「孤爪研磨はこれまでのスポーツマンガで、まずいないようなキャラクター」満仲勧監督が語る『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の魅力
『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が、2月16日(金)より公開されます!
『ハイキュー!!』は、日向翔陽を中心としたバレーボールに懸ける高校生たちの熱い青春ドラマ。2012年より2020年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された古舘春一先生による漫画で、コミックス全45巻の累計発行部数は6000万部を突破。また、TVアニメは2014年から放送が開始され、2020年までに、シリーズ第4期まで制作されている大人気作品です。
今回の劇場版で描かれるのは、原作の中で最も人気のあるストーリーの一つである、
烏野高校VS音駒高校。通称“ゴミ捨て場の決戦”。烏野の日向翔陽と音駒の弧爪研磨を中心に彼らの熱き戦いが描かれています。
アニメイトタイムズでは、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の公開を記念して、満仲 勧監督にインタビュー。TVアニメシリーズ3期まで監督を務めていた満仲監督ならではの視点で、シリーズ制作の裏話やキャラクターの魅力、今作の見どころなど語っていただきました。
劇場版ならではの見せ方
――今作『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の監督をすることになった経緯を教えてください。
満仲勧監督(以下、満仲):TVシリーズを3期までやったんですけど、「やり切ったな」という気持ちがありました。もうこれ以上やっていても、同じことの繰り返しになりそうだなと思ったんです。
『キャプテン翼』(※1)とか『黒子のバスケ』(※2)みたいに、強さがインフレしていく系のスポーツマンガだったら、演出的にいろいろやれるんですけれど、『ハイキュー!!』はそういう作品ではないので、同じやり方でやっていっても、きついなと思いました。それだったら、自分の監督する作品としては3期まででいったん区切りをつけて、4期の春高全国大会編を描いて頂いた方が違う見せ方ができるんじゃないかなと思って、TVアニメシリーズを降りました。
今作の監督を引き受けたのは、映画だったら予算やスケジュール、スタッフの面でTVアニメシリーズでできなかったことをやれると思った為です。
※1:1981年より1988年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された高橋陽一先生によるサッカーをテーマした漫画。
※2:2009年から2014年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)などで連載された藤巻忠俊先生によるバスケットボールをテーマにした漫画。
――「自分の好きなように」とお話されましたが、具体的にはどのように作られたんですか。
満仲:ハイキュー‼という作品はバレーボールをしている選手全員が主人公という感覚がありました。一人一人ポイントを当ててストーリーは進んでいますが、一本の映画として見た時にバラバラになってしまうので、今作に関しては孤爪研磨(CV:梶 裕貴)と日向翔陽(CV:村瀬 歩)に照準を絞って、試合やドラマを描いていこうと思いました。
あとは、春高バレー(※3)が行われる東京体育館という広い空間の中で、他にも3試合ぐらい行っているので、その辺の臨場感みたいなものを出せたらいいなと思って制作しました。
声優さんの芝居に関しても、「大歓声の中でしゃべっているというのを意識しながら、もっと声を張って演技してください」というのは指示しました。もちろん、演出の中でボソッとしゃべる方が大事という場合は、ボソッとしゃべったりはしています。
※3:春の高校バレー 全日本バレーボール高等学校選手権大会
――映画はTVシリーズとは違いますか。
満仲:そうですね。絵だけではなく映画での音の録り方がTVアニメシリーズとはいろいろと変わってきます。なので、音響さんが本当に大変だなと思いました。映像だけでなくて、音響さんも大変そうで、ギリギリの中で制作しましたね。
バレーボールは、チームワークが必要なスポーツ
――『ハイキュー!!』シリーズを手掛けるにあたって、どんなところを意識されましたか。
満仲:観客の目線というよりも、なるべく選手たちの目線から見て、「バレーボールのどんな部分に魅力を感じるか、面白いと思える部分なのか」というところで、カメラの位置を意識しながら描いていこうと思いました。
――制作前に何か行ったことはありますか。
満仲:バレーボールは、体育の授業ぐらいでしかやったことがなかったので、TVシリーズの始めのころ高校のバレーボール部の練習を見学しに行ったり、参加したり、スタッフを集めて、ちょっとした練習もしました。
TVアニメシリーズの際は収録前に、キャストを集めてバレーボール体験をしました。「頂の景色は、どれぐらいの高さなのか」とバレーボールネット越しからコートを見て「ジャンプした時に見えるコートは、こういう感じに見える」という臨場感を体験したりして、なるべく作品に寄り添った形で準備をしていきました。ただ今回の劇場版では勝手をしって知っているスタッフさん、キャストさん達なので特にはありませんでした。
取材として、いろいろな高校に取材させて頂いたのですがその中で駿台学園のバレーボール部へ行きました。駿台学園は、全国大会で優勝するぐらいの強豪校で、身長も高い子が多かったんですけど、ネットの横にあるアンテナの一番上に触れるという人がいたんです。
ネットの高さが高校生の場合だと2m40cm(6人制の場合)なんですけど、めちゃめちゃ高いんですよ。身長173cmの僕が思いきりジャンプして、ようやくネットから首が出るか、出ないかぐらいです。さすが全国クラスの選手がいる高校だなと思いました。
――『ハイキュー!!』という作品に関わって、改めて知ったことはありますか。
満仲:バレーボールは、他の団体スポーツよりもチームワークが必要なスポーツだなと思いました。サッカーやバスケットボールは、一人すごく上手い人がいたら、その人だけで点数を取ることができるんですけど、バレーボールは本当にちゃんとしたレシーブ、トスが上がらないと、ちゃんとしたスパイクが打てません。スパイカーがどれだけ上手くても、チームで強くないといけないので、団結力、仲の良さというのが他のスポーツよりもあるのかなと感じましたね。
取材に行った時も、選手たちは本当に仲が良かったです。勝ったらみんなで喜んで、負けたらみんなで泣いて、「高校生、眩しい! こんなに眩しい青春時代だったっけ?」と感じました(笑)。
――多くの人から愛される『ハイキュー!!』という作品ですが、監督から見て作品の魅力はどんなところだと思いますか。
満仲:選手たちみんなにスポットが当たっていますし、それぞれの悩みや生い立ち、努力しているポイントみたいなものが形は違えど、共通しているところ、わかる部分があるんじゃないかな。その辺は先生がしっかり描いているからこそ、これだけ多くの人から受け入れられているんだろうなとは思います。