『羅生門』、『藪の中』などの名作文学が現代を舞台に展開!? 今井文也さん、広瀬裕也さんの軽妙な掛け合いに引き込まれる朗読劇『超訳文学 芥川龍之介』2月3日公演をレポート
フロンティアワークスによる朗読劇プロジェクト「Rabbit Note Project」の第1回公演となる『超訳文学 芥川龍之介』が、2024年2月3日(土)〜4日(日)、アニメイトシアターで開催されました。
芥川龍之介氏の有名文学を“超訳”(=現代的な解釈でアレンジ)した3つのオリジナルシナリオが展開される本公演。今井文也さんと広瀬裕也さんの軽妙な掛け合いによって、名作の魅力にとっつきやすい形で触れられる、見どころ満載の内容となっています。
本稿では、3日(土)公演の模様をお届け。おふたりが紡ぎ出す少し不思議な“超訳文学”の世界にぜひ足を踏み入れてみてください。
有名文学と現代的な価値観が交錯する3つの物語
「いらっしゃいませ!居酒屋『羅生門』京都店へようこそ!」
公演の幕開けを飾ったのは、『羅生門』と『芋粥』を現代的な会話劇に落とし込んだ「『羅生門』(のち『芋粥』ゆえに『羅生門』)」。
登場人物は、会社をクビにされ、ふさぎ込むニート(演:今井さん)とその友人・藤原俊仁(演:広瀬さん)。酒の席で思わず悲観的な思考に陥り、挙句の果てに様々な罪を犯そうとするニートと、その愚痴を淡々と受け流す藤原のやり取りは生々しさすら感じてしまうほどリアル。他人の日常会話を覗いているような不思議な感覚に陥りつつも、あまりの温度差にクスリとしてしまいました。
「『羅生門』(のち『芋粥』ゆえに『羅生門』)」は、ふたりの他愛ないやり取りのようでいて、原作のエッセンスが随所に盛り込まれています。「因果応報ってやつだよ。悪いことをしたら、悪いことが返ってくる」というセリフをはじめ、「カニ鍋を死ぬほど食べたい」とニートが夢を語る場面。原作をご存知の方なら、物語の流れに『芋粥』が加わったことに気づくはず。
物語後半、藤原に「最高のカニ鍋を食わせてやる」と自宅へ招かれたニート。しかも、お金持ちならではの手厚い歓迎付き。そこでニートは、藤原に押し切られたこともあり、「最高のカニ鍋を最高のコンディションで食べる」とその機が熟すのを待つことに。
それから1ヶ月。藤原邸で贅沢三昧のおもてなしを受けていたニート。しかし、肝心のカニ鍋に対する情熱をすっかり失ってしまったようです。ふと当初の夢を思い出したところで、「思い出は思い出のままにしたほうが良かった」と内省するニート。そこで藤原は、かつて言った「因果応報」という言葉をもう一度繰り返すのでした。
次なる演目は、「ショートコント『鼻』」。登場人物は整形外科を訪れた内島善智(演:広瀬さん)と、外科医の導辺楽長(演:今井さん)。早速、整形外科に訪れながらも意地でも“大きな鼻”がコンプレックスであることを認めない内島と、そんな彼に振り回される導辺の噛み合わないやり取りに、客席からは吹き出すような笑い声が上がります。
内なる狂気が見え隠れする内島という男。ついには、“ずっと手に持っているもの”は何かと尋ねられたところで「台本です」というメタ発言まで繰り出します。しかし、この発言から実は声優学校に通っていることが明らかに。そこからなぜか、“知り合いの話”という体で飛び出す実体験。なにかを察した観客は必死に笑いをこらえていました。
1ヶ月後、無事に手術を終えたはずの内島は、何故か再び医院を訪れていました。どうやら“普通の鼻”になったことで、今まで触れてこなかった人まで鼻の話をしてくるようになったようです。そして、あれほど気にしていた“大きな鼻”に戻してほしいと自分から頼み込むのです。100万円近く費用がかかると知ってもなお、彼の意思が揺らぐことはありませんでした。
公演のラストを飾るのは、山科の街道付近にある“藪の中”で起きた殺人事件を題材とした「のち『藪の中』」。登場人物は、京都警察署の梨目啓志(演:今井さん)、彼の取り調べを受ける2人の重要参考人と3人の容疑者。取調室にやってくるほぼ全員を、広瀬さんがひとりで演じ分けています。
先に展開された2つの物語とは異なり、サスペンスドラマのようなシリアスな空気感で進行していく本作。
第一発見者・加山浩二、殺された男の恋人の祖母・国井奈々の証言によって、徐々に事件の輪郭が浮かび上がります。しかし……その後に現れた容疑者たちの証言は、その悉くが食い違っていました。自らが男を殺したと告白する橘多襄丸、男と心中しようとしたと明かす恋人・清水雅子、降霊術によって呼び出され自殺を証言した被害者・金沢武弘。メトロノームの無機質な音が響くなか、欲望、愛、憎しみ……人間の様々な感情がもつれ、絡み合い、真相を“藪の中”へと押し隠していきます。
そして、取り調べを終えた梨目に告げられる驚きの事実とは……。原作への強いリスペクトとともに、3つのストーリーを一つに繋げる伏線回収の要素が盛り込まれた圧巻の内容が展開されました。
公演終了後には、今井さん、広瀬さんによるアフタートーク。公演を終えての感想はもちろん、原作のあらすじ紹介も行われ、物語への理解をさらに深められる一幕に。最後は、おふたりから朗読劇の魅力や2日目に向けての意気込みが伝えられ、万雷の拍手に包まれながら、2月3日公演は幕を下ろしました。
超訳文学 芥川龍之介
原作
芥川龍之介『羅生門』『芋粥』『鼻』『藪の中』
会場
アニメイトシアター(アニメイト池袋本店 B2F)
脚本・演出
村井 真也
キャスト
今井 文也
広瀬 裕也
紫原 恒星
ダウンロード販売
Rabbit Note Project公式サイト
https://www.fwinc.co.jp/rabbit-note-project/
©Rabbit Note Project