になって地元の深刻な過疎化を根本から解決すること。地元を愛するがゆえに地元を離れたのです。
東京とは大違いな環境で育ったため、クラスメイト達にとってみつみは独特な距離感の持ち主。しかし、素直で裏表のない彼女は周囲の人達、そして私たち視聴者にもぬくもりを与えてくれます。
一生懸命で真面目な努力家
地元で神童と呼ばれて育ったみつみですが、それはひとえに彼女の真面目さとひたむきな努力によるもの。受験勉強の際にはプレッシャーもあって根を詰めすぎてしまうこともあったようです。
その一生懸命さは人間関係にも。東京で最初に友達になったクラスメイト・志摩とちょっとしたコミュニケーションの行き違いで気まずくなってしまったときも、勇気を出して素直な気持ちを真正面から伝えます。
仲の良い友人とも一線を引いたような付き合い方をしていた志摩は、みつみのストレートなコミュニケーションに面食らいながらも、同じように正直な気持ちを打ち明け、小学生のような大げさな仲直りに思わず大笑い。みつみの一生懸命で素直なコミュニケーションによって、また一歩ふたりは仲良くなれたのでした。
自分のことを「ド派手に転ぶけど起き上がるのも超得意!」というみつみ。この一言がポジティブで前向きな彼女をよく表しており、彼女の魅力だと感じます。
初めての恋!
中学までは少ない同級生の中で男女関係なく友達関係を築いていたであろうみつみは、恋愛経験がないに等しい様子。そのため、人当たりが良くスマートなイケメンの志摩に優しくされてもすぐに好きになることはなく「いい人だなあ」と素直にその内面を評価。
多くの女子から望まない好意を向けられてきた志摩は、恋愛感情抜きで自分と友人になってくれるみつみに少しずつ特別な感情を抱き始めます。一方のみつみも、志摩を少しずつ知っていくうちに自分の中にある初めての感情に気付きます。
2人が少しずつ心を通わせていく様子はドキドキ・ソワソワすること間違いなし。ほほえましい彼らをぜひ見守ってください。